Author photograph by © SKUP

We are Bellingcat: an intelligence agency for the people

始まりは、キッチンテーブルで見た〈アラブの春〉の現地動画だった。ここはどこだ、映っているのは本物なのか。オンラインゲームにはまっていた著者は、ネット上に集った仲間とともに、独学でまったく新しい調査手法を作り上げてゆく。

お知らせ

ぼくたちはこれまで、シリアの独裁者アサドが自国民に化学兵器を使用したという証拠を発見した。〈マレーシア航空17便〉撃墜の黒幕をあばいた。ヨーロッパに潜む〈ISIS〉シンパの居所を突き止めた。ヴァージニア州のネオナチ集団の身元を明らかにした。新型コロナウイルスとともに広がった偽情報の洪水を食い止めるのに手を貸した。クレムリンの「暗殺班」の正体も暴露した。(……)偽情報で社会を歪めようとする勢力と闘い、あくまで証拠にこだわり、ふつうの市民がどうやって悪事を暴露し、権力者に説明責任を果たさせるにはどうしたらいいか、身をもって実例を示している。(……)社会を守り、真実を擁護するのは、もう体制側の専売特許ではない。ぼくたちみんなにその責任がある。つまり、「極秘」情報の取り扱い許可とか、秘密会員のみ閲覧可能な情報とか、そういう話ではない。〈ベリングキャット〉はこれまでになかったもの──ふつうの人のための情報機関なのだ。

──「introduction」より

目次
introduction
1ラップトップ上の革命 ── ネット調査の可能性に気づく
マスコミ瀕死、ニュース万歳/シリア──取材のできない戦争/情報戦争と樽爆弾/『ニューヨーク・タイムズ』の第一面/化学兵器の露見/どこまで行けるか
2〈べリングキャット〉の誕生 ── 探偵チームの形が整う
知らぬどうしの集まり/欺瞞と証拠/モスクワを指弾した学生/凶器の「指紋」/世界じゅうの探偵
3事実のファイアウォール ── デジタル・ディストピアへの反撃
反・事実コミュニティ/防火壁(ファイアウオール)を築く/ネットの憎悪(ヘイト)が実社会へ/罠を無効化する/一般の人々を巻き込む
4ネズミが猫をつかまえる ── スパイ事件が時代を画する事例に
オープンソースの範囲を越える/仮面を吹き飛ばす/第三の男/29155部隊と「研究所」/リスク
5次なるステップ ── 正義の未来とAIのパワー
未来の戦争のための青写真/AIの危険と可能性/ここからどこへ
補遺暗殺者と対決 ── 〈べリングキャット〉、暗殺団に電話する
「チーム」が真のチームに/ベルリンのオートバイ殺人
謝辞
あとがき ── 日本の読者のみなさんへ
訳者あとがき
原註
エリオット・ヒギンズ

エリオット・ヒギンズ(Eliot Higgins)

オープンソース調査集団として何度も表彰された〈ベリングキャット〉の創設者。カリフォルニア大学バークレー校の〈ヒューマン・ライツ・センター〉の研究員で、国際刑事裁判所の技術顧問委員会のメンバーでもある。2019年、『プロスペクト』誌によって世界最高の思想家50人のひとりに選ばれた。
[訳者]

安原和見(やすはら・かずみ)

翻訳家。訳書にマティザック『古代ローマ帝国軍 非公式マニュアル』、グロスマン『戦争における「人殺し」の心理学』(以上、ちくま学芸文庫)、『フレドリック・ブラウンSF短編全集』(全4巻、東京創元社)、カプラン『人間さまお断り』(三省堂)、アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』(河出文庫)他多数。

ベリングキャット ── デジタルハンター、国家の噓を暴く エリオット・ヒギンズ 著 安原和見 訳

エリオット・ヒギンズ 安原和見

ベリングキャット  ── デジタルハンター、国家の噓を暴く

大手メディアも驚くほどの速さと正確さで次々にスクープを飛ばし、いまや世界中から注目される調査報道ユニット“ベリングキャット”。いったいかれらは何者なのか。なぜそんなことが可能なのか。権力者は平然と、見えすいたウソをつく。その虚偽を覆すことは私たちにも可能だ―。ポスト真実の時代に生まれたデジタルハンターたちの活躍を描く。

四六判並製/368頁/定価: 2090円(10%税込)/ISBN:978-4-480-83722-6

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