日本語が亡びるとき  ─英語の世紀の中で

水村 美苗

豊かな近代文学を生み出した
日本語が、いま
「英語の世紀」の中で
「亡びる」とはどういうことか

豊かな国民文学を生み出してきた日本語が、「英語の世紀」の中で「亡びる」とはどういうことか? 日本語をめぐる認識の根底を深く揺り動かす書き下ろし問題作!

日本語が亡びるとき  ─英語の世紀の中で
  • シリーズ:単行本
  • 1,980円(税込)
  • Cコード:0095
  • 整理番号:
  • 刊行日: 2008/11/05
    ※発売日は地域・書店によって
    前後する場合があります
  • 判型:四六判
  • ページ数:336
  • ISBN:978-4-480-81496-8
  • JANコード:9784480814968
水村 美苗
水村 美苗

ミズムラ ミナエ

東京生まれ。12歳で渡米。イェール大学卒、仏文専攻。同大学院修了後、帰国。のち、プリンストン大学などで日本近代文学を教える。1990年『續明暗』を刊行し芸術選奨新人賞、95年に『私小説 from left to right』で野間文芸新人賞、2002年『本格小説』で読売文学賞、08年『日本語が亡びるとき――英語の世紀の中で』で小林秀雄賞、12年『母の遺産――新聞小説』で大佛次郎賞を受賞。その他の作品に『日本語で書くということ』『日本語で読むということ』、辻邦生氏との往復書簡『手紙、栞を添えて』がある。

著者からのメッセージ

恩着せがましい気持……[全文を読む]

この本の内容

「西洋の衝撃」を全身に浴び、豊かな近代文学を生み出した日本語が、いま「英語の世紀」の中で「亡びる」とはどういうことか?日本語と英語をめぐる認識を深く揺り動かし、はるかな時空の眺望のもとに鍛えなおそうとする書き下ろし問題作が出現した。

この本の目次

1章 アイオワの青い空の下で「自分たちの言葉」で書く人々
2章 パリでの話
3章 地球のあちこちで「外の言葉」で書いていた人々
4章 日本語という「国語」の誕生
5章 日本近代文学の奇跡
6章 インターネット時代の英語と「国語」
7章 英語教育と日本語教育

読者の感想

2009.5.11 しおかぜ

少し長いのでこちらをご覧ください。
http://homepage3.nifty.com/kij/mizumura.pdf

2009.3.02 渡辺日出男

書評を書く人にはきっと知識人が多いのだろう。

つまらないと思ったものの書評を書く気は起きない。感動したものや学ぶべきことが多いものには知った振りして書くこともあるが、知識人じゃないからそうなるのだろう。
実際、つまらないと書く人の動機は何なのだろうか。

「日本語が亡びるとき」(水村美苗著)

私が読んだのは第6版だから、随分多くの人が読んだことになる。書評の中に相当批判的なものもある。
書評を読んだ後なら買っただろうか?
・・・買わなかったかもしれない。疑問に思う。

事前に書評を読まなくて良かった、と思う本だ。

そして、今アマゾンの書評を読むと、読み方には随分差があるものだとつくづく思う。
私には、 “日本語が亡びるとき”でなく、“日本が亡びるとき”、あるいは“日本人が亡びるとき”が本当のタイトルで、作者が小説家であるばかりに“日本語”とせざるを得なかったのではないかと思えてならない。

独特の、強いリズム感のある語り口で、難しい内容を一気に読ませてしまう。すばらしい書き手だ。

書評のいくつかにもあるが、後半、それも相当後の論調が前半とがらりと変わるところに戸惑った読者がいる。私もそのひとりだ。が、そこがなければ、単に学ぶべきことが多い著作と思っただけかもしれない。
著者の言いたかったことが実はそこにあるのだと思った。子供の頃からなじめない英語圏で育ったことからの日本に対する危機感。私などの危機感などおよびもつかない心の底から搾り出すような感情が溢れ出ているように思った。胸が締め付けられた。

“日本が必要としているのは、専門家相手の英語の読み書きでこと足りる、学者でさえもない。日本が必要としているのは、世界に向かって、一人の日本人として、英語で意味のある発言ができる人材である。必ずしも日本の利益を代表する必要はなく、場合によっては日本の批判さえすべきだが、一人の日本人として、英語で意味のある発言ができる人材である。”(276ページ)

“白を黒と言いくるめられる言葉の力は恐ろしいもので、白を黒だとするたくさんの言葉が流通すれば、いつのまにかそれが嘘であろうと真実のように見えてくる。もし日本を誹謗する事実無根のブログが世界中で流通したら、どうすべきか。日本人が一丸となって稚拙な英語で反論しても意味がない。英語圏の人間にもなかなか書けないような優れた英語を書ける人材が存在し、根気よく真実を告げるようにするしかない。しかもそのような人材はある程度の規模でもって存在せねばならない。・・・・このような優れたバイリンガルが充分な数で存在するのは、この先日本にとって絶対必要なことである。”(277ページ)

