ろう教育において長く禁じられていた「手話」を
社会に取り戻すろう者たちの運動を、
日本語教育と「やさしい日本語」から考える。
本書籍を通して、多くの方に、ろう者を取り巻く環境、
そして日本語とは別の言語である手話に関心を
持っていただくことで、社会にブレイクスルーを起こし、
多言語が共存する共生社会が実現することを
心から願っています。
ろう者の言語である手話はろう教育において130年間禁止された。
手話を社会に取り戻すろう者たちの運動を、日本語教育と「やさしい日本語」の視点から考える。
はじめに ── 「ろう者」と「外国人」の共通項
第一章ろう・聴覚障害の基礎知識
- 1
- 障害児教育の概要
- 2
- 聴覚障害の概要
第二章ろう教育における「手話禁止」の歴史
- 1
- ろう者が受けてきた差別
- 2
- 日本のろう教育の歴史
- 3
- 言語権と手話
- 4
- 日本での「手話禁止」以降の流れ
第三章「聴覚口話法」と「バイリンガルろう教育」
- 1
- 「聴覚口話法」の発展と、同時法的手話の誕生
- 2
- 「日本手話」と「バイリンガル・バイカルチュラルろう教育」の提唱
- 3
- 人工内耳技術で変わる議論
第四章「言語としての手話」に関する議論
- 1
- バイリンガルろう教育関係者と全日本ろうあ連盟の意見対立
- 2
- 「手話言語法」制定の動きへの議論
第五章「日本語教育」と「やさしい日本語」の視点から見直してみる
- 1
- 思考停止から再び動き出すための、新しい視点
- 2
- 「やさしい日本語」の運動から言えること
- 3
- やさしい日本語の視点から手話通訳問題を考える
第六章日本語教師・やさしい日本語推進者に求められること
- 1
- 私たちはどのように当事者の課題に取り組むべきか
- 2
- 私たちにできること
おわりに ── ろうと手話の未来のための提言
参考文献
『ろうと手話──やさしい日本語がひらく未来』(筑摩書房)刊行記念対談
自分で自分の言葉を選ぶ、言葉の多様性がある社会へ
「手話って、日本語を手で表現してるんですか?」「ろう者なら、みんな手話を使えるんですよね」
これはどちらも誤解です。手話は日本語とは別の言語であり、ろう教育においては長く手話が禁じられてきました。筑摩選書『ろうと手話──やさしい日本語がひらく未来』では、聴覚障害で生きづらさを感じている人たちの事情や歴史を伝え、手話にも対応する社会の実現を呼びかけています。
実際のところ、この社会で手話で生きることには、どのような困難があるのでしょうか。その困難を取り除くには、どうしたらいいのでしょうか。ろう者であり、社会におけるコミュニケーションの障害を取り除く活動に取り組んでいる伊藤芳浩さんと、本書の著者の吉開章さんに語り合っていただきました。