「見たこともないような美しく冷酷なものに、からめとられる」
――川上弘美(解説)

氷が全世界を覆いつくそうとしていた。私は少女の行方を必死に探し求める。恐ろしくも美しい終末のヴィジョンで読者を魅了した伝説的名作。

氷
  • シリーズ:ちくま文庫
  • 990円(税込)
  • Cコード:0197
  • 整理番号:か-67-1
  • 刊行日: 2015/03/10
    ※発売日は地域・書店によって
    前後する場合があります
  • 判型:文庫判
  • ページ数:288
  • ISBN:978-4-480-43250-6
  • JANコード:9784480432506
アンナ・カヴァン
アンナ・カヴァン

アンナ・カヴァン

イギリスの作家。1901年、フランスのカンヌ生まれ。ヘレン・ファーガソン名義で長篇数作を発表後、『アサイラム・ピース』(40)からアンナ・カヴァンと改名。不安定な精神状態を抱え、ヘロインを常用しながら、不穏な緊迫感に満ちた先鋭的作品を書き続ける。世界の終末を描いた傑作『氷』(67)で注目を集めたが、翌68年に死去。

山田 和子
山田 和子

ヤマダ カズコ

1951年生まれ。翻訳家・編集者。訳書にアンナ・カヴァン『氷』(ちくま文庫)、ポール・コリンズ『バンヴァードの阿房宮』(白水社)、P・K・ディック『時は乱れて』『シミュラクラ』(ハヤカワ文庫)、J・G・バラード『太陽の帝国』(創元SF文庫)などがある。

この本の内容

異常な寒波のなか、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気候変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って某国に潜入した私は、要塞のような“高い館”で絶対的な力を振るう長官と対峙するが…。迫り来る氷の壁、地上に蔓延する略奪と殺戮。恐ろしくも美しい終末のヴィジョンで、世界中に冷たい熱狂を引き起こした伝説的名作。

読者の感想

2020.6.25 魚座の男

光が乱反射したような美しい描写と現代社会を反映したような描写、戦争を予兆せせるような場面が、夢と幻覚の交錯したような文体で展開されていきます。唯一無二の小説です。

2015.4.15 芳さん

原作「Ice氷}は1967年に発表され、同年度ベストSF長編に挙げられていることを知った翻訳者山田和子さんが1985年、サンリオSF文庫で訳出、2008年、バジリコ株式会社から復刊、2015年、ちくま文庫から刊行されました。


翻訳者、山田和子さんのファンでしたが、何故か「氷」に辿り着くまで時間が掛かってしまいました。

翻訳者は、「カヴァンの英文はきわめて凝縮度が高い」と言っています。もったいぶった表現や、曖昧さがありません。原作者は精神内面の観察に鋭いのだろうと思います。
翻訳語の選択に細心の注意が払われていることが伺えます。そのお蔭で、強い力で、真直ぐにSFの世界に引き込まれます。
核兵器での武力侵攻があって、極地の大々的な気候変動で地球全体の温度が下がる。
作品発表から47年後の今、2015年への警告です。
寒さに震えていた少女と「私」が、「氷と死の超絶的な世界」から「逃亡できるかの様に身を寄せ合う」情景は美しいです。

新しい古典を手に入れて満足です。

この本への感想投稿

本書をお読みになったご意見・ご感想などをお寄せください。
投稿されたお客様の声は、弊社HP、また新聞・雑誌広告などに掲載させていただくことがございます。
は必須項目です。おそれいりますが、必ずご記入をお願いいたします。

(ここから質問、要望などをお送りいただいても、お返事することができません。あしからず、ご了承ください。お問い合わせは、こちらへ)







 歳

 公開可   公開不可