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リサーチのはじめかた ――「きみの問い」を見つけ、育て、伝える方法 / Where Research Begins Choosing a Research Project That Matters to You (and the World) トーマス・S・マラニー(スタンフォード大学教授/『チャイニーズ・タイプライター』著者)/クリストファー・レア(ブリティッシュ・コロンビア大学教授) 安原和見 訳/スタンフォード大とUBCの教授が18年かけて磨き上げたリサーチの極意、待望の翻訳!読書猿氏推薦!「知はすべて「あなたの感想」から始まる」刊行前重版の大反響!

1280頁に折り込まれた150万字の生活史の海。いまを生きるひとびとの膨大な語りを一冊に収録した、かつてないスケールで編まれたインタビュー集。

こういう話はどこにでもあるものだろう。でもやっぱり、大阪だな、と思う。

この街に三五年以上住んで、やっぱりここがいちばん良い街だと思っている。

もちろん、どの街も、それぞれが世界でいちばん良い街だ。

それはちょうど、飼ってる猫が世界でいちばんかわいい、ということに似ている。ほかの子を飼っていたら、もちろんその子が世界でいちばんかわいい猫ということになる。世界中の猫が、それぞれ、世界でいちばんかわいいのだ。

だから、大阪が世界でいちばん良い街だ、ということと、それぞれどの街も世界でいちばん良い街だ、ということは、矛盾しない。

だが同時に、大阪がどうしても合わず、嫌になって出ていくひとも多い。そういうひとにとって大阪は、世界でいちばん合わない、嫌な街ということになるだろう。

それもまた別に矛盾しない。

大阪は、世界でいちばん良い街で、世界でいちばん嫌な街で、要するにそれは、世界でいちばんふつうの街で、世界でいちばんどこにでもある街だ。

すべての街が、世界でいちばんどこにでもある街である。

そこで生まれ、暮らして、死んでゆく、世界でいちばんありふれた私たち。

(……) この本に、私が付け加えることは、何もない。

とにかくもう、読んでください、としか言いようがない。一五〇人の生活史はどれも、ほんとうに、しみじみと、ただおもしろい。ここにはあらゆる喜びがあり、あらゆる悲しみがあり、あらゆる希望とあらゆる絶望がある。ここには大阪という街がある。

 ── (岸政彦「あとがき――世界でいちばん、普通の街」より抜粋)

COMMENT

小説やドラマにするとどうしたって零れ落ちてしまう、瞬間の連なりとしての人の一生、が加工されず生のまま在りました。
自在な言葉のノリとうねりに興奮しました。
「こんな本出されたら儂ら稼業(しょうばい)あがつたりやで」と思いました。

──  町田康さん(作家)

喫茶店のコーヒーの匂い、ホテトルでの後悔、夜間学校でもらったスラムダンク。
書き留めなければ消えていってしまう市井の一人一人の人生物語は、
大切に抱きしめたくなる宝物のようでした。

──  高橋弘樹さん(「家、ついて行ってイイですか?」企画・映像ディレクター)

えらいもんで、ネイティブ大阪人の僕からしたら皆さんの言葉がスッと入ってきます。
大阪の街にはそれぞれの地域の「じゃりン子チエ」があるんやなぁ。
あと大阪弁って文章でみたらこんなにも脂っこいんですね。あったかい。

──  見取り図 盛山晋太郎さん(芸人)

