松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.10.25)

2008年10月26日

『生きる』と「真藤順丈『地図男』」


<総合ランキング> (三省堂書店全店調べ・10/13~10/19)
①水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
②伊坂幸太郎『モダンタイムス』(講談社)
③東野圭吾『流星の絆』(講談社)
④Jamais Jamais『O型自分の説明書』(文芸社)
⑤フィリップ・C.マグロー『史上最強の人生戦略マニュアル』(きこ書房)
⑥瀬尾幸子『もう一軒おつまみ横丁』(池田書店)
⑦竹中平蔵『竹中式マトリクス勉強法』(幻冬舎)
⑧姜尚中『悩む力』(集英社)
⑨副島隆彦『恐慌前夜』(祥伝社)
⑩太田あや『東大合格生のノートはかならず美しい』(文藝春秋)


<特集・真藤順丈『地図男』>
◎真藤順丈『地図男』(メディアファクトリー)



仕事中の“俺”は、ある日、大判の関東地域地図帖を小脇に抱えた奇妙な漂浪者に遭遇する。地図帖にはびっしりと、男の紡ぎだした土地ごとの物語が書き込まれていた。千葉県北部を旅する天才幼児の物語。東京二十三区の区章をめぐる蠢動と闘い、奥多摩で悲しい運命に翻弄される少年少女など――地図男が生み出す物語に没入した“俺”は、次第にそこに秘められた謎の真相に迫っていく。今回は、この「地図男」でダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞した真藤さんにインタビューしました。
真藤順丈 /1977年、東京都生まれ。プロの小説家になる前は映画監督の助手をしていた。2008年、『地図男』で、第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞。続いて、『庵堂三兄弟の聖職』で第15回日本ホラー小説大賞を受賞、さらに、『RANK』で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、3つの異なる作品で新人賞を連続受賞した。さらに「東京ヴァンパイア・ファイナンス」でも第15回電撃小説大賞銀賞を受賞。
谷原 松田さん、いかがですか。
松田 真