新・ちくま文学の森 9 たたかいの記憶 ─たたかいの記憶
烏の北斗七星 宮沢賢治/コシャマイン記 鶴田知也/南から来た男 ロアルド・ダール/張徳義 長谷川四郎/二人の友 モーパッサン 他
- シリーズ:シリーズ・全集
- 1,922円(税込)
- Cコード:0393
- 整理番号:
- 刊行日:
1995/05/17
※発売日は地域・書店によって
前後する場合があります - 判型:四六判
- ページ数:416
- ISBN:4-480-10129-2
- JANコード:9784480101297
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骨のうたう(竹内浩三)
鉛の旅(吉野せい)
張徳義(長谷川四郎)
二人の友(モーパッサン)
まっぷたつの子爵より(カルヴィーノ)
十二月のセワストーポリ(トルストイ)
烏の北斗七星(宮沢賢治)
雀(太宰治)
ランドルフ・ボーン(ドス・パソス)
戦争をやめさせる話(魯迅)
軍楽(中野重治)
象を撃つ(オーウェル)
渡辺直己歌集 抄(渡辺直己)
悋気の火の玉(桂文楽)
男色武士道(池波正太郎)
南から来た男(ロアルド・ダール)
チャンピオン(ラードナー)
コロンブレ(ブッツァーティ)
コシヤマイン記(鶴田知也)
不思議な出会い(W・オウエン)
2009.9.27 義翁
道がある。戦場に続いている。だから、その道を進めば進むほど、戦場へと近づく事になり、近づけば近づくほど、たたかいによって出来た無惨な傷が増えてくる。たたかいの姿があらわになって見えてくる。まず、人の肉の味を覚えた鳥たちの飛んでいるのを見、その先には、ペスト患者の肉を啄ばんだ当のその鳥たちの屍が道の傍らに見られるようになる。そして、ペスト患者、たくさんの家族たち、男たち女たちのおびただしい死体、馬の死骸、その馬に乗っていた兵士たちの死体・・・。収録作の、カルヴィーノ『まっぷたつの子爵』はこんな始まり方をする。昔、一度読んだ事のある話なのだけれど、こんな冒頭だったなんて、すっかり忘れてしまっていた。荒唐無稽な物語だけれど、その背景にはこんな悲惨な死者たちの山が築かれていたのですね。
・・・死者たちの山。これこそ、戦争の偽らない本当の顔なのだろうと思います。敵、味方、どちらの側にも死者たちの山また山・・・。
「魂を震撼させる、恐るべき光景を、諸君は見る。諸君は、戦争を、ラッパや太鼓の響き、ひるがえる軍旗、馬上豊かな将軍たちという、正しい、美しい、絢爛たる姿で見るのではなく、血、苦しみ、死という、その真の姿で見るのである・・・・・・」・・・『十二月のセワストーポリ』でトルストイがこう書いたように、たたかいとは、犠牲者が下敷きにされてしまうむごいものなのだ、という事を忘れてはならない・・・と肝に銘じました。
敵という存在をつくってしまうがために、人は人と戦わねばならなくなる・・・本書は『文学の森』のシリーズの中で、最も内容の重たい一冊だ、そんなふうに思いました。
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