NEWS

新聞

2023.12.16

産経新聞夕刊の「エエねん!この本」にて紹介されました。

release

2023.10.31

特設ページを開設しました

大阪の生活史 目次

どこでやってんのって聞かれて昭和町っていうたら友達にめっちゃ笑われたみたいなんですよ。「難波とか南とか北ちゃうん! どこやねんそれ!」みたいな
聞き手
明石珠美
たまたま暦を見たんですよ、神宮館とかありますでしょ。そしたら適業が書籍業って書いてあったんです。「あ、これだったらいいんだわ」と
聞き手
足立琴音
うちのおかんは俺にだけよう言うてたんや、人に間に合う人間になれいうて
語り手
杉浦正生
聞き手
安達宏和
今までは必死で何でも自分一人でやってきたけれど、少し甘えられるようになったのが六〇過ぎてからです
聞き手
阿部朱音
こんなん好きやろとか言って、ほんでいきなり山を降りて、踊らされて。それが始まり(笑)
聞き手
池田アユリ
もう正直邪魔くさいわほんま……耳いらんねんやったら残せよって思うもん
聞き手
石浦光代
チャイムが鳴っているの、聞くのもすごく懐かしいし。で、職員の声とか、放送の声とか、あと、入り口の上に飾ってある絵、私のきょうだいが描いた絵なんです
聞き手
石田賀奈子
私は私のお父さんみたいな人と結婚したかったん
聞き手
板坂淑子
全部、噓のかたまりや
聞き手
李ナオ
「もう聞かへんから、最後に聞かせて。あんたはお父さんか、お母さんか」って。私は「お父さんやで」と。「よし、わかった! ほなお父さんやな」と
聞き手
井上司
お父さん、タオルをすっごい、絞ってくんねん(笑)。あの、カラッカラになってんちゃん!っていうくらい
聞き手
井之上日向子
じゃあ別に、本当に手術します、切ります、になったときに別に捨ててなくてもまあいい。それはそれでね、話のネタとして面白いやん。永遠の童貞ですって
聞き手
井上瑞貴
楽しかったーとか言って帰っていく人多いからな。漫談ちゃうねん、言うねんけどな
聞き手
今堀紗理奈
大阪の生活史 - 大阪の風景写真 写真=岸政彦
なんで俺だけ小遣いくれるのかなあって。それが本当の母親やったんやろうけどなあ。産んだ子はどうしても恋しいから見に来るんやろうなあ
語り手
富永武
聞き手
上田假奈代・岸政彦
お父ちゃんが写真撮ったら、写真にお父ちゃんが写ってない。アルバムにな。お母ちゃんと子どもは写ってるけどもお父ちゃんは写ってない
聞き手
潮佳澄
でも営業許可申請することによって、毎年確定申告せなあかんくなるやんか。どっちや、と
聞き手
大川将
援助交際とかパパ活を通して、一番しんどいのってやっぱりこういう感覚が壊れること。感覚の崩壊って本当に元に戻すのが大変
聞き手
大久保遥
朝三時に家出るやん、そしたら回す時間もないし、取り込む時間もないから、今のこのちょっと発酵させてる時間に、洗濯物干したいみたいな
聞き手
太田紗華
もうパチンコでも何でもいいから借金つくったろう思って、わざと
聞き手
大坪加奈子
でっかいやつばんばんばんて置いて「今日は白菜描こう」みたいなんで私が描いたら「あんた小さすぎるわ!」
聞き手
大野卓
孫になんかクリスマスにおもちゃなんかやったらいいけどな、そんなん一時的なもんやん。本やったらな、またなにや思て
聞き手
岡由利子
民主主義でいきましょう
語り手
戸川寛子
聞き手
小川直洋
ビールもやけどキムチもやけどレコードをかけたりとか、みんなでわーわーわーわー、もうほんまに畳もなんもないとこもあんねんで
聞き手
折田千峰
報道のヘリコプターがバリバリバリバリって飛んでる。何十機もね。そんときにがれきの下のうめき声って聞こえへんやん、踏まれてても。なんで飛ばすんや
聞き手
柿本明日香
全部日本語やけど、覚えたね。大きい機械、四つぐらいある。全部、僕はボタンで覚えたんや。名前はわからんけど。それでないと班長はできないからな
聞き手
カツラ・シャハラ・バーヌ
大阪の生活史 - 大阪の風景写真 写真=岸政彦
