熊本博之
( くまもと・ひろゆき )熊本 博之(くまもと・ひろゆき):1975年、宮崎県生まれ。明星大学人文学部人間社会学科教授。著作に『辺野古入門』(ちくま新書)、『交差する辺野古 問いなおされる自治』(勁草書房、第47回藤田賞)、共著に『東京の生活史』(筑摩書房)、『米軍基地文化』(新曜社)などがある。
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沖縄では、米軍基地に対する態度と、自身のナショナル・アイデンティティの位置づけが結びつくような状況がある。2022年9月、両者の複雑な関係を明らかにするために行われた世論調査は、沖縄県民3800人を対象とし、1000人以上から回答を得た大規模なものになった。本書は、その結果から見えてきたものを示す。
序章 沖縄におけるアイデンティティと米軍基地問題 熊本博之・田辺俊介
1 復帰50年をむかえた沖縄のアイデンティティ
2 本書で用いる世論調査データの概要
3 本書の構成
4 本書における用語法について
第1章 アイデンティティ――沖縄における多様性と複層性 田辺俊介
1 沖縄における「アイデンティティ」
1-1 沖縄における「アイデンティティ」とは何か?
1-2 沖縄の歴史とアイデンティティ
1-3 測定される「アイデンティティ」
2 自分は「何人」か?
2-1 自身の定義としてのアイデンティティ
2-2 誰が、どのアイデンティティを抱いているのか
何によって「沖縄人」「日本人」を定義しているのか
4 アイデンティティの多様性とその影響力
第2章 階層――沖縄における格差と政治 田辺俊介
1 沖縄における社会階層
1-1 沖縄における階層構造の現在
1-2 沖縄の階層構造とその歴史性
2 社会階層と政治意識の関連
3 沖縄における階層と政治意識の関連性
3-1 沖縄における階層分布とそのアイデンティティとの関連
3-2 社会階層と政治意識
4 沖縄における社会階層と政治意識
第3章 若者――基地意識の世代差の背景にあるもの 米田幸弘
1 世代差を問う視点
2 基地意識からみる若者の傾向
2-1 「オール沖縄」との距離感
2-2 「理不尽さの感覚の弱さ」と「消極的な容認」
3 補論 加齢効果なのか世代効果なのか
4 基地意識の世代差はどこから来るのか
4-1 世代差の要因をめぐる4つの仮説
4-2 仮説の検証
5 異なる言論空間、異なる世代経験
第4章 政治――県知事選の投票行動と反基地運動に対する評価 松谷満
1 「民意」を理解するための3つの問い
2 なぜ知事選で革新(オール沖縄)候補が勝てるのか
3 なぜ若い世代では革新(オール沖縄)候補が勝てないのか
4 なぜ反基地運動への共感は広がらないのか
5 明らかになった「民意」
第5章 辺野古移設――賛成する人たちの葛藤 熊本博之
1 断絶と分断
2 普天間基地の辺野古移設についての意識状況
2-1 辺野古移設への賛否
2-2辺野古移設をめぐる意見の現状
3 辺野古への移設に葛藤を抱える人たち
4 普天間基地移設問題が沖縄社会にもたらしたもの
終章 復帰50年の沖縄世論 熊本博之
1 プレスリリースへの反応
2 基地負担そのものへの評価と投票行動
3 基地反対運動への評価
4 ナショナル・アイデンティティと階層
5 溝を埋め立てるために
補章 沖縄県における/関する世論調査――「沖縄とは何か」を探る軌跡 高橋順子
1 沖縄県における調査、沖縄県に関する調査
2 復帰前の世論調査――世論形成/復帰の方法/格差是正
2-1 政府、自治体等による調査
2-2 新聞社、放送局等のマスメディアによる調査
2-3 大学、学術団体、シンクタンク等による調査
3 復帰後の世論調査││復帰評価/米軍基地/文化的資源/自立
3-1 政府、自治体等による調査
3-2 新聞社、放送局等のマスメディアによる調査
3-3 大学、学術団体、シンクタンク等による調査
4 沖縄県における世論調査の特徴
5 沖縄県における世論調査一覧
あとがき
参考文献