浪速のスーパーティーチャー守本の授業実践例

第一章 詩

1 「木」 田村隆一

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⑤ まとめとして


ぼくはきみのことが大好きだ

 「なぜ、木を大好きになったのか?」の答えは、「自分勝手で自己主張ばかりする人間や、その社会にばかり目を向けて、それにとらわれて屈託していた詩人が、悠々として大地に根を張り、宇宙と向き合う木の姿の発見を通して、より大きな視点を獲得し、自分の屈託や苦悩を相対化できた」ということでしょう。

 最後に、木を「きみ」とあらためて言い直し、親しみを込めて、あるいは感謝を込めて呼びかけています。

 人間やその社会で鬱屈し、もやもやとした暗い心情が、最後には木によって星空を見通すことのできるまですかっと晴れたような、解放感・爽快感ともいえる明るい心情に変化したのです。これを生徒が実感できることが、この詩の授業のねらいなのです。

 わたしの教室では、この詩を班で朗読させました。どこを斉読(群読)させるのか、どこを一人で、どう読ませるのかは、作品理解とも関連してきます。「表現」としても効果的です。また、この音楽劇のCDも出ていますので、それを教室で鑑賞するのもいいでしょう。武満氏は、「好きだ」と「大好きだ」をどうアレンジしたのか、「ひとつとして同じ星の光りのなかで/目ざめている木はない」は、どう歌うのか(実際は、バリトンの独唱です)。自分たちの朗読との違いなど、面白いテーマですね。わたしはそこまで、できませんでした。この授業は1時間です。今の現場は忙しく、この詩で2時間も配当するなど及びもつきませんが、それぞれの学校で、授業や教材の位置づけが異なりますので、このような実践も試してみてはいかがでしょうか。

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