「よかったらたこ焼きとかできますけど」言うたら「おー。ほんだらあんたら兵庫県人会の県人会代表で、ちょっとそれやってくれや」って言われて
語り手
松本浩治
聞き手
加藤勲
だから大正区もそんなにガラがよくないのに、わからないんだよ、田舎もんだから(笑)。ホントにわからないのが強みよ
聞き手
加藤舞
「俺の今後の人生でもって、あなたのすべてを肯定します」って書いた気がするわ、たしか。全部、間違いじゃなかったんだよっていう意味で
聞き手
金井塚悠生
だから「今里の水先案内人」っていう肩書きを自分につけて
語り手
山本光一
聞き手
金井麻由子
かかり過ぎだよ一一年、初めての三回戦、ようやく去年。まぁほんで祇園花月を選んで、すごいねぇあっこは、めちゃくちゃいい劇場
聞き手
兼信将太
難儀しながら試行錯誤してた時間、返せよって。徹夜のうどん代も返せよって感じやったわ
聞き手
河内美砂緒
悪気もないんやろうけど、私のしゃべり方を、きつくじゃないで。真似たんやんか。「なんとかやしよ!」とか言うて
聞き手
川上聖加
でね、これもまったくの偶然やけども、今の本屋の場所はもともと、やっぱり本屋さんやってんて
聞き手
川北栄里
スタイリストになろうと思ったら東京に行かへんかったら仕事がないのよね。雑誌社とかそういうようなところやから。東京まで行く勇気はなかったのよ
聞き手
川邊良太
わたしも飲み屋さんなんかやったことないし、飲み屋なんかやるつもりも全然なかったんで。で、まあ主人は断ってくれると思ってたんですが、よう断らんかったんよ
語り手
烏野真由美
聞き手
上林翼
僕って結局そういうことしかでけへんからな。要は、それをしないことには自分の武器があんまりないから、い うのがどっかにあると思うわ
聞き手
菊谷幸木
日本に来て、お母さんね、大変だろうから、あなたが養ってあげたらって。だからまあ、腹立って、儒教なんかクソくらえって(笑)。何が家族だって
聞き手
岸政彦
大阪の生活史 - 大阪の風景写真 写真=岸政彦
わたしもワヤンに命を与えていた。それに息を吹き込むんだ。だから、わたしの呼吸と心の半分を、ワヤンに分け与える感じかな、半分を、さっきのワヤンたちに
語り手
ナナン・アナント・ウィチャクソノ
聞き手
岸美咲
ほんで俺、だから大学経済学部やってんけど、経済学部が一番潰しきくで、って言われて、で案の定潰れたみたいな。はははははっ
語り手
松川𥙿次
聞き手
岸本寿怜
ちょっとなんか行ってきていいよって言われても、知らんとこで、急に放り出されても。いっこの店でずっとおったかな。お酒飲んでずっと、ぼーっとしてたかんじやった
聞き手
木下拓也
それがさ、その、田舎じゃ「九十九島せんぺい」売ってるとこなかってんやんか。その頃な。あれはどこで買ったんやろっていまだに不思議や
聞き手
木原将貴
子どもを持ってかれたのがもうネックになってて、そういうときに知り合ったから……寂しいじゃないですか、ずっとひとりで。飛田の黒電話で毎日しゃべってました
聞き手
金益見
ワイシャツを一ダース作るのに、生地はなんぼいる、縫い糸は何本いるという具合に、工業振興庁いうところで、買い主は所要量証明を、許可もろて輸入するLCを開くわけや
語り手
金聖大
聞き手
金光敏
言うたら、変えることによって、ぼくのアボジの強制連行の歴史がそこで終わってしまうから
聞き手
工藤沙希
僕ちっちゃいんですけど、それちょっとちゃうんちゃうかなって。いま思えば嬉しかったんやろなと。新築の家をね
聞き手
小池かずみ
落ちる、いうたらもうスローモーションやで。一五〇トンの大きな神戸高速の桁がこっちにぐるーっと来て、どすん
聞き手
小林悠子
朝来て、例えば将棋や麻雀や、そんなんやってね。お昼食べて、また戻ってきてやって。晩ご飯食べて、またやって。そんな感じで
聞き手
駒野永樹
あんた心臓麻痺おこすで、駄菓子買いに来て心臓麻痺おこしたらあかんで
聞き手
小山美砂
