目と耳と足を鍛える技術  ─初心者からプロまで役立つノンフィクション入門

佐野 眞一

「知の体力」で闘え!

脳みそに汗かいて考えろ! 世の中を一つ余さず凝視し、問題意識を身につける技術とは? 日本の戦後史、平成史を縦横無尽に俯瞰しながらその極意を伝授する。

目と耳と足を鍛える技術  ─初心者からプロまで役立つノンフィクション入門
  • シリーズ:ちくまプリマー新書
  • 836円(税込)
  • Cコード:0295
  • 整理番号:95
  • 刊行日: 2008/11/05
    ※発売日は地域・書店によって
    前後する場合があります
  • 判型:新書判
  • ページ数:176
  • ISBN:978-4-480-68796-8
  • JANコード:9784480687968
佐野 眞一
佐野 眞一

サノ シンイチ

1947年、東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務を経てノンフィクション作家に。時代をえぐりとるようなルポや、綿密な資料調査と粘り強い取材によって日本近現代史の巨大なテーマに正面から迫る作品を書き続けている。『旅する巨人』で大宅壮一ノンフィクション賞、『甘粕正彦 乱心の曠野』で講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は『東電OL殺人事件』『阿片王――満州の夜と霧』 『あんぽん 孫正義伝』『劇薬時評――テレビで読み解くニッポンの了見』『別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判』他多数。

この本の内容

脳みそに汗かいて考えろ!世の中の動きと人びとの生態を一つ余さず凝視し、問題意識を身につける技術とは?必読書“百冊”を厳選した最強のブックガイド付き。

この本の目次

1 「目」のつけどころ
2 「足」に刻みつける
3 「耳」をとぎすます
4 人物を見、社会を聞き、時代を歩く
5 発想をかえる
6 インプットからアウトプットへ
7 ライフワークの旅
8 私の修行時代
9 歩く、見る、聞く者の戒めと覚悟

読者の感想

2008.12.08 夏の雨

 最近、私の感度が鈍ったのか、出版界の潮流が変わったのか、ノンフクションは元気がない。
 最近の大宅賞の受賞作名をみても、どうもぴんとこないのである。


 かつて、児玉隆也、柳田邦男、立花隆、沢木耕太郎、上前淳一郎、伊佐千尋、近藤紘一、山際淳一、そして佐野眞一…綺羅星のような書き手がいて、あれほどきらめくような作品がそろっていたノンフィクションなのに、である。
 ただ残念なのは、こうして名前を並べてみて、今は彼岸の人が何人もいることだ。
 それほどまでにノンフィクションの書き手は過酷な業を余儀なくされているようで、痛ましい。
 本書の中で佐野が書いているような「脳みそに汗をかき」、目と耳と足をフル活動させなければ良質な作品が書けないとすれば、それもまた痛ましい作業であるといえる。

 本書は実作者佐野眞一によるノンフィクションを書く技術論であるが、それは同時にノンフィクションとは何かということの考察でもある。
 佐野は冒頭こう書いている。「すべて事実をもって語らしめる文芸というのが、私のノンフィクションの解釈である」(3頁)。
 ここで佐野が「文芸」という単語を使っているのが興味深い。
 例えば、本書で佐野は自身の作品『巨怪伝』の書き出しの場面に言及しているが、正力松太郎の評伝である作品で長嶋茂雄のあの「天覧試合」を描いた、そのことが「文芸」たる所以だと思う。
 そこに嘘はない。嘘はないが、それをどう書くか、どこで描くかで、作品の深みが違うものになる。
 ノンフィクションに嘘は描けない。
 そして、事実と事実をつなげるものは書き手の想像力でなければならない。
 ノンフィクションで許されるのはそのことだけだろう。
 佐野がいう「ノンフィクションとは、固有名詞と動詞の文芸である」(126頁)は、極めて単純化されているが、この文芸の本質をよくついている。

 しかし、ある意味、佐野が書く、そういうノンフィクションの書き方はすでに方法論として成熟している。
 では何故、現在ノンフィクションに元気がないのか。
 それは書き手のこだわりの希薄に起因していないだろうか。
 塊のようなこだわりを持った書き手が少なくなっているような気がする。初期の柳田邦男は航空事故に発して人間の意識の有り様にこだわった。沢木耕太郎は「敗れざる者たち」に代表される未完の思いを何度も描いた。そして、佐野眞一は戦後という時代を自分に問うように書き続けた。
 ノンフィクションが輝いていた時代は書き手たちがこだわりをもっていた時代であった。
 そういう数多くの書き手が競うことでより良質な作品群を生み出し続けたのではないか。私はそう考えている。

 本書を読んで新しい書き手が誕生することを期待する。
 そして、それはノンフィクションだけでなく、フィクションも含めた、大きな「文芸」の世界の復興につながるはずである。

blog「ほん☆たす」

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