大学生の論文執筆法

石原 千秋

大学での授業の受け方から、大学院レベルでの研究報告や社会に出てからの書き方まで含め、執筆法の秘伝を公開する。近年の学問的潮流も視野に入れた新しい入門書。

大学生の論文執筆法
  • シリーズ:ちくま新書
  • 902円(税込)
  • Cコード:0280
  • 整理番号:600
  • 刊行日: 2006/06/05
    ※発売日は地域・書店によって
    前後する場合があります
  • 判型:新書判
  • ページ数:256
  • ISBN:978-4-480-06310-6
  • JANコード:9784480063106
石原 千秋
石原 千秋

イシハラ チアキ

一九五五年東京都生まれ。成城大学大学院文学研究科博士課程後期中退。東横学園女子短期大学助教授、成城大学教授を経て、現在、早稲田大学教育・総合科学学術院教授。専攻は日本近代文学。夏目漱石から村上春樹までテクスト分析による斬新な読解を提供しつつ、国語教育への問題提起も果敢に行っている。著書に『漱石と三人の読者』(講談社現代新書)、『漱石はどう読まれてきたか』『秘伝中学入試国語読解法』(いずれも新潮選書)、『謎とき 村上春樹』(光文社新書)、『『こころ』大人になれなかった先生』(みすず書房)、『読者はどこにいるのか』(河出ブックス)、『小説入門のための高校入試国語』(NHKブックス)、『教養としての大学受験国語』『大学受験のための小説講義』『国語教科書の思想』『国語教科書の中の「日本」』『大学生の論文執筆法』(いずれもちくま新書)ほか。

この本の内容

大学生にとって、論文を書くとはどういうことか。誰のために書くのか。何のために書くのか。大学での授業の受け方や大学院レベルでの研究報告書の作法、社会に出てからの書き方まで、論文執筆の秘伝を公開する。かつて流行った決め言葉の歴史や、カルチュラル・スタディーズが隆盛となったここ最近の学問の流れをも視野に入れた、実用書でもあり、読み物でもある新しい論文入門。

この本の目次

第1部 秘伝 人生論的論文執筆法
第2部 線を引くこと―たった一つの方法(なぜ線を引くのか、あるいは線の仕事
自己と他者
国境と政治
「われわれ」と「彼ら」)

読者の感想

2009.6.25 ハローキティ

 本書は大学生・大学院生に向けて書かれた論文執筆法である。そのため、文章の基本作法は最低限度に留めて、その分学生の人生に向けて強いメッセージを与えてくれる。
 本書の内容は、原稿用紙の使い方として段落始めは1マス空ける、読点(、)は意味のまとまりで打ち多すぎず少なすぎずする。論文執筆について、論文と評論文は違う、注や引用の技術、盗用の問題を著者の立場から気分が悪いと論じ、評論家や小説家としてプロとして飯を食いたい人に難しさを教え、大学生は学校で勉強するのでなく家で勉強しなるべく多くの本を読もうとも語っている。それが、第一部人生論的論文執筆法だが、遊びに来る学生は大学をやめなさい、大学1回生でも優秀なレポートでしっかり調べて書いているなど、精神論は正論で反論できない。

 次に、第二部たった一つの線を引くことの内容についてだが、それは二項対立という思考を意識して書けるようにトレーニングのために読み方を教えている。テーマはジェンダーは女性の解放というが男性だって性役割という中でリストラされ自殺する人が多く女性だけに不利ではない(男女ともに利益と不利益な部分を持つ)、国境と政治などとしている。その二項対立が、外側と内側を比較することで生まれる。例えば、世界⇔私という式で表わされるのである。その外界と内側の私の精神との対立を求めるのが、論文の思考なのである。
 全体のまとめとして、第一部は学生の人生に強いメッセージを与えつつ論文教本として最低限度の技術を伝授し、第二部で論文を書く思考として二項対立を鍛えることを勧めている。
 本書の著者に対し、論文教本なのに本気の文体を使わないのが不満、文科系のそれも人文学の学生以外には有効ではないという意見もあるが、私はその意見に反対の意見を持つ。それは、大学生は小難しく難解な書き方だと全部読まないで技術がつかない、本書は人文学の論文マニュアルではなく論文の基礎技術(本当の人文学の論文を書くには、縦書き原稿用紙(またはワープロで縦書き)で20枚から50枚、テクストの読解や批評技術が必要なのである)というように、学生の悪文以前の意味不明論文を多読され、きっと今の学生には文章技術や読み手を意識させた方がいいと思われたのだろう。私は石原氏のいうような大学の学生の質の低下は起きていると実感できる。
 次に、論文教本や小論文の書き方に関する書籍を出される場合、まずテーマの決め方と絞り方、次に仮アウトラインの作成と文献調査、テキストの読解方法、アウトラインの作成と論文執筆、仮提出と本提出から論文発表会までをテーマにしてほしい。

2008.7.29 カエル

 石原千秋先生の本として購入しました。私は「漱石と三人の読者 講談社」により感動を受けました。レポートを書くにあたり、十分なアドバイスを受けました
 第一章の前半の精神論には反発を覚えました。しかし、中盤のタイトルや引用方法は役に立ちました。

 第二章の「線を引くこと」の二項対立の考え方は、やっぱり必要だと認識しました。例文もなかなか良い作品だと感じました。
 特に第一章が論文執筆の技術、第二章は考える技術だと感じました。つまり、私の評価は☆3です。
 今後良く似た本が出るときに、調べる方法・整理する方法・発想する方法・書く方法をテーマにしてほしいです。

この本への感想投稿

本書をお読みになったご意見・ご感想などをお寄せください。
投稿されたお客様の声は、弊社HP、また新聞・雑誌広告などに掲載させていただくことがございます。
は必須項目です。おそれいりますが、必ずご記入をお願いいたします。

(ここから質問、要望などをお送りいただいても、お返事することができません。あしからず、ご了承ください。お問い合わせは、こちらへ)







 歳

 公開可   公開不可