子ども、風呂連れていったらもう、みんなが競争であれやん。裸にすんの待ってて、「洗ろたろー」いうて、ほいで「ゆっくり風呂入りやー」とかいうて
語り手
大賀喜子
聞き手
齋藤直子
大阪の生活史 - 大阪の風景写真 写真=岸政彦
もうこの人じゃないとあかんっていうよりも、今、母から逃げたいって思ったから、逃げたんで
聞き手
齊藤美咲
私もこんなん、自分がここに嫁に来て、ここまで自分でできるとは思わへんかった。「ええー風呂屋に嫁に行くのー。できるかなー、大丈夫かなー」って
聞き手
齋藤恵
あ、今日梅田の八天堂のクリームパン買いに行こうおもたら、ピッて行って、それ買うて帰ってくる……だけで、なんか、スッとすんねん
語り手
よしえちゃん
聞き手
栄裕矢
歯を食い縛りすぎたもんやから、ガキっていってちょっと歯が欠けたよね。嚙みしめるのも殴られる瞬間はよろしくないなというのは勉強になったんです
聞き手
酒本純
人は流れる
聞き手
さかもとりく
四歳過ぎてますけどね。面接だけしてください
聞き手
佐久間素子
学校と連携もとるし。だから最初の年ここで願書かいてやったし、先生も来てくれて。だからなんか、全然すっと入っていけて。なんなら一〇年続いてますけどみたいな
聞き手
笹部建
やっぱり人生設計立て直すというのが、二九歳より五三歳のほうが大変
聞き手
佐島灯
あんな大きなストーブが透明なように真っ赤に燃えたその冬の思い出は、ちょっと得難いものやね
聞き手
佐藤隼秀
自分の親が生きれなかったぶん、まあ、少しでも長生きして、うん……子どもたちにとって帰る場所があるよっ ていう存在にはね、なりたいですね
聞き手
重永要輔
すいませんけども、ちょっとそのご相談だけは受けかねます
語り手
久保田暁
聞き手
清水唯一朗
んで、なら大阪行って、西成行ってみようて
聞き手
下田茂雄
大阪の生活史 - 大阪の風景写真 写真=岸政彦
よう、言われたわ。「やあ、みっくら、たたっくるされんど」言われてん
語り手
金城清範
協力
金城豊秀・澄代
聞き手
末松史
毎日ユニバでヤッホーしてて。ヤッホーし始めてからまたママが帰ってきたわけよ
聞き手
末𠮷弘聖
みんな辞めたらあとみんな全部飲み屋になってるやん。天満でも。そやかい、なんにもその洋服関係のだけのやなしにやな
聞き手
杉生美紀
そういうつながり、人の手によって、こう、救われるっていうのがすごい大事やなとそのとき痛感した、かな
語り手
藤井奈緒
聞き手
杉本博子
退院したら車がなかった。もう廃車されてんねん、もう乗ったらあかん言うて。ほんで車なかったらもうしゃあないわぁ言うて警察署行って、んで「免許返します」って返してきて
聞き手
助口優衣
二一時には寝ます。時計の針が二一時を指したら、シンデレラのごとく
聞き手
スズキナオ
上の人はみな将校やんかな。その人はなんか、枕草子とかそんなん暇なとき教えてくれて。おもしろかったよ
聞き手
鈴木陵
後半のほうは弓いらないんですよねって言ったから、いりませんって言ったけど、やっぱり弓してくださいってなったりとか、コロコロするんねんか
聞き手
髙嶋文洋
でも結局そのお会計の伝票を見て、母が「ちょっと待ってて」って、アコムかどっか行ったんすよ。私たち三人待ってて。そのときの罪悪感がすごくて
聞き手
高田理子
いや覚悟じゃなしに、どうやってミイラになるんやろっていうその好奇心が先やった俺は
聞き手
髙橋遥
もうそら、聞くも涙、あれも涙やで。だってだんなは、ここにお金ガッバー入れて、アホみたいなな、赤鉛筆して、住之江競艇行くんやから
聞き手
鷹羽真夢
そう、それが全部いなくなっていった。みんな注文仕事してた
語り手
賀茂泉水
聞き手
田澤萌
大阪の生活史 - 大阪の風景写真 写真=岸政彦
ほんだら、竹田プーっていう子が、「お菓子の御名は」って聞かれて、「ちくびです」って(笑)。もうみんな、ぶはははは。ちくびはないやろ
聞き手
橘秋菜
私、どこにでもそういう人おんねんなって。世の中はそういうもんになってるから、なんていうの、もう、気持ちが。もうどこに行っても私平気よ、たぶん
