傷を愛せるか 増補新版
どれほど医療が進んでも、傷ついた心を癒す薬はない。悲痛に満ちた被害者の回復には何が必要か。臨床医による深く沁みとおるエッセイ。解説 天童荒太
たとえ癒しがたい哀しみを抱えていても、傷がそこにあることを認め、受け入れ、傷の周りをそっとなぞること。過去の傷から逃れられないとしても、好奇の目からは隠し、それでも恥じずに、傷とともにその後を生きつづけること―。バリ島の寺院で、ブエノスアイレスの郊外で、冬の金沢で。旅のなかで思索をめぐらせた、トラウマ研究の第一人者による深く沁みとおるエッセイ。
1 内なる海、内なる空(なにもできなくても
○(エン)=縁なるもの ほか)
2 クロスする感性―米国滞在記+α 二〇〇七‐二〇〇八(開くこと、閉じること
競争と幸せ ほか)
3 記憶の淵から(父と蛇
母が人質になったこと ほか)
4 傷のある風景(傷を愛せるか)
2022.9.19 み
大なり小なり誰もが傷を抱えて生きるいま、私たちは傷を愛せるか。透き通った瑕疵のない美しさが持て囃されるいま、ひきつれや瘢痕を抱え、包むのは簡単ではない。苦しさから掻きむしれば血は滲み、手当てをする暇もなく、好奇の目に晒されるのが怖くてコンシーラーとファンデで厚塗りをする。
傷を負った自分を恥じずに、傷と共に生きられるようになりたい。私が私の傷を一番に愛せるようでありたい。
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