ベルリンは晴れているか
1945年7月、4カ国統治下のベルリン。恩人の不審死を知ったアウグステは彼の甥に訃報を届けるため陽気な泥棒と旅立つ。期待の新鋭、待望の書き下ろし長篇。
総統の自死、戦勝国による侵略、敗戦。何もかもが傷ついた街で少女と泥棒は何を見るのか。1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、彼の甥に訃報を伝えるべく旅出つ。しかしなぜか陽気な泥棒を道連れにする羽目になり―ふたりはそれぞれの思惑を胸に、荒廃した街を歩きはじめる。最注目作家が放つ圧倒的スケールの歴史ミステリ。
2018.12.09 匿名希望
ミステリというエンターテンメント性の求められる形式で、戦争・民族主義・全体主義・差別などの傷痕という重い内容を見事に書き切った傑作でした。普遍的なテーマを、膨大な下調べに基づいて具体的なフィクションエピソードに落とし込んで描いており素晴らしかったです。今年は、差別や不寛容の表面化する出来事が著しく目立ち、抑鬱的な症状に見舞われるほど気分が落ち込む年でしたが、著者が問題意識を持って創作に向き合われ、このような傑作を生み出された事実だけでも救われます。
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