イラスト:小山義人
この作家の集中力と咀嚼力には、その若さからは想像もつかないほどの馬力がある。素直に脱帽! ――逢坂剛

あらすじ

1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4ヵ国統治下におかれたベルリン。
ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、
ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。
米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、彼の甥に訃報を伝えるべく旅立つ。
しかしなぜか陽気な泥棒を道連れにする羽目になり――
ふたりはそれぞれの思惑を胸に、荒廃した街を歩きはじめる。

登場人物

アウグステ・ニッケル
アメリカ軍の兵員食堂で働く少女。
ファイビッシュ・カフカ
泥棒。元俳優
ユーリイ・ヴァシーリエヴィチ・ドブリギン
NKVD(内務人民委員部)大尉
アナトーリー・ダニーロヴィチ・ベスパールイ
NKVD下級軍曹
クリストフ・ローレンツ
音楽家。毒入りの歯磨き粉で不審な死を遂げる
フレデリカ・ローレンツ
クリストフの妻。戦中は潜伏者を匿う活動をしていた
エーリヒ・フォルスト
フレデリカの甥
グレーテ・ノイベルト
フレデリカの使用人
ヴィルマ
動物園の元飼育員
ヴァルター
浮浪児。機械いじりが得意
ハンス
浮浪児。ヒトラー・ユーゲントの制服を着ている
ダニエラ・ヴィッキ
映画の音響技師。通称「ダニー」
デートレフ・ニッケル
アウグステの父。共産主義者
マリア・ニッケル
アウグステの母
イーダ
ポーランド人労働者の女児
ブーツ
ニッケル家が暮らす集合住宅の管理人
イツァーク・ベッテルハイム
ニッケル家の隣人のユダヤ人
エーディト・ベッテルハイム
エーファの妻
エーファ・ベッテルハイム
イツァークの娘
ギゼラ・ズーダー
ニッケル家の向かいに住むダウン症の少女
レオ・ズーダー
ギゼラの弟
ラウル
デートレフの政治活動の仲間
リーゼル
デートレフの政治活動の仲間
ヒルデブラント
教師
ブリギッテ・ヘルプスト
アウグステの同級生
ホルン
元英語教師

単行本刊行当時、各界各氏から寄せられた激賞の声

真相が明かされるラストが圧巻。人物造形も描写も相変わらず素晴らしく、さらに途中にヒロインの過去が挿入されるが、この構成もよく、一気読みの傑作だ。 ――北上次郎(文芸評論家)「日刊ゲンダイ」より
エンターテインメントとして読みごたえがある上に、善と悪、正義と不義、真実と虚偽のグレーゾーンを描くことで、今・此処(ニッポン)の危機をもあぶり出す。大勢の人に読んでほしい意欲作だ。 ――豊﨑由美(書評家)
ミステリとしての面白さだけでなく、この場所で実際に生きた人々、この時代にあった街の光景を、決して忘れないためにここにはっきりと刻んでおくのだという著者の気概に胸が熱くなった。 ――瀧井朝世(ライター)
普通の幸せがどんなに簡単に奪われるか、取り戻すのがいかに難しいか。それを描いた小説である。物語のどの情景も克明に浮かび上がる。決して他人事ではない悲劇が目の前にある。 ――杉江松恋(書評家)
メインの戦後のストーリーと、そこへ向かう幕間のストーリーが最終章で繋がったとき、身体が痺れた。最後の一文を読み終えても、しばらく本を閉じることができなかった。 ――南沢奈央(女優)「Book Bang『南沢奈央の読書日記』」より

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    monokakiに著者インタビューが掲載されました。詳細はコチラ

書店員さんの反響

ミステリアスにしてスリリング!何とドラマティックなのだろう。理不尽な社会の不穏な空気もそのままに、鮮やかに映し出される人間の"本性"……怒りも哀しみも虚しさも儚さも……戦争という狂気がもたらした感情を閉じ込め、愛と憎しみ、生と死、美と醜の交錯から、ものの見事に光と影の世界を作り出す。その筆致は極めて上質な翻訳小説のようであり、風格さえも感じられる"古典名作"の域。まさに時代に刻まれるべき一冊だ!
三省堂書店 有楽町店内田剛さん
読み終えた後、思わず自らを恥じた。深い暗闇に張り付く強欲と切なさに跪く彼女達に対して、どれだけ寄り添う事ができたのだろうか。
時代が違う、いや、年月を経た今だからこそ、この物語が残酷までに心に響く。そこから我々は著者から大切な何かを得たはずだ。今年下半期の中でも傑出した作品だと思います。
大盛堂書店 駅前店山本亮さん

