梅田望夫インタビュー「ネットは書籍出版を変えるか」梅田望夫

 インターネットというのは、断片しか読めない。(ウェブのページで)1ページか2ページなんですよ。連載として毎日、400字詰め原稿用紙5枚から10枚分くらいずつ、書いていたのですが、読むほうも一度にそれぐらいしか読めない。それから、ネットの上での読み方というのは、ぱっぱっぱっと読んで、リンクに飛んで、もどってきて、という読み方です。200ページ、250ページまとめて読む、という読み方は、たぶん未来永劫、本でしかできない。

 逆に、百科事典までいくと、ネットのほうがいいんですよ。1ページ目から読む変わった百科事典マニアの人は別として、検索をともなうもの、百科事典とか全集などというのは、ネットのほうが向いている可能性がある。そういうものでなくて、一つのまとまりのある論考で、原稿用紙1枚2枚じゃあない、ちょうどこのくらいの量、本1冊分くらい、というのは、本以外の何ものにも置き換わらないのだ、ということを、今回すごく感じています。

■出版に押し寄せるネットの波

――「ロングテール」をめぐって、筑摩書房のような、「恐竜の首」型の本も「恐竜のしっぽ」型の本も抱え持つ出版社は、どのように考えればよいのでしょうか。

 一つの原理で議論しきれないから、ロングテールなのです。すべての経営施策を、一本の原理でやる、というのはナンセンスな考え方で、たとえば、ネット原理主義の人は当然、すべての本を(アマゾンの)「なか見!検索」にしろよ、と言ってくるわけです。(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/browse/-/15749661/ref%3Damb%5Fright-1%5F38386406%5F1/503-7009132-3074350

 けれども、たとえば今、この『ウェブ進化論』という本に関しては、僕は「なか見!検索」できなくてよいと思っています。本としてまとめて読んでもらいたい。ところが、これが3年とか4年たって、ピークを超えて、歴史になったら、僕は「なか見!検索」して欲しい。というのは、(ある年月が経つと、)検索エンジンに引っかかるか、引っかからないか、というのがものすごく大事になってきます。厳密に言うと、「なか見!検索」にしたから検索エンジンに引っかかるというわけではないのですが、グーグル・プリントにせよ、なんにせよ、本の中身で検索エンジンに引っかかるものと引っかからないものがあったとしたら、ある時期からは「引っかかってほしい」と思うわけです。

 だから、本の著者の意向と出版社の意向で、きめ細かく、たとえば、「この本はロングテールだから、つまり、どのみち動いていないから、絶版にするかわりに、『なか見!検索』にして、年に何冊かでも売れればいいでしょう、何かのきっかけでうまくブレークする可能性もゼロではないよ」とする。一方で、新刊でベストセラーを狙うなんていうのは、これは「なか見!検索」はできません、とする。アメリカでも、全部、「なか見!検索」(Search Inside the Book)できるわけではありません。出版社との合意によるのであって、そこには著者の考え方も入る。アマゾンはそれを尊重しながら、一緒にやっていこうとしている。

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