第31回三島賞受賞作

無限の玄

遂に文庫化!文庫版解説:仲俣暁生

超弩級の新星が放つ奇跡のカップリング小説集!

無限の玄/風下の朱

第159回芥川賞候補作

風下の朱

第40回 野間文芸新人賞候補

第31回三島由紀夫賞  受賞作「無限の玄」

受賞の言葉
 「無限」を書き表そうとするうちに、こちらまでその中に取り込まれたような感覚に陥り、執筆中、恐ろしかったのをよく覚えています。終わりが来るのを拒むような、死ぬまでこれだけを書き続けることを求めてくるような、「無限の玄」は私にとってそんな作品でした。雑誌が出ても終わった気がせず、実をいうと、今もまだその感じが続いています。このたびの受賞が餞になり、遠くへ旅立ってくれることを願っています。
── 古谷田奈月
選評
 私はこの若い作家に、前作の『リリース』の時から期待し、注目していた。『リリース』の中に次のような一文があったのを記憶している。「薪をくべる者の炎への期待」。薪をくべる者も炎に期待する者ももちろん作者だが、読者にはその炎で暖を取る喜びがある。(中略)
 ありえない物語を語るための敷居は低く設定されていて、秀逸な細部とエピソードが重なり、連なるうちに我々はいともたやすくちょっと歪んだ宙間(ちゅうげん)に遊ぶことができる。功績は、主人公〈僕〉の無垢と詩魂にある。(中略)
 小説を支える思想は柔軟で、かつ揺るぎがない。作者はこのような文体をどこで手に入れたのだろう。
── 辻原 登 第31回三島由紀夫賞選考委員
 受賞作の『無限の玄』は、その文体の閃きと余韻に達者なものを感じた。各々の登場人物にも個性があり、父親が何度も生き返るという幻想的な設定も、彼らの反応を通じて一層、効果的となった。野心的ではあるが、あまりに未整理だった前候補作『リリース』と比すれば、長足の進歩であり、設定を絞り込むことで、通念的な家族制度への懐疑という著者の主題は、各段に洗練された。
── 平野啓一郎 第31回三島由紀夫賞選考委員
第159回芥川龍之介賞

News

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  • 「サンデー毎日」9/9号に著者インタビューが掲載されました
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  • 「InRed」9月号に書評が掲載されました
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  • 毎日新聞夕刊「文芸時評」に書評が掲載されました
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古谷田奈月(こやた・なつき)

古谷田奈月(こやた・なつき)

1981年、千葉県我孫子市生まれ。2013年、「今年の贈り物」で第25回ファンタジーノベル大賞を受賞、『星の民のクリスマス』と改題して刊行。2017年、『リリース』で第30回三島由紀夫賞候補、第34回織田作之助賞受賞。2018年、「無限の玄」で第31回三島由紀夫賞受賞。「風下の朱」で第159回芥川龍之介賞候補となる。その他の作品に『ジュンのための6つの小曲』、『望むのは』など。
軍艦島 池島 長崎世界遺産の旅

待望の文庫化!

古谷田奈月

無限の玄/風下の朱

死んでは蘇る父に戸惑う男たち、魂の健康を賭けて野球する女たち──。
清新にして獰猛な赤と黒の物語はいまスパークする!
超弩級の新星が放つ奇跡のカップリング小説集!

ちくま文庫/208頁/ISBN:978-4-480-43844-7/定価:本体748円(10%税込)