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さすがは深緑先生!!期待を裏切らないです!!非常に面白かったです。まさかあの最後があるとは!!
どうか、どうか、混沌が続いているその時代に、そして、その後も瓦礫のうえに生きていかねばならないアウグステに、あの、青空の広がるすばらしさのように、生きる希望を与えてほしいと思いました!
書泉ブックタワー江連聡美さん
第二次世界大戦中のベルリンの空気が肌に伝わる精彩な描写に、ぐんぐん引き込まれました。小説でありながらルポルタージュさながらのリアリティに、痛ましい出来事が起こるたび目を背けたくなるほどでした。戦時の不安、混乱、そして人間の愚かしさが胸に残りました。
三省堂書店 海老名店大谷友美さん
戦火の名残が人々の心に深い翳を落とすベルリンを舞台に少女の旅を描いた本書は、落ち着いた文章で紡がれ、決して誇張することはしないが、常に痛みに満ちている。世間の在り方を単純な善と悪で区切ることなく、残酷な真実からも目を背けることなく、物語は進んでいく。とても誠実な物語だ。そしてこの誠実さはやがて読者の信頼へとなっていく。この信頼があるからこそ、本書のミステリとしての側面がどれだけ衝撃的で残酷、そして見たくないものであっても、読者は受け入れられるのかもしれない、と思いました。本書は重く苦しく、決して読み心地が良いとは言えない。完璧に理解できたとは言わない。しかしこの小説でしか味わえない感覚がある。そういうものこそ名作と呼ぶのだろう、と言いたくなるような力強さがあります。古処誠二『いくさの底』とともにミステリ史上に残るべき、現代の戦争小説という印象を抱きました。
明文堂書店 金沢野々市店瀬戸亮太さん
「深緑野分が面白い」というのはいろんな方からきいていたのですが、未読でした。本作が初めて。何で今まで読んでなかったんだ……めちゃくちゃ面白いやないかー!という後悔半分と、いや、遅ればせながらこの作家の作品を読むことができて本当に良かった……という喜び半分。一見で分類するとミステリなのだろうが、この作品の中でのふれ幅がものすごくて、世界の広がり方が無限だ。もっと読みたい!!
大垣書店 イオンモールKYOTO店辻香月さん
恩人の不審な死という始まりこそミステリ小説ですが、その後、主人公の道中で描かれる荒廃した街の描写や、戦争で傷を負った人々との出会い、主人公自身の暗い過去……と、スケールの大きな歴史小説へと変貌し、読み応えのある小説を読んだという満足感に包まれました。文章もディティール細かく、当時のドイツの空気がリアルタイムで伝わるようでした!
書店員森口俊則さん
少しずつ明らかになる秘密と、少女の生い立ち。
ドキドキしてページをめくる手が止まりませんでした。
ラストの展開には驚きました。
明屋書店 新田原店加来智美さん
もしも自分がこの主人公だったら……もしくは、もしかしたら、自分がこの主人公だったかもしれない……そう思うと胸がしめつけられて涙がとまりませんでした。
ゲオ 福江店立花沙八加さん
敗戦という大きな時代のうねりの中で起きた一人のドイツ人の不審死。一人の少女に課せられた使命とは……
ページをめくったその瞬間、砂塵と鉄の臭い、ベルリンの瓦礫の真っ只中にいた。
一人強く生きている少女に強く感情移入していく。
生きなければならない。生きて伝えなければならない。
彼女の覚悟を知ったとき、心が揺さぶられました。
だけど前を向いて、ひたすらに生きて!!
平和書店 TSUTAYAアルプラザ城陽店奥田真弓さん
一気読みした。
タイトルの問いへの答えは、きっと作品を読んだ人1人1人で違う。
私にとっての空は、土砂降りの雨だった。
傷だらけの人しか出て来ないのに、誰1人絶望していない。
戦争の怖さばかりが描かれているのに、目が離せない。
人は、なんて貪欲で無力で、情が深く、したたかなのだろう。
自分の人生を人に話すのは、信頼を示すこと。
嘘をつかずに人と向き合うのは、信用を表すこと。
生き残った彼らが、それを選択できることに、感服した。
17歳の少女が主人公だと、最初は忘れていた。
私の知っている17歳よりも、はるかに年老いていた。
戦争が奪ったものは、命だけではない。
回想の中の彼女は年相応で、とても切なかった。
ジュンク堂書店 立川高島屋店福岡沙織さん
分割統治下に置かれたベルリン。
戦争で身内を亡くし瓦礫の中を生きていく少女アウグステ。
壊れた街。焼けた建物。それらに慣れ切ってしまった人々が生きている。そう生きているのだ。
何を読んでも良い、どんな言語でも。
そんな時はずっと続くのだろうか。
読後タイトルが体に染み渡る、「ベルリンは晴れているか」。
今も紛争が続く国や他人事ではない世界情勢を思いながら空を見上げました。
明林堂書店 大分本店多田由美子さん
