梅田望夫インタビュー「ネットは書籍出版を変えるか」梅田望夫

 インターネットというのは、とんでもない魔力をもっている。特に若い人たちにとっては。人とつながっていることの喜びを実感できるとか、共同作業ができるとか、非常に上質な経験の出来るメディアなのです。

 一方、リアル世界の人(中高年)の多くにとっては、日本の会社というのは、コミュニティとしてすごく楽しい。(雰囲気の、人間関係の)いい会社で、会社の業績がよかったりすると、仕事と遊びと自己実現が一つのコミュニティのなかで全部できてしまう。日本の高度成長期を通過した多くの人たちは、程度の差はあれ、こういうことを経験してきている。「リアル世界というのはすばらしいものだ」と。ところが、今の若い世代というのは、90年にバブルが崩壊して以来15年くらい、昔のような良きリアルな感じがないところで育ち、その一方でネットが出てきて、ネットの向こう側というのは、たとえば、オープンソースにおけるコラボレーションとか、ネットを介して誰かに出会うとか、こちらはものすごく上質な経験ができ始めている。ここに、とんでもない断絶がある。

 それが、会社であれば上司と若手の間にあるし、家庭のなかだと親子の間にある。全員が全員ではないけれど、ネットで深くていい経験をしている人ほど、その経験をたとえば親に伝えようと思っても、親はそれを受け止めるスキームがない。だからもう話してもしょうがない、自分たちの仲間だけでやろう、こういう感じになりやすい。インターネットがでてきてもう10年ですから、そういうことがどんどんアキュムレイト(集積)していっている。そういう感覚を持っていた人が、僕の本を読んで、みんな、激しい反応をするのです。この本を親に読ませたい、上司に読ませたい、というふうに。「感動して泣いた」という人もいる一方、怒り出す人もいる。この本をめぐる反応の振幅は非常に激しいです。

■「本」の持つパワーを再認識した

 今(2006年3月8日現在)、グーグルで「梅田望夫」と検索すると180万件超出てきます。本を出す前、今から1ヶ月ちょっと前までは、10万件くらいでした。10万でも多いと驚かれていたのですが、3年間ほぼ毎日ブログを書き続けてきてようやく10万に達したのに、『ウェブ進化論』を刊行してわずか1ヶ月で、10万から180万に増えた。タイトルの「ウェブ進化論」にいたっては、タイトルを決定する前(昨年11月頃)には、グーグル検索しても11件くらいしか出てこなかった。1ページにおさまるくらいでした。それが、今では、同じく180万件を超えるくらいヒットします。やはり、本の持つパワー、求心力というのはものすごいものだ、ということを改めて思いました。

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