筑摩書房創業80周年記念出版

ちくま学芸文庫 新アンソロジー、刊行開始 近代日本思想選

刊行にあたって

これまで、筑摩書房では「現代日本思想大系」(1963—68年)、「戦後日本思想大系」(1968—74年)、「近代日本思想大系」(1974—90年)、「日本の思想」(1968—72年)といった日本思想を扱った全集シリーズを、多数刊行してきました。

このたび、筑摩書房創立80周年を記念し、こうした伝統を継承しつつも、よりコンパクトなかたちで手に取ることのできる、近代日本思想のアンソロジー・シリーズを、ちくま学芸文庫から刊行していきます。

  • 本シリーズは次の点を特長としております。
  • ① テーマ別ではなく人物別とし、ある思想家について、
      その重要論考、ないしは今日的意義の深い論考を精選。
  • ② 巻末には、編者による論考解題や解説、年譜などを掲載。

この一冊を読めば、その思想家の全体像に触れられるようなシリーズをめざしてまいります。

宇野重規

福沢諭吉

近代日本を代表する思想家であり、その体現者でもあった福沢諭吉。本書では、彼の思想の広がりとその今日的意義を明らかにすべく、『学問のすすめ』『文明論之概略』については最重要箇所のみの抄録とし、それ以外の多種多様な著作群から幅広く論考を精選。『通俗民権論』『国会論』などの政治論から「尚商立国論」のような商業論、「瘠我慢の説」「明治十年 丁丑公論」といった時事評論、さらには天皇論や婦人論までをバランスよく配置した。政治思想史・政治哲学を専門としてきた編者ならではの観点から編みあげられた清新な福沢像。文庫初収録論考多数。

ISBN:978-4-480-51046-4 定価:本体1760円(10%税込)

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福沢諭吉(ふくざわ・ゆきち)

1834-1901年。明治時代の啓蒙思想家、教育家。大坂の中津藩中屋敷に生まれる。大坂で緒方洪庵に学び、江戸に蘭学塾(のちの慶應義塾)を開く。三度、欧米を視察し、外国奉行翻訳方をつとめる。維新後は、官職につかず、教育と啓蒙活動に専念し、「時事新報」などを創刊。人間の独立自尊、実学の重要性を説いた。著書に『西洋事情』『学問のすすめ』『文明論之概略』『民情一新』『福翁自伝』など。

宇野重規(うの・しげき)

1967年、東京都生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。東京大学社会科学研究所教授。博士(法学)。専攻は政治思想史、政治哲学。著書に『政治哲学へ』『民主主義のつくり方』『民主主義とは何か』など。

森 一郎

三木 清

活動的に哲学するとはいかなることか――。戦前日本を代表する知性として思想界を牽引した三木清。非業の死によりその哲学は未完に終わったが、それゆえに今日なお可能性を示唆してやまない。ハイデッガーからの決定的影響、マルクス主義の哲学的掘り下げ、そこから前景に浮かび上がる歴史という問題、そして同時代の政治への関与。三木の思考には時代との格闘の跡が生々しく刻印されている。本書は、主著『歴史哲学』などを中心に、1920年代の前期から30年代以降の後期まで、三木哲学の新たな読解に資するテクストを精選して構成。未来の思考を切り拓く力をいまここに伝える。

ISBN:978-4-480-51038-9  定価:本体1870円(10%税込)

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三木 清(みき・きよし)

1897-1945年。兵庫県生まれ。京都帝国大学哲学科卒業。哲学者、法政大学教授。1922-25年、ドイツ、フランスに留学。ハイデッガーにじかに学び、その影響下に思索を深め、マルクス主義の人間学的解釈を敢行。後には西田幾多郎の哲学と連動し、歴史哲学へと向かう。著書に『パスカルに於ける人間の研究』『歴史哲学』『人生論ノート』など。

森 一郎(もり・いちろう)

1962年生まれ。東京大学文学部卒業。同大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東北大学大学院情報科学研究科教授。博士(文学)。著書に『死と誕生』『ハイデガーと哲学の可能性』『ポリスへの愛』など。

田中久文

九鬼周造

〈媚態〉〈意気地〉〈諦め〉という三つの契機から、日本的美意識「いき」の構造を解明した九鬼周造。ハイデッガーやベルクソンらに師事し、豊かな方法的視座を身につけたこの哲学者にとって、人と人とのめぐり逢いの謎は、自身の実存ともあいまって生涯を覆うものであった。「偶然性」の哲学の誕生だ。のちにそれは、日本文化論における「自然」の思想においてひとつの帰結をみる。没後、時代ごとに異なる光が当てられてきた九鬼の哲学。本書は、自伝的エッセイからヨーロッパでの講演、人生観、晩年の詩論まで、その全体像と独創性を一冊で提示する。

ISBN:978-4-480-09982-2  定価:本体1870円(10%税込)

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九鬼周造(くき・しゅうぞう)

1888-1941年。東京生まれ。東京帝国大学文科大学哲学科卒業。哲学者、京都帝国大学教授。1921年-29年、ヨーロッパに留学し、リッケルト、ハイデッガー、ベルグソンらに学ぶ。時間論、偶然論、日本文化論、文芸論と思索の対象は多岐にわたる。他者との「出会い」を基礎づける哲学を追求した。著書に『「いき」の構造』『偶然性の問題』『人間と実存』など。

田中久文(たなか・きゅうぶん)

1952年生まれ。東京大学文学部倫理学科卒業。同大学院博士課程修了。日本女子大学人間社会学部教授。文学博士。著者に『九鬼周造』『日本の哲学をよむ』『日本美を哲学する』など。

小林敏明

西田幾多郎

東洋思想の絶対無を根底に据え、それを理論化して西洋哲学と融け合う独自の哲学を打ち立てたとされる西田幾多郎。「純粋経験」「場所」「非連続の連続」「永遠の今の自己限定」「行為的直観」「絶対矛盾的自己同一」──。それら中心概念はいかにして生まれ、いかなる変転を遂げていったのか。その理論的変遷と射程を追跡することができるように、本書には、『善の研究』をはじめ、西田哲学のエッセンスとなる最重要論考が収められる。西田におけるナショナリズムを照射する『日本文化の問題』と、生命哲学への道を開く未完の論考「生命」は文庫初収録。

ISBN:978-4-480-09981-5  定価:本体1760円(10%税込)

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西田幾多郎(にしだ・きたろう)

1870-1945年。加賀(石川県)生まれ。東京帝国大学文科大学哲学選科卒。号は寸心。哲学者、京都帝国大学名誉教授。主観・客観が分離する以前の原初的な純粋経験という立場を唱え、それを出発点にして独自の存在論や論理学を打ち立てる。後期にはその論議を歴史社会論にまで発展させた。著書に『善の研究』『思索と体験』『働くものから見るものへ』『無の自覚的限定』など。

小林敏明(こばやし・としあき)

1948年、岐阜県生まれ。ライプツィヒ大学教授。哲学博士(ベルリン自由大学)。著書に『西田幾多郎の憂鬱』『西田哲学を開く』『夏目漱石と西田幾多郎』など。

今後の刊行予定(不定期刊)

大杉栄
梅森直之(早稲田大学教授)編