特別篇 百物語怪談会
特別篇 百物語怪談会
 めでたく2年目に入りまして、作家ごとのアンソロジーじゃないものもやってみたいなということで、特別篇を入れました。実話ものなので、夏場に合わしたほうがよかろうと、最初にこの巻をもってきて。ただ、これは特定の作品名じゃないので、どんな絵を描かれるのかなと興味津々で……。

金井田 私はこの怪談会の成り立ちがすごく楽しくて。知った名前がいっぱい出てくるじゃないですか。鏡花の生きている時代の一流の文化人ですよね、それと、名も無き市井の方とも入っていて、みんなが一話ずつ披露している。もううれしくなっちゃったんですね。いい会だなあという感じで描きました。最初は話の内容を一話ずつ描いていたんですが、もうもっと面白くなっちゃっていいや、みたいな感じで、雰囲気で描き出して。……だから、傘を持った狸なんかがいるんです(笑)。

 チョイスも絶妙でね。鏡に髪の毛なんて、江戸怪談の定番イメージがあるかと思えば、この魚のとか、ありそうでないパターンだったり。海のもの山のもの取り揃えていただいて。芸も細かいんですね。蓮の葉に水滴がちゃんとついていたりとか。人魂の部分の指定も、色校でやり直してましたよね。

金井田 最初、人魂の平行線の外側が白かったんですけど、これはもう、背景に溶けていくような輪郭線がぼけた表現なので、白は中にしてください、とお願いしました。そうしたら山田さんこそ芸が細かくて、人魂の尻尾の部分をぼかしてくださったんです。それがすごい。

 まさに職人同士の腕競べ、のような。

金井田 おぬしやるな、みたいな(笑)。

 右下にたたずむ影が、「銀河鉄道999」の駅員さんだ、という説も……(笑)。

金井田 なんというか、ありがとうございます。

 この影のお化けはネタ元はあるんですか。

金井田 いえいえ。ただ怪異で何が怖いか考えると、怖いものがいるぞとこちらが認識しているのに向こうが自分に気がつかないというパターンで、もう少しでその怪異と目が合うぞ、というのがいちばん怖い。だから向こうを向いている怪異が自分にとってはいちばん怖いなあと思って、ちょっと向こうを向かせてみました。

 なるほど。『新耳袋』第1夜の有名な話みたいですね。映像の中の少女が、見るたびに少しずつこっちを向いて……(怖)。