増補 中世日本の内と外
ボーダーレスな
東アジアの歴史
国家間の争いなんておかまいなし。中世の東アジア人は海を自由に行き交い生計を立てていた。私たちの「内と外」の認識を歴史からたどる。
【解説: 榎本渉 】
「国境」という概念が定着する以前から、東アジア世界にもたしかに領土・領有意識はあった。しかしそれはあくまで権力者の都合によるもので、一般の民衆には大きな意味をなさなかった。日本と新羅の国交が断絶した9世紀、朝鮮半島南西部を拠点にした海上貿易のドン・張宝高は、日本に唐物の商品を運び、貴族からも大いに喜ばれた。また中国の仏教聖地を訪れるために遣唐使船に同乗した天台僧の円仁は、新羅人の船に乗って帰ってくる。日朝間の海域では「倭人」が活発な交易を行っていた。境界を軽々とまたぎ、生活していた東アジアの人びとに焦点をあて、境界観の歴史をたどる。
第1章 自尊と憧憬―中世貴族の対外意識
第2章 陶磁器と銭貨と平氏政権―国境を往来する人ともの
第3章 鎌倉幕府と武人政権―日本と高麗
第4章 アジアの元寇―一国史的視点と世界史的視点
第5章 「日本国王」の成立―足利義満論
第6章 中世の倭人たち―国王使から海賊大将まで
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