何も言わずに読んでほしい。
ここにある言葉を、ただただ、読んでほしい。
── 小説家柴崎友香さん
一編目から涙が止まらないが、「泣ける」「感動」などという生やさしい本ではない。
自分の中の「言葉にならないもの」を爆破されるような感覚。
震え上がった。
── 「ダ・ヴィンチ」編集長関口靖彦さん
おびやかされる、
沖縄での美しく優しい生活。
幼い娘を抱えながら、
理不尽な暴力に直面してなお
その目の光を失わない著者の姿は、
連載中から大きな反響を呼んだ。
(初出=Webちくま2019年4月~2020年3月)

お知らせ
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- 新聞
- 2021.1.3
- 赤旗新聞に中村純さんによる書評が掲載されました。
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- 雑誌
- 2020.12.28
- 「Meets Regional」にて紹介されました。
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- WEB
- 2020.12.25
- 紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめするベスト30「キノベス!2021」の第18位に選ばれました。
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- 新聞
- 2020.12.13
- 読売新聞に橋本倫史さんによる書評が掲載されました。
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- WEB
- 2020.12.9
- HMV&BOOKS OKINAWAの中目太郎さんに“寒い冬に心をあたためてくれる本”として紹介されました。
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- 新聞
- 2020.12.7
- 文化通信(12/7号)にて著者が「2021年 注目の作家」として紹介されました。
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- 雑誌
- 2020.12.4
- 「ダ・ヴィンチ」2021年1月号(12/4発売号)の今月のプラチナ本で紹介されました。
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- 雑誌
- 2020.12.4
- 「週刊読書人」(12/4号)に砂川秀樹さんによる書評が掲載されました。
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- ラジオ
- 2020.11.27
- 文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」で、「ダ・ヴィンチ」の関口靖彦編集長に紹介されました。
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- 新聞
- 2020.11.21
- 毎日新聞に著者インタビューが掲載されました。
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- 新聞
- 2020.11.21
- 西日本新聞にて徳永圭子さんに「カリスマ書店員の激オシ本」として紹介されました。
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- 新聞
- 2020.11.21
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沖縄タイムスに與那覇里子さんによる書評が掲載されました。
[話題本題]海をあげる 上間陽子著 絶望の言葉を聞く番だ
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- TV
- 2020.11.17
- NHK沖縄放送局「おきなわHOTeye」<いまほん>のコーナーで紹介されました。
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- 新聞
- 2020.11.15
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琉球新報に上田真弓さんによる書評が掲載されました。
<書評>『海をあげる』 理不尽な日常を生きる
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- 新聞
- 2020.11.14
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日経新聞「あとがきのあと」に著者インタビューが掲載されました。
「海をあげる」上間陽子さん 沖縄見つめる日常の視点

痛みを抱えて生きるとは、
こういうことなのか。
言葉に表せない苦しみを聞きとるには、
こんなにも力がいるのか。
あれからだいぶ時間がたった。新しい音楽はまだこない。
それでもインタビューの帰り道、女の子たちの声は音楽のようなものだと私は思う。だからいま私は、やっぱり新しい音楽を聞いている。
悲しみのようなものはたぶん、生きているかぎり消えない。
それでもだいぶ小さな傷になって私になじみ、私はひとの言葉を聞くことを仕事にした。
(「美味しいごはん」より)


目次
- 美味しいごはん
- ふたりの花泥棒
- きれいな水
- ひとりで生きる
- 波の音やら海の音
- 優しいひと
- 三月の子ども
- 私の花
- 何も響かない
- 空を駆ける
- アリエルの王国
- 海をあげる
- 調査記録
- あとがき
ねえ、風花。海のなかの王妃や姫君が、あの海にいる魚やカメを、どこか遠くに連れ出してくれたらいいのにね。赤くにごったあの海を、もう一度青の王国にしてくれたらいいのにね。

