責任と判断
アレント生前に発表された講義や論説を「責任」と「判断」の下に編む。ナチス統治下で道徳が崩壊した経緯を問い、善悪の判断を促すものを考察する。
「歯車理論」や「小物理論」の虚偽を突き、第三帝国下の殺戮における個人の責任を問う「独裁体制のもとでの個人の責任」、アウシュヴィッツ後の倫理を検討し、その道徳論を詳らかにする講義録「道徳のいくつかの問題」など、ハンナ・アレント後期の未刊行論文集。ユダヤ人である自らの体験を通して全体主義を分析し、20世紀の道徳思想の伝統がいかに破壊されたかをたどる。一方、人間の責任の意味と判断の能力について考察し、考える能力の喪失により生まれる“凡庸な悪”を明らかにする。判断の基準が失われた現代こそ、アレントを読むときだ。
プロローグ(ソニング賞受賞スピーチ) 一九七五年
第1部 責任(独裁体制のもとでの個人の責任 一九六四年
道徳哲学のいくつかの問題 一九六五‐六六年
アレントの『基本的な道徳命題』の異稿
集団責任 一九六八年
思考と道徳の問題―W.H.オーデンに捧げる 一九七一年)
第2部 判断(リトルロックについて考える 一九五九年
『神の代理人』―沈黙による罪? 一九六四年
裁かれるアウシュヴィッツ 一九六六年
身からでたさび 一九七五年)
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