円卓の騎士──鎧兜で武装し馬を進める騎士たち。槍や剣で突き合う馬上槍試合ジャスティングは、今もヨーロッパにゲームとして残り中世を偲ばせる。
アーサー王の宮廷の騎士たちが冒険に出かけた聖杯探求の旅、アーサー王の手にある魔剣、エクスカリバー、魔法使いマーリンと湖の妖精の愛憎の葛藤、騎士ラーンスロットと王妃グイネヴィアの愛、アーサー王との三角関係、若き騎士トリストラムと美しいイソルテの許されざる恋、恋愛物語、悲劇、戦いの物語、英雄伝、超自然の不思議物語——このアーサー王物語のなかには、現代に流行しているファンタジーもの『ハリー・ポッター』『ロード・オブ・ザ・リング』などの源が全部入っている。
しかし「アーサー王物語」は人口に膾炙していても、全巻読み上げた人は少ないはずである。厨川文男氏の翻訳がちくま文庫にあるが、抄訳であり惜しまれる。今回キャクストン版(二十一巻)本邦初の完訳版を、全五巻で出すことになった。
装幀挿絵は、ビアズレーの初版『アーサー王の死』(一九二〇年刊)を使用する。ご期待を乞う次第である。
魔剣エクスカリバー、円卓の騎士、魔術師マーリン、トリスタンとイゾルデ、聖杯探求……
あらゆる英雄譚、恋愛譚、奇蹟譚の伝承が詰まったファンタジーの源泉である「アーサー王伝説」。抄訳、再話、翻案、解説書の類は多いが、本書は、それらの元となったオリジナル原典を、序文まで含めて全訳し紹介する、本邦初の〈完訳版〉。
その原典とは、今から500有余年前の1485年、「アーサー王伝説」として初めて一書にまとめられ、刊行されたキャクストン版:トマス・マロリー(Thomas Malory)著『Le Morte D'Arthur』全21巻。この長大な原典を全5分冊にしてお贈りする。
翻訳は、永年イギリスの妖精物語やアーサー王伝説の研究・翻訳・紹介に尽力されてきた井村君江氏個人による全訳。
ビアズレーによる華麗な挿絵。19世紀末の挿絵画家として有名なビアズレーは「アーサー王物語」にいたく想像力を刺激され、原典全21巻の本文をデザインするととともに、各巻に挿絵、カットを施した。総数500余点。本書はそのすべてを収録し、ビアズレーの造本デザインを生かすよう努めた。ビアズレー・ファン必携!