知覚の哲学 ─ラジオ講演1948年
意識から身体へ
時代の動きと同時に、哲学自体もまた大きく転身したことを述べ、それまでの存在論の転回を促す。メルロ自身が語る、メルロ哲学と現代哲学の核心。
『行動の構造』と『知覚の現象学』によって、フランス哲学界に確乎たる地位を占めたメルロ=ポンティは、自らの哲学を語るラジオ講演(1948年10‐11月)を行なった。時代が大きく動くなか、それまでの価値観は新しい世界観へと変貌する。メルロは、文学・美学・科学・心理学・哲学史などをも考察の対象とし、哲学の志向性は意識から身体へと大きく転身して「存在論的転回」を遂げたことを宣言する。本書はその記録であり、メルロ哲学の核心をメルロ自身が縦横に語った刺激的な書。訳書による丁寧な解説は、メルロ哲学後期の主著『見えるものと見えないもの』読解への道筋を与える。本邦初訳。
第1章 知覚的世界と科学の世界
第2章 知覚的世界の探索―空間
第3章 知覚的世界の探索―感知される事物
第4章 知覚的世界の探索―動物性
第5章 外部から見た人間
第6章 藝術と知覚的世界
第7章 古典世界と現代世界
2011.7.14 Kitamura
60年代に学生時代を過ごした世代にとって、メルロ=ポンティは現代思想の最先端を切り拓く哲学者として映っていた。身体性へ密着したその思想は広範囲に影響を及ぼし続けてきたが、その全体像はいまもって不鮮明なところがある。しかし、本書において彼は自らの哲学探究のもっとも中核をなすモチーフについて遺憾なく語っている。そのうえで読者は、現代思想が20年代、30年代にすでにほとんど完成していた事実に気づくことになるし、哲学、アート、文学などが(差別なく)大きな思想運動のうねりを形成していた20世紀前半の時代相に、嫉妬に似た気持ちを抱くことにもなる。現代哲学に関心のある向きに薦めたい一書である。
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