梅田望夫・茂木健一郎刊行記念対談「始まりとしての『フューチャリスト宣言』」

梅田望夫・茂木健一郎 刊行記念対談対談風景

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「リトマス試験紙」の役割

【茂木】 『フューチャリスト宣言』の中で僕が言っていることは、これまで心の奥深くに隠してきたことだったんです。だから、僕の周囲では驚いている人が多い。「茂木がこういう本を書くとは思わなかった」と。これまでは、心脳問題に関するもの、あるいは文学的なというかウェットなことを書いてきましたから。でも、「はじめに」に書いた通り、僕には「未来志向」が子供の頃から根強くあって、今までそれを封印してきたのですが、この本でそれを出しちゃった。本音を出しちゃった。そういう意味で、自分にとって爽快な本です。
 この本をスタートラインにして、やれることがいろいろあるような気がして、僕は覚悟ができたという感じがします。実は、ある時期までは、談合社会でうまく生きている人をうらやましく思ったりもしていたんですが、そういう思いがだんだん減っていって、この本を書くことによって、禊(みそぎ)ができたというか、「そっちはもういいや」という感じになりました。

【梅田】 僕はもう少し前から腹をくくったんですが、でも、そうだなあ、42、3歳の頃までは迷いがあった気がします。そっち(談合社会)のほうでやっていくというパスが見えていた時期でもありましたから。数年前にそうじゃないほうにぐっと舵をきって、さらにこの本でそういうメッセージをクリアに出せたと思います。

【茂木】 この本を読んだ人がとくに強く反応しているのも、「インターネットのホームページやブログが、これからは名刺代わりになるんですよ」という部分ですよね。そこには若い人を中心に、たいへん共感してくれる人が多い。
 でも、この本は「リトマス試験紙」的なところがあって、「未来は明るい」と共感してくださる方も、反発される方も、どちらの立場の人もいる。もっと言えば、インターネットそのものに対して、あるいはグーグル的なものに対して、ポジティブにとらえるかネガティブにとらえるかということが、今、「リトマス試験紙」になっているのではないでしょうか。それは、「自民党に投票するか民主党に投票するか」ということより、「憲法改正に賛成するか反対するか」ということよりも大きな、哲学・世界観の差になっているのではないかと僕は思います。
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