でもね、風花。大人たちはみんな知っている。護岸に囲まれたあの海で、魚やサンゴはゆっくり死に絶えていくしかないことを。卵を孕んだウミガメが、擁壁に阻まれて砂浜にたどりつけずに海のなかを漂うようになることを。私たちがなんど祈っても、どこからも王妃や姫君が現れてくれなかったことを。だから私たちはひととおり泣いたら、手にしているものはほんのわずかだと思い知らされるあの海に、何度もひとりで立たなくてはならないことを。そこには同じような思いのひとが今日もいて、もしかしたらそれはやっぱり、地上の王国であるのかもしれないことを。
だから、風花。風花もいつか、王国を探して遠くに行くよ。海の向こう、空の彼方、風花の王国がどこかにあるよ。光る海から来た輝くあなた、どこかでだれかが王妃の到着を待っているよ。
(「アリエルの王国」より)
書店員コメント
私は何を読んでいたんだろう。
涙でぐしょぐしょになって、上間さんの抑制の効いた誠実な文章で綴られた
日常の大切な人と言葉に、自分の感情の揺れをのせていた。
遠く、安全なところから。
読み終えて、もう一度最初からページを開く。
沖縄で生きる人の息遣いが幾重にも聞こえてくる。これから何度も何度も読もう。
ずしりと胸を突かれました。
誠実でやさしさに溢れていて、最後に上間さんから渡されたもの、どうしたらいいだろう。
私たちの上空をずっと覆っている無力感、
昨日も今日も、逆らっても無駄だよと力を奪われ続けているように感じるけど。
打ちのめされないように鈍感になること?
沖縄には、「普通」の生活をスタートする地点に行くまでに戦わなきゃいけないことが多すぎる…。
こんな長い夜をひとりで走ってたら力尽きてしまうから、
疲れた人は休んで、三交代制のシフトみたいに
みんなで少しずつ走れたらいいなと思う。
そうでなければ、やさしい人からつぶれてしまう。
ずっと大切にしたい一冊であり、 たくさんの美しさとともに
大きな釘を心に打ちつけられるような一冊でした。
自分の店でも、少しでも多くの人に手に取ってもらえたらと思います。
まず文章の美しさに圧倒されました。
沖縄のことが大好きで、その歴史や政治的なことにも関心があるつもりでしたが、
本当にはなにもわかってないのだと思い知らされました。
ページをめくるごとに淡々と凛とした文章でつづられた
上間さんの想いが胸に降り積もっていき、最後まで読み終えたとき、
タイトルの意味を理解して呆然としました。
差し出されたものの途方もなさ、それに絶望する自分の無力が悔しい。
これから私はあらゆる時、何度も、このエッセイに描かれた風景や出来事を思い出すでしょう。
ささやかで尊い日常を送るあいだも、
そこに土足で入り込んでくる社会や権力を目にしたときも、
どうやってそれと対峙すべきか思い悩むときも、必ずこの本のことを思い出すでしょう。
間違いなく今年最上の、
どころか人生の大切な一冊となりました。
一人でも多くの方にこの本を届けたいです。
読んだ後も自分がいる場所に、ただただ立ち尽くすしかできなかった。
しかし、上間さんの掌から放たれた言葉はすぐ眼の前に確かに広げられている。
今度は私達がそれらに触れて
しっかりと握り返す番ではないだろうか。
この時代において、様々な人々が読まなければいけないエッセイが、ここに誕生した。
自分の生き方、罪深さをあぶり出す。
強い言葉でなくとも訴えかけることを教わりました。出会えてありがたい一冊でした。
それはどう考えても間違っていると思っても、~したかったで通り過ぎてしまう。
そしてその本当の苦しみを深堀りしようとしない。
上間陽子さんの文章は、心に深く侵入してきて突き刺さり、何かあなたに感じることはないの?
することはないのか? とつきつけてくる。
「海をあげる」。私はこの言葉に何を返せるのか?
何ができるのだろう。心が興奮と涙でいっぱいだ。
沖縄の海に土が入っていくのを想像したことがある?
それがどんな大きな震えをもたらすものか。
エッセイとして今伝えなければならないこと、迷いながらも書かなければいられないものは、
魂の奥まできた。優しくて強くて、なんて素敵なんだろう。
風花ちゃん(お子さん)に語ること、生きる姿を見て、形式的にしか判断しない社会、
声なき声を聴こうとしない社会、どんな家庭環境で育ち、どんな辛い過去を背負っても、
そんなことをしてはいけない、するべきではないという上辺だけの言葉があふれていることがむなしく、上辺だけの世界で自分は知ったかのようにぬくぬく抵抗していたつもりでいた。
自分が辛い。
この作品に出会って、声なき声を聴いた。本当に心から良かった。
この本はどうしても広めたい。多くの方に出会ってほしい。
そして、この声に耳を傾けてほしい。
世の中には様々な問題があり、その問題は身近にある。
ただその問題に気付くことができないことがあり、今の日本に足りないものは
身近にある問題について考えることではないか? そう思いました。
「三月の子供」が心に残りました。
お互いの家庭の状況が分かったからと言ってお互いの子を預かってもらったり、
預かったりはなかなかできないし、
私自身いろいろと考えさせられるところでした。
様々な形の愛情が詰まったエッセイをありがとう。
この本で何かを感じることが出来るのではないかと思う。
微力ながらそれに自分が関われたら……自分が少し救われる思いになった。
今はこの本を売りたいと思っています。
こんな当たり前のことを奪われた人たちがいる。わたしが暮らすこの国で、
わたしが生きるいまこの時、暴力と無関心にずっとさらされている人たちがいる。
「私は、どこに逃げたらいいかわからない。」
読み進めるたびに、
考えぬかれたまっすぐな言葉が胸の奥にとどく。
いまだからこそ、たくさんの人に読んでほしい。
奪われた人たちの声を聞いて、応えてほしい。
辺野古問題に直面する中、それぞれが何を思い、何を抱えて生きているのか、
こちらの想像力を掻き立てるものでした。
海に土砂が投入され、生き物たちがどんどん犠牲になっていく。
海に住む生き物たちだけではなく周辺住民、もっと広く捉えると沖縄に住む人たちが
ゆっくりと頭から土砂をかけられ、暗闇におとされていくようで、
そのような状況に追い込んだ人はすごく自分勝手で残酷だと思いました。
そういう残酷な状況をずっと孤独に抱えてきた沖縄の半分でも支えて
声を上げないといけない。もっと大きな声を。
そんな切実な願いと憤りを感じました。
“AIにこころはあるのか” 、そんな問いも虚ろに響く無機質な言葉で傷つけられた海。
“水でふくらんだ娘のまるいおなか” に愛おしさを。
“「海に土をいれたら、魚は死む? ヤドカリは死む?」” 娘の問いに悲しみを。
“友達の作ってくれた無敵の粕汁” に温かさを。
“娘に教えるぶっかけうどん” に温かさを。
“祖父が、小さいまま死んでしまった妹がいるニライカナイ” を遠くに近くに。
“波の音、海の音と娘の寝息” に安らぎと不安を。
一緒に食べて笑って泣いて、日々の営みから紡がれた言葉。
一緒に寄り添って、あなたの荷物を絶対に半分持つ、そんな感情の共鳴が生み出す言葉。
上間さんが紡いだ言葉は、静かに少しずつ、でもしっかりと滲みわたっていく。
そして沖縄の海は青く澄んでいく。
やがていつか、この本を思い出すとき、
タイトルは「アリエルの海をあげる」と響くように。