柳田國男集 幽冥談
柳田國男集 幽冥談
 柳田國男を怪談文芸として紹介するというのは、本当にやってみたかったことだったんですよ。お忙しい京極夏彦さんに、無理を言って帯文を超特急で(笑)お願いしたりして。そんな力瘤の入った巻なんです。で、どんな絵が来るのかなあと思っていたら、「百物語怪談会」にも通ずる、愛らしいお化けの絵が出来てきた。しかも柳田本人が登場。これは妖怪好きな人たちの間でも大好評でした。インクが烏天狗に、というこの発想はどこから。

金井田 要するに、柳田國男と彼の作品の関係性を、とくに当人を登場させて描いてみたかったんですね。ほかの作品は、フィクションなのでその関係性はわりと単純なんですが、この巻ばかりは、柳田が再話していろいろな面から読める読み物に作り上げた、そういう稀有なものなので、だからどうしても当人を登場させたかったんです。

 なるほどー。そこまでお考えだったんですか。ちょっと参りましたね。そうかあ、それでね、うんうん。

金井田 もう大好きなんです、柳田って。

 そうなんですか。それは以前から?

金井田 私の住んでいる千葉の町には、郊外にススキ沼というところがありまして、「山の人生」のなかの、「少年のしばしば神に隠されるの話」のモデルになったところなんです。そこを通るたびに、ああ、と思って。ほかにも、いろんなところに柳田の足跡があって、行った先々で、ああここで再話されたみたいなことを思い出す作家ですよね。柳田國男でなんかできないかな、とずっと思っていたんです。