第二次世界大戦のドイツを驚くほど緻密に描写している。戦前・戦時中・戦後の生きづらさ、悲惨さがストレートに伝わってきた。これは大作だ!
紀伊國屋書店 仙台店齊藤一弥さん
さすが、深緑さん。どうして、外国の戦時や戦後のことが、こんなにすらすら書けるのでしょう。すごすぎます!!
有隣堂 伊勢崎町本店佐伯敦子さん
この本を紹介する時、簡単に“面白い”と表現してしまっていいのかな、と感じました。争い、憎み、蔑んでいたドイツ人、アメリカ人、ロシア人、ユダヤ人がひとところに集まったベルリン。戦争が終わり、戦争中はまかりとおっていたことが“あたりまえ”ではないことに徐々に気がついていく人々。皆がそうだから正しい、どうせ変わらないから何もしない、という空気はそこかしこにあって、流されてしまうこともあるけれど、ダメなことや間違っていることに少数派でも声をあげなければ取り返しのつかないことも必ずある。その時に自分は行動することができるだろうか。あえて“面白い”“楽しい”本ではないと紹介したい。ただ、読んだ後に得られるものは必ずある、と続けたい。少しでも無責任・無関心が減り、多様性を受け入れ、戦争は何なのか考えることができるように。
東北大学生協 文系書籍店小早川美希さん
これから何が起こるのかわからないドキドキに翻弄されました。タイトルを今一度見直すと胸が苦しくなってきます。
うつのみや 上林店河口志帆さん
この物語を本当に日本人が書いたの?!
海外ミステリ好きには嬉しい驚きでした。この本は日本だけではなく、舞台のドイツはもちろん世界中のミステリファンが楽しめる濃厚な歴史ミステリの面白さがあります。現在(終戦後)と過去(戦時中)のドイツの街やそこで生きる人々の描写のリアリティはドイツの歴史書の1ページを読んでいるようで、またミステリとしても、現在と過去が近づくにつれ露わになっていく真実に「えっ?! どういうこと?!」と驚きの連続で、真犯人を知った時、最初は信じられないぐらいの衝撃を受けました。世界でも通じるミステリ作家さんですね。全作品読みたくなりました。
三省堂書店 東京駅一番街店後藤里沙子さん
重くて辛くて、でも、とてもすがすがしい気持ちになれる小説でした。ナチス政権下のドイツがどんなふうに戦争へと進んでいったのか、そしてその戦争が、軍事行動は終わったとしても個人の中では決してすぐには終わらないのだという現実を見せつけられました。アウグステの瞳がまるで老人のよう、と表現されていて、胸を打たれました。そこに生きる人々の息遣いを知ることができたように思います。とても濃厚で、すばらしい読書体験でした。読めてよかったです。
宮脇書店 松本店月元健伍さん
『戦場のコックたち』もそうだったのですが、この『ベルリンは晴れているか』も海外文学をそのまま日本語で読んでいるような心地がしました。
ブックポート203 栗林店齊藤愛美さん
忘れられない過去がある。目を逸らすことの出来ない現実がある。
少女が真実を知った時、戦争は終結を迎え、世界は瓦解する。
広大な大地の下、灰に塗れた物語が、感動と驚愕の嵐を巻き起こす!
文教堂書店 青戸店青柳将人さん
日頃読まないタイプのテーマでしたが、読み始めたら止まらず、イッキ読みしました。
戦後のドイツが舞台ということで、重くつらい描写が多い中、若者たちの強くたくましく生きていこうとする姿に救われました。
アウグステの空が晴れていますように。
宮脇書店 ゆめモール下関店吉井めぐみさん
第二次世界大戦末期のベルリンで、何が行われ、人々がどんな暮らしをしていたのか。それは教科書の中で、あるいはいろんな本や映画の中で知ることはできる。
その悲惨な、凄惨な日々を、二度と繰り返してはいけないとその度に思うのだけど。でも、それはいつも他人事で。
同じようなことが日本でも起こっていたわけだし、そのさして遠くない時代に自分も生きてきたわけなのだけど、それでも自分とは別の次元の、どこか接点のない「物語」のように感じてしまう、というか、感じようとしているのだろう、きっと。
戦争という狂気の中で、人は生きていくために鬼にも悪魔にもなる。魂も売るだろうし隣人も簡単に売る。そんな中でどうしても売れないもの、曲げられないものとはなんだろうか。
一人のドイツ人の少女が自分の命さえもかけて伝えたかったこと。
なにもかもが簡単に折り曲げ、捨てられ、失える地獄の中でどうしても守りたかったこと。
「あなたにはそれがありますか」と真っ直ぐな目で問い詰められているようで。一気読みなんてできない。するべきではない。
一人の人間として、しっかりと読みたい一冊でした。
精文館書店 中島新町店久田かおりさん
『戦場のコックたち』でその完成度の高さに驚いて以来、再びの衝撃がありました。戦後のドイツという特殊な舞台設定でありながら、時代考証をしっかりとしつつミステリが成立している!
うさぎや株式会社田崎達也さん