語り手
伊藤春美
聞き手
田中亮子
お父ちゃんはな、私を可愛がるというか、好き勝手はすんねんけど、私に対しての愛情はあんねん。それは子どもでも感じるねやんか
聞き手
谷彩奈
ミシンは動かされへんからな。アイロン台を起こして、押し入れがあったから、そこから布団出して寝てたと思うで。今みたいな立派な設備があるかいな
聞き手
谷卓生
いまやから、もう、笑えんねん。なんでこんなことになんねんて、自分の人生いったいなんやねんて。こんなことは体験もしたくないわ
語り手
コウ・ヨンス
聞き手
チャ・ヨンジ
やっぱりな、生野区や。俺らが住んでるところはな
話し手
中口忠司
聞き手
朱喜哲
コップの底が抜けたような寂しさは、結局全然埋められてないです
聞き手
塚田ミナミ
今度一枚写真見してあげるわ。あんねん、一枚だけ、大事にしてる写真が
聞き手
辻並麻由
鍵を与えてるやついっぱいおる。前もそうやし隣もそうやし、何かあったら困るやん。帰ったら先座ってビール飲んどるやつがおるんやから
聞き手
辻本若菜
そこそこ人間味が溢れる、崩れてるって言うかね。街が綺麗すぎるとちょっと疲れちゃうんよね、なんか人間味があるほうが好きだから
聞き手
土山宙将
ただ、高二のときに、部落民宣言をせんとあかんと言われて、それをしたのだけは、頭が真っ白になったのは覚えているけれどなぁ
語り手
大北規句雄
聞き手
筒井紘平
要するにジャズの初めの頃の音楽や。せやからジャズのあの頃、タタタタタタタタタタターラ、とかあるやろ? タラタロトトトラタタターラ。あんな曲とかやな
聞き手
弦牧潔
大阪の生活史 - 大阪の風景写真 写真=岸政彦
いま思うとその姿は誇りに思えるな、と。隠そうとまったくしなかった。もうね、頭は高校球児みたいでデビューしたんで
語り手
谷山伸子
聞き手
徳本みどり
堺筋の電話局の前に市電が一台止まってた。そいつはもう骨だけ。もう「電車の骸骨」ゆうのん見たん、わしは 初めてやった
語り手
岡田孝輔
聞き手
冨田すみれ子
劇団に入ってお芝居してみたら面白くって仕方ないっていうのがやっぱりあったんだよね。ほかのことをやって 何にも長続きしなかったけど、これはできるって感じ
語り手
山口智恵
聞き手
冨永千秋
僕の中で悟りにも似た感覚があって、名付けって一番最高のかたちの作詩やなと思って
聞き手
中嶋典太
夢はこの地でお店をずっとこの先、二〇年、三〇年できるかどうかは不明ですけど、なんか見届けたい
語り手
白木青子
聞き手
中嶋光代
名簿、俺が作ったから、会員の名簿。大和川フライングクラブってつけて。うちら、飛行機飛ばす人もおるんやで
語り手
荒木慶夫
聞き手
中西美穂
美味しいですよ。ちゃんと御座候のあんこで炊いてますから。それは毎年もう決まってるから、必ず
語り手
新井洋子
聞き手
中村詩おり
僕が、万博反対から、教区の体制をいろいろこう議論してた頃、教会の中の保守的な人たちは、「あいつは悪魔に憑かれてる」ていうのでね
聞き手
中村祥規
西成で俺がギター持ってたらさ、急におっちゃんが「それ弾かせてよ」みたいなかんじで、下手くそな歌とか聴かせてくれたりすんねんけど
語り手
山内彰馬
聞き手
新山大河
天王寺動物園のマレー熊は、よく動きが人間ぽいって言われてて、中におじさんが入ってるんじゃないかって
聞き手
西本愛
たまたま封切りになって、この子が観たいって言うから。で、神戸の行きつけの、MOVIX六甲に行った。わざわざ湾岸道路を車で走って。あれが私映画見た最後ですわ。映画館でね
聞き手
橋詰奈央
最初は佐川急便、そんなんしてなかったからごっつい嫌がられた
語り手
畠中英比古
聞き手
畠中香織
大阪の生活史 - 大阪の風景写真 写真=岸政彦
わたしこの家でな、いろいろ日本の習慣を見習いながら、ここのご両親を大事にしたわけやんか、正直に言うとな
聞き手
蜂須賀光枝
入り口に「銅鑼叩いてください」って銅鑼が吊られてて、銅鑼叩いたら一〇〇歳くらいのおじいちゃんがよぼよぼって出てきて
