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ちくま新書

ホモ・エコノミクス

——「利己的人間」の思想史

定価

1,034

(10%税込)
ISBN

978-4-480-07464-5

Cコード

0210

整理番号

1637

2022/03/08

判型

新書判

ページ数

320

解説

内容紹介

「ホモ・エコノミクス(経済人)」とは、利己的な動機にのみ導かれて自己の利益を最大化しようとする合理的な人間を意味する。これは、よく知られたように、近代経済学の基本的な人間観だ。自己利益のために生きるホモ・エコノミクスの社会では、富を追求し、金持ちを目指すことが基本的に肯定される。だが、いまでは当たり前に思われるこの価値観は、実はそれほど古いものではない。それどころか、近代以前においては、個人の経済的動機や利潤追求がそれ自体として道徳的に容認され、称賛された時代はなかった。個人の「金儲け」の実現を中心とする社会体制など、おそらくどこにも存在していなかったのである。では、まったくもって自明の存在とはいえない「自己利益の主体」は、どこから出てきたものか。この「自己利益の主体」がしぶとく生き延び、いまも私たちの価値観を大きく規定しつづけているのはなぜか。本書はそのからくりを、思想史的な手法で解き明かす。人間が追い求めてきた富と豊かさ、そしてそれを追求する自己利益の主体=ホモ・エコノミクスが、根本的に誤った価値観と結びついているのではないか、を根底から問いなおす一冊。

目次

第1部 富と徳(金儲けは近代以前にどう受け止められていたか
なぜ人は貧乏人を責めるのか
マンデヴィルとハチスン ほか)
第2部 ホモ・エコノミクスの経済学(ホモ・エコノミクスの語源学
イギリス歴史学派と方法論争
メンガーvsシュモラー ほか)
第3部 ホモ・エコノミクスの席捲(差別・犯罪・人的資本
「緑の革命」―前提としてのホモ・エコノミクス
ゲーム理論と社会的選択理論、そして行動主義革命 ほか)

著作者プロフィール

重田園江

( おもだ・そのえ )

1968年兵庫県西宮市生まれ。早稲田大学政治経済学部、日本開発銀行を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、明治大学政治経済学部教授。専門は、現代思想・政治思想史。フーコーの思想を、とりわけ「権力」や「統治」といった主題を中心に研究する。また、社会科学・人間科学への統計の応用史を掘り下げ、さらには「連帯」と「正義」をめぐる哲学的探究をつづける。著書に『ミシェル・フーコー――近代を裏から読む』(ちくま新書)、『連帯の哲学Ⅰ――フランス社会連帯主義』(勁草書房、第28回渋沢・クローデル賞)、『フーコーの穴――統計学と統治の現在』(木鐸社)などがある。

この本への感想

年収によって人間を格付けしたり、無駄を省いて効率的な仕事の進め方を工夫したりする、私たちの行動規範の系譜を読み解く好著です。

田村三郎

さん
update: 2022/04/11

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