読者の反響

調べあげた史実の舞台の上に載せられた物語は、誤解を恐れずにいえば、ファンタジーやディストピアの香りさえする独特の読み心地。漫画のようなコマ割の情景がはっきりと浮かぶ。こういう設定も漫画の独壇場だと思っていた。小説の枠を広げる新世代的な世界。面白かった!
島田ねねさん(53歳女性・自営業)
『戦場のコックたち』から早三年。深緑野分かが満を持して放つ新作は、1945年のべルリンが舞台。敗戦直後のどさくさに紛れ発生した毒殺事件を主軸に、ナチス非道の時代を少女アウグステの視点で描く。彼女に心の拠り所として一冊の本を履行させ、希望のモチーフに据えている。彼女と苦楽を分かつ作者の熱誠が、事件の真相を深々とぺんで抉る。ベルリンの空の下で太陽を見上げる気持ち、とても言葉では言い表せないだろう──。“ベルリンは晴れているか”アウグステの声がこだまになって届く。
あじさんさん(30代女性)
のめり込むようにして読みました。『戦場のコックたち』もとても面白く読みましたが、本書は それ以上だと思います。アメリカ、イギリス、フランス、ソ連によって分割統治されていた終戦直後のドイツ・ベルリンを舞台にしたミステリ小説でが、それ以上に戦後の混乱の中で東西の大国の思惑に翻弄されながらも懸命に生きていこうとするドイツ人の姿を描いた小説としての印象が強いです。『幕間』として、戦時下のヒトラー独裁によってもたらされた悲劇が描かれています。アウグステは、両親を奪われ、それでも生きていかなければならない。戦争が国民にもたらすものは、結果がどうであれ、悲劇でしかないのだと感じます。読み終わって、余韻に浸りながらあらためて表紙とタイトルをながめてみました。「べルリンは晴れているか」。そこには、とても大きな意味があると思いました。そして、今わたしたちの住む世界は晴れているのだろうか、と考えています。
佐野隆広さん(40代男性・会社員)

特別公開

『ベルリンは晴れているか』創作ノート

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深緑野分<span>(ふかみどり・のわき)</span>

深緑野分(ふかみどり・のわき)

1983年神奈川県生まれ。2010年、「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。13年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。15年刊行の長編『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、16年本屋大賞ノミネート、第18回大藪春彦賞候補。18年刊行の『ベルリンは晴れているか』で第9回Twitter文学賞国内編第1位、19年本屋大賞ノミネート、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補。19年刊行の『この本を盗む者は』で、21年本屋大賞ノミネート、「キノベス!2021」第3位となった。その他の著書に『分かれ道ノストラダムス』『カミサマはそういない』がある。

深緑野分

ベルリンは晴れているか

歴史の闇の中で光を求めて
終戦直後のベルリンで
恩人の不審死を知ったアウグステは
彼の甥に訃報を届けに陽気な泥棒と旅立つ。
歴史ミステリの傑作が遂に文庫化!
【解説】酒寄進一

ISBN:978-4-480-43798-3/990円(10%税込)

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ベルリンは晴れているか 深緑野分 著