聞き手
蜂本みさ
別に興味ないねんな、自分の名前とか。特になんか人が思ってる以上に記号でしかないから。どうでもいい、別に
聞き手
馬場美智子
そんときたまたま、ちっさい本屋さんがあったんで、見たらあのー、男性のね、ヘアカタログあったんですよ。それでたまたま
聞き手
林紀子
朝さ、朝、海見たら全員うんこしてんねやんか、浜辺で
聞き手
林由佳
あの競馬場行って、お父ちゃんと。1-4、1-5のやつこうてな、馬券。当たって。そのままでええのにとおもとってん、あたしの誕生日やから。ほんなら当たって。金魚こうて
話し手
金良美
聞き手
韓光勲
普通に舞台だったんだけど、その舞台を立てて、そのときに「このまま就職して、ずっと社畜になるのかあ」っ ていう気持ちになって
聞き手
比嘉繁人
カナダのおじやんも生きてたらそんでいいって言ってた。日本にいてたら戦争に連れて行かれて、もう絶対死んでるって、それ常々言ってたおばあちゃんね
聞き手
東澤暁美
闇ん中でみんなでじっと黙ってみたらどうなるか、声出したらあかん。闇に包まれる感じを味わおう。それをあとから文章にしようや、って
語り手
桝井英人
聞き手
東勧
だってさ、顔面好きな男と結婚すんねんで、むっちゃ芸術家じゃない? 私よりパンクじゃない?
聞き手
東万里江
舞台の上に乗って、紙渡されてこの内容ですみたいなんを「そんなんできひんやん!」ってなって
語り手
さかいまさこ
聞き手
樋口由紀子
売上もなんとか回復せなあかんしっていうんで。で、もういろいろやったけど。んー、そんなことないんかもしれんけど、俺はもうそんときはもうハッキリ言うて、一人でやってるぽかった
聞き手
櫃田知春
大阪の生活史 - 大阪の風景写真 写真=岸政彦
やっぱりそのお母さんにとって、まあちゃんはもうゴッドマザー
語り手
瓢簞コマ子
聞き手
瓢簞カナ
なんもこわない。なんにも怖くなかったよ。だって、家がそんなんやったもん。家にやくざ出入りしてくんのにさ、そんなん思うって変やんか
聞き手
福井しほ
やっぱり性にあってたのよ。針や糸よりも金槌とバーナーのほうが
語り手
笹川まさ子
聞き手
福田喜代
大阪の人間は全員阪神ファンやと思てたから。んで、来た一年目が九二年やってん。暗黒に咲く一輪の花や
聞き手
藤井七菜
あの古い家、懐かしいわ。ぶどうの木、四隅にな全部一面にぶわって。めちゃくちゃなるデラウェア。甘いしな
聞き手
藤田真由美
「ニューウェーブ・テクノ」で、おしゃれのルールがそこで「ペタチーン」って
語り手
小澤健
聞き手
藤本和剛
あっこに安いラーメンあんねん。あれ買いに行こうて。三〇円か二五円か、一袋
聞き手
藤本英彰
私、人生で何回「ぎゃー!」って言ってるんやろ
語り手
山田千津子
聞き手
古里友香
ああ、大阪は大変だよ。大阪は大変だわ。なかなか大変
聞き手
細川あやの
だから、しんどいって思って、家の中に閉じこもると、絶対ダメやと思う。見られていくらやから
聞き手
マキノチヨ
桜の時季とか秋のモミジの時季とか、そういうときにみんなチョゴリを着てね。夜遊会というのが盛んでしたんやわ
語り手
安田勇雄
聞き手
松岡理絵
ぷーんと匂いしたし、おこた温かかったしね。ほんまに温かかった。それは覚えてる。それぐらいちゃうかな。からどうっていうことはなかった
聞き手
松下千空
大阪の生活史 - 大阪の風景写真 写真=岸政彦
ヒッチハイク。家から七〇キロくらい。家帰って着替えて、パーティ行って。で、朝六時戻って、誰もわからんように。寝てる感じにして、寝てないけどそのまま仕事して
語り手
ベンハイム・イダン
聞き手
松村万由子
この会社を作った神様がこういうことを教えてくれてる、と。疑う人はおれへん。みんな信奉してた。だからまあ宗教でもあるし、軍隊みたいなもんやわな
語り手
松本義宏
聞き手
松本創
こんなにフリージア置いてどうするんですかって言うから、いや、本人好きだったから、いっぱいあげてやってよって