私は、アメリカでも知的レベルでは今でもトップクラスにある企業に長く勤務した経験から日本の危うさを痛切に感じている。その根幹はやはり言葉の問題だ。昨年から考える力と英語力を改善するためのウェブ・サイト活動を続けている。
http://blogger.chalaza.net/new1042.html
勿論、著者である水村氏ととても比較できるような英語力をもっているわけではないがブログを英語で書くことも恥を忍んではじめた。

こんな恥さらしもこの本を批判する人には笑い者にしか見えないのだろうと思うが・・・

http://blog.chalaza.net/?eid=811495

2009.2.17 田村道和

今日、英語の普遍性(アジア人との会話等々)に感謝している人は多いでしょう。 しかしその普遍性のもつ、危険をこれほど明確に指摘した本は本邦初ではないでしょうか? 著者は華奢で寡作な女性小説家にすぎないのに、これまで誰も成し遂げた事のない啓蒙を本著作でおこないました。 その勇気と知性には知的日本人全てが敬意を表すべきだと思います。間違い無く、戦後の出版物なかで最重要図書ベストスリーの一つに挙げられるべき一冊でしょう。 日本語の持つかけがえのないユニークさ素晴らしさを大胆に肯定した見事さにも無条件に脱帽いたします。私自身は近代日本の散文詩文のみならず、例えば日露戦争時の「連合艦隊解散の辞」など当時のアメリカ大統領がその訳文を読んで感激し、自軍の全将兵に配布したような、優れた報告文章なども、どしどし学校で教えるべきだと愚考いたします。 とにかく著者の水村女史は後世に名を残す一冊を、本書により物にしたと言えるでしょう。

2008.12.02 マザこん

さあ読み終わるというときに、ここまで有無を言わせまいと気丈に突っ走ってきた著者が、急に弱音をちらっと見せたような感じがした。敗戦を知りつつ戦地へ赴く兵士のような、ある種一抹の悲壮感のような…。
そう、悲壮感。日経の文化面で、いかにも悲壮感漂う書名を眼にして、なにかふだんぼんやり感じているものがボクのなかでピクっと震えた。著者のことは名前も著作もなにも知らなかった。

最初のふたつの章はまるでトラック選手の長い助走、あるいは競技前の、なんとか精神を集中しているときのようだ。きっかけを探しているのか、ゲームプランを立てているのか。俄然第三章からギヤが変わる。ブーンとうなりを上げて加速する爽快さ。しかしすぐにしっかりつかまっていないとたいへんだと気づく。
謙遜しているのか予防線を張っているのか、とんでもない才女である。そのうえ、よその子も容赦しない恐いおばさんにちがいない。(最近はそういうおばさんが少なくなった。)面と向かうと、きっと説教を喰らっているようで逃げ出したくなるような人だろう。既に遅し。逃げ場がないほど窮々に追い詰められ、囲み込まれている。(本でよかった、しみじみそう思う。)
幾つもの対概念や上下層の概念を巧みに駆使して、英語という斜面を登り今度は日本語という反対斜面へ移り、やがて大きな氷河谷の全貌が見えてくる、そんな論理展開の圧倒的なスケール感。筆を持つ手を少しも緩めない緊張感はロープを握る手のようで登山を連想させる。
さてグリーンスパンが「世紀に一度」の可能性と言ったとかの現下の世界的不況で、アメリカの世紀も転換期を迎えたとも囁かれている。ついこのあいだまで唯一超大国の地位を謳歌していたアメリカも、何度も信頼が揺らぎつつ持ちこたえてきた世界通貨としてのドルも、いよいよ終わりの始まりか…と。だとしても「英語の世紀」のほうは揺らぐことはあるまい。現状はそう簡単に変わるまい。
そして相変わらず、野心に燃え優秀な人材はつぎつぎ日本を去り、あるいはインターネットで日本の枠を越え、日本にはチマチマとしたボクのような残り滓だけになっていく…。辞書片手にたどたどしく英文を追いながら、そんなふうにぐずぐず漫然と感じているところに、いきなり手を引っぱられて「ほら、みなさい」と鏡の前へ立たされたようなショック。ズシンと重く何も言えない。
今年ボクが読んだ本でたぶんいちばんの圧巻(そしていちばん身分不相応な一冊)と思う。

2008.11.30 まくたん

日本文学の今を憂う問題提起の書として、明快な論旨にひざを打ち、小説家の面目躍如たる見事な構成に引き込まれ、一気に読み進めました。何よりも、これまでの水村作品同様、読後、「もっともっと本を読みたい」と思わせる啓蒙書として、本を愛する多くの人々に読んでいただきたい作品です。

2008.11.23 池澤夏樹さん書評

世界の言語状況、明快に解き明かす

2008.11.13 狸亭

日本語への愛から出現した警世の書。著者の文学人生の全重量をかけた血を吐く思いを明快に、しかも情熱をこめて論じ書いた快著である。全章共鳴しつつ読了した。多くに人に読まれんことを!

2008.11.13  

新聞書評にあった通り!すばらしく透徹した書き下ろし作です。日本語が亡びたら日本が亡びます!

2008.11.13 まおさん

書想 日本語の現状について思っていたことを系統だてて書かれており、良書だと思います。彼女のような作家が居なくなれば日本文学は消滅するでしょう。

2008.11.07  

水村美苗氏 英語の覇権憂う書
本よみうり堂

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