内田樹
( うちだ・たつる )1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。神戸女学院大学文学部教授を経て同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。多田塾甲南合気会を主宰する武道家。『私家版・ユダヤ文化論』で小林秀雄賞、『日本辺境論』で新書大賞2010受賞。第3回伊丹十三賞受賞。著書に『先生はえらい』『武道的思考』、共著に『大人は愉しい』他多数。
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頭でわかるより、身体にきけ
道徳、競争、正直さから師弟関係まで……
「正しさ」に縛られすぎず、雑に、
しなやかに生き延びるための教育論
「100%正しい社会」はしんどい。
道徳、社会化、競争、正直と親切と勇気……四つの講義を経てたどり着くのは、異物ごと世界を引き受け、正しさや純粋さを手放す「雑に生きる」という知恵。
本書「第四講」より…………他者を包摂できるというのは、自分と考え方が違う、生き方が違う人間がいても「平気」だということです。他者の異性に耐えられるということです。そして、それは「人間の出来が雑」でなければできないことなんです。(略)
雑な人間だけが雑な世界に耐えられる。
僕たちが眼の前にしているのが純粋で透明で一意的な世界ではない以上、「雑に生きる」というのは成熟のためにも、自分の生きる知恵と力を護り抜くためにも、結構たいせつなことではないかと思います。…………………
第一講 「道徳」について
世の中には信じてはいけない大人がいる/道義性について/福澤諭吉の『瘠我慢の説』/自分の身の丈にあった道義性/虚無的な大学生たち/変なことを書く大切さ/一般論を教える必要はない/少数派であることに耐える力/礼儀正しさについて/紳士の礼節/感情資源を豊かにするために/先生が見本になる/「先生の真似をする子供」を創るのが大事/師弟関係はダイナミックな場/師は弟子を傷つけてはならない/正直が一番大事で難しい/親切とは耳を澄ましていること
第二講 社会化された子供を自由にする
教育は全とっかえできない/教育を受ける意味を訊かれたら/橋本治の無垢さ/呼び声に耳を澄ませる/「小さくまとまった子供」たち/小さくまとまることの何がいけないか/子供の同質化の理由は過剰な格付け/才能よりも意欲が大事/「足し算」で考える学校教育/子供を「イエスマン」にしないために/学校は本質的には非社会的なもの/「よい耳」が天職を見つける/教える者も教わる者も互いを救っている
第三講 競争と修行
身体は独自の仕方で考えている/学習と身体/競争は身体に悪い/教育に「修行」的要素を/「声がよい」ということ/場を主宰する
第四講 正直と親切と勇気
正直と正義/カミュの『反抗的人間』/「違和感センサー」をオフにしない/「政治的正しさ」を否定するトランプ大統領/正義を押し付けてはいけない/加速主義が進む社会で/加速主義のどこがいけないか/場に対する敬意/「公共」があること/反対者と共に統治する/雑に生きる