聞き手
丸山里美
何十年も私は私だけなんかなあ、不思議やなあ、途中で誰かと替わったりせえへんのかな、そういう感覚ですよね。明日起きても、また私は私なんやって
聞き手
三浦さつき
せやけど幸せな人やで、あの人は
聞き手
三木香久子
彼氏のこととか、怒り狂ってたので。「この社会、くそくらえや」と思いながらずっと勉強してて
聞き手
三品拓人
そういう意味では全然、気持ちが萎えるとか、そういうことはなかったですね。もう、俺の進む道はこの、政治の、こっちの道っていう
語り手
福丸孝之
聞き手
水野敦子
信頼されてるとか、頼られてるとか、そっちのことのほうが大きいねんな
聞き手
南口芙美
校庭が傷むからいうて「下駄を履いてくるな」と体育の教師が言うわけ。でも靴のない子どうすんねん。私ら何人かで校長室行ったことあるわ
聞き手
宮垣リエ
自分でね考えてね、つくんのが好きで、これもこれも。こういうのが好きでね。やっぱり根っから好きやんなこういうの、生地つくんのんが
聞き手
宮﨑綾子
えらい遅なってすんませんとか言うて返事くんのやけど、おばあちゃんはそんなんあれへんからハガキで、返事、「今度いつ帰ってくんのですか?」って
聞き手
向江夢
X JAPANのグッズが棺の中に入ってて。「好きやったんや!」って。すごい明るい娘さんで、悲しい気持ちで行ったけど、めっちゃ笑って帰ってきたみたいな感じやった
聞き手
村上香世子
大阪の生活史 - 大阪の風景写真 写真=岸政彦
でもまあたしかに、そりゃ「ゴキブリ好きになれ!」って言われても無理じゃないですか
聞き手
村上慧
淀川を渡ると、帰ってきたという感じでホッとするということもあるし。東京の人は、淀川を渡ると商売の本場 に行くと思うから緊張するとよく言っていたね
聞き手
村上航
もし誰かと知り合ったら、それは大事にしいや、たまたま知り合ってるんじゃないで、言うて。どっかでなんか、つながりあって知り合ってんねんで、言うて
語り手
高見孔二
聞き手
守田歩美
意外とな大人しい子やってんで。想像できへんやろ。いやほんま大人しい子やってん
聞き手
八代加奈
そそそ、ヤクザは警察と一緒やから
語り手
ムハンマド・アリ
聞き手
安元雄太
同僚の人で人権とかうるさい人もさ、その在日とか部落差別にうるさい人もゲイとか嫌いやったもん
聞き手
山下佑太
えーなんでーってげらげら笑ってるときに死んじゃったんだよ、笑いとともに逝っちゃった
聞き手
湯本瞳
その代わりね、キーパンチャーやからね、あの、マニキュアしてね。手動かすのにね。マニキュアしてたわ。わりと早うから
聞き手
横井昌美
そんなになるの。あんたが三〇くらいで、私が五〇くらいやと思ってたわ、もう九二やのになあ、ははは。えっ九六?
語り手
吉田あさの
聞き手
吉田幸子
なんか家族でも我関せずで、個人個人マイペースで生きて、生きてた感じやなあ
聞き手
吉田信二
おもろいよ。私、辞めたいと思ったことは一度もないもん
聞き手
吉田由記子
私も一緒にツートントントンてするやん、授業やからな。そしたら隣のやつがさ、卒業して解放軍行ったやつかな。「おーお前日本と交信してるんか」とかそんなん言われてたけどな
聞き手
吉永かおり
大阪の生活史 - 大阪の風景写真 写真=岸政彦
入院してるときから点滴ぶら下げたままがらがらいうて飲みにきて。看護婦さん迎えに来て。次の日もっかい来るからな
聞き手
米田ゆきほ
もうな、顔隠してても名前とかそういうのでわかんねん、エスパーはいんねん
聞き手
涼花
教誨に行ってた刑務所の、教育部長と刑務所長と二人、「得度したい。お坊さんになりたい」って言って、うちに来はったんですよ
語り手
長谷川眞理
聞き手
若林唯人
それは要するに、アッラーが「お前は今回会うべき人に会ったんだ」と言ってくれると
語り手
山根聡
聞き手
渡邉響
いやいや、ちょっと待って、私生きてるし。死んでないし。生き霊って怖いやん
聞き手
渡邉雅子
あとがき――世界でいちばん、普通の街 岸政彦

