ヤンキーと地元 打越正行

解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち

解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち

暴走族のパシリから始まった、沖縄でのフィールドワーク気鋭の社会学者による待望の処女作!(岸政彦さん、上間陽子さんと共同研究者)

第6回沖縄書店大賞 沖縄部門 大賞受賞
武田砂鉄さん書評 ALL REVIEWS
生まれ故郷が嫌いだと吐き捨てるように言った、沖縄の若者。その出会いを原点に、沖縄での調査は始まった。生きていくために建設業や性風俗業、ヤミ仕事に就いた若者たち。10年以上にわたって、かれらとつき合ってきた社会学者の、かつてない記録の誕生!
ここにあるのは「優しい沖縄」ではなく、地元社会の過酷な掟である。パシリから始まり、10年という歳月をかけた、驚愕のエスノグラフィー。――岸政彦(社会学者)
バイクのうなり、工事現場の音、キャバクラの笑い、深夜のコンビニ前のささやき。 本書を満たす音をどう聞き取るのが「正しい」のかは、まだ決まっていない。 ――千葉雅也(哲学者)
上間陽子の『裸足で逃げる』と対になる作品だ。――藤井誠二(ノンフィクションライター)
朝日新聞(2019.4.29) 読売新聞(2019.5.12) 毎日新聞(2019.5.26) 産経新聞(2019.4.14) 沖縄タイムス(2019.4.20) 琉球新報(2019.4.21) 各紙紹介 大反響!!

「はじめに」より

沖縄の暴走族やヤンキーの調査を私が始めたのは二〇〇七年のことだ。

その頃、ゴーパチ(国道五八号線)にいた若者たちは、二〇一七年にはサラ金の 回収業、金融屋の経営、スロットの台打ち、性風俗店の経営、ボーイ、型枠解体業、 鳶、塗装、左官、彫師、バイク屋、キャバクラ嬢、弁当屋、主婦になっていた。……

彼らが就いた仕事も、生活スタイルも実にさまざまだが、その大半が過酷だ。 こうした中で、彼らはどのように沖縄を生き抜いてきたのだろうか。

写真撮影:打越正行
写真撮影:打越正行
目次
はじめに
下世話な冗談/「電話代がおそろしかった」/あまりに日常的な暴力

第一章 暴走族少年らとの出会い

  1. 広島から沖縄へ  
  2. 「メンバーにしてください」/駐車場で飲み明かす/暴走族のパシリになる/響き渡る爆音──沖縄調査一日目/ゴーパチという舞台/卑猥なウチナーグチ
  3. 拓哉との出会い
  4. 「すぐにでも結婚したい」/「名護はいいけど地元は嫌」/はじめての土地で彼女をつくる/ナンパをする理由
  5. 警官とやり合う
  6. 職務質問を受ける/警官と交渉するスキル/携帯サイト「中部狂走連盟」と写真アルバム/調査の前に信頼関係を築く

第二章 地元の建築会社

  1. 裕太たちとの出会い
  2. 「俺、解体屋しかできない」/鉛筆を「重い」と言う裕太/地元で有名な暴れん坊、太一
  3. 沖組という建築会社
  4. 沖組を立ち上げる──康夫社長の生活史/会社経営の「最強のタッグ」/ピンチを切り抜ける/「給料支払い遅れなし、定額」
  5. 沖組での仕事
  6. 初日の朝/Pコン外しと材料出し/最小限の力で資材を運ぶコツ/材料出しの二つの方法/型枠解体屋の仕事/現場監督vs.従業員/右折をめぐるバトル/朝礼での作業確認/けがの防止と暴力/共同作業を乱す者への暴行/効率よりも上下関係/「時間の話はするな」──一人前への道/現場に鳴り響く音と段取り/事務所の近寄りがたさ
  7. 週末の過ごし方
  8. 送別会の夜/先輩たちとのギャンブル/ナンパから、キャバクラ通いへ/ダービーレースと忘年会/仕事と週末と夜の世界
  9. 沖組を辞めていった若者たち
  10. 「ズルズルきてしまった」──仲里の生活史/達也への暴行、そして離職/「今の若いのはあまえてるよ」──よしきの生活史/達也のスロット通い/仲里の見立て/その後の仲里、達也、慶太/浩之への暴力/しーじゃたちの仕打ち/「儲けて、金、持ってるのが勝ち」──宮城の生活史/その後の沖組
  11. 沖組という場所と、しーじゃとうっとぅ

第三章 性風俗店を経営する

  1. セクキャバ「ルアン」と真奈
  2. 「何してでも、自分で稼げよ」──洋介の生活史
  3. 地元での理不尽な暴力/キセツ先での「屈辱」/「上に立つ」という決意
  4. 風俗業の世界へ
  5. 沖縄の性風俗業界/セクキャバ受付からオーナーへ/風俗店の経営者になる/「学歴なんかより、友だち」
  6. 「足元を見る」ということ
  7. 「ヤクザ」への対応/越えてはいけない一線──警察への対応/女の子を雇う/「地元つながり」を適切に使う
  8. 風俗経営をぬける
  9. 女性従業員へのサポート/杏里と真奈
  10. 性風俗店の経営と地元つながり

第四章 地元を見切る

  1. すべてを捨てて内地へ──勝也の生活史
  2. 鳶になる
  3. 和香との結婚、そして別れ
  4. キャバクラ通い
  5. 地元のしーじゃとうっとぅ
  6. キセツとヤミ仕事
  7. 鳶を辞め、内地へ

第五章 仲間、そして家族

  1. 家出からアジトへ──良夫の生活史
  2. 「自分、親いないんっすよ」──良哉の生活史
  3. 夜から昼へ──サキとエミの生活史
おわりに
あとがき
初出一覧
調査実施一覧
参考文献
打越正行(うちこし・まさゆき)

打越正行(うちこし・まさゆき)

1979年生まれ。社会学者。2016年、首都大学東京人文科学研究科にて博士号(社会学)を取得。現在、特定非営利活動法人 社会理論・動態研究所研究員、沖縄国際大学南島文化研究所研究支援助手ならびに琉球大学非常勤講師。共著に『最強の社会調査入門』(前田拓也ほか編著、ナカニシヤ出版、2016年)、『サイレント・マジョリティとは誰か――フィールドから学ぶ地域社会学』(川端浩平ほか編著、ナカニシヤ出版、2018年)などがある。
その他は、個人HP参照。

ヤンキーと地元 解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち 打越正行

打越正行

ヤンキーと地元 解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち

四六判/304頁/ISBN:978-4-480-86465-9
定価:本体1800円+税

購入する 試し読み(「はじめに」全文公開)