一般から公募した「聞き手」によって集められた
「大阪出身のひと」「大阪在住のひと」
「大阪にやってきたひと」などの膨大な生活史を、
ただ並べるだけの本です。

解説も、説明もありません。
ただそこには、
人びとの人生の語りがあるだけの本になります。

編者近影

編者

岸政彦(きし・まさひこ)

一九六七年生まれ。社会学者・作家。京都大学大学院文学研究科教授。主な著作に『同化と他者化──戦後沖縄の本土就職者たち』(ナカニシヤ出版、二〇一三年)、『街の人生』(勁草書房、二〇一四年)、『断片的なものの社会学』(朝日出版社、二〇一五年、紀伊國屋じんぶん大賞2016)、『質的社会調査の方法──他者の合理性の理解社会学』(石岡丈昇・丸山里美と共著、有斐閣、二〇一六年)、『ビニール傘』(新潮社、二〇一七年)、『マンゴーと手榴弾──生活史の理論』(勁草書房、二〇一八年)、『図書室』(新潮社、二〇一九年)、『地元を生きる──沖縄的共同性の社会学』(打越正行・上原健太郎・上間陽子と共著、ナカニシヤ出版、二〇二〇年)、『大阪』(柴崎友香と共著、河出書房新社、二〇二一年)、『リリアン』(新潮社、二〇二一年、第38回織田作之助賞)、『東京の生活史』(編著、筑摩書房、二〇二一年、紀伊國屋じんぶん大賞2022、第76回毎日出版文化賞)、『生活史論集』(編著、ナカニシヤ出版、二〇二二年)、『沖縄の生活史』(石原昌家と監修、沖縄タイムス社編、みすず書房、二〇二三年)、『にがにが日記』(新潮社、二〇二三年)など。

大阪の生活史
岸政彦

大阪の生活史

150人が語り、150人が聞いた大阪の人生

大阪に生きる人びとの膨大な語りを1冊に収録した、かつてないスケールで編まれたインタビュー集。
第76回毎日出版文化賞・紀伊國屋じんぶん大賞2022 W受賞『東京の生活史』の姉妹版

発売日: 2023/12/1 A5上製 / 1280頁 2段組み / 定価: 4,950円(10%税込) / ISBN: 978-4-480-81690-0
ブックデザイン: 鈴木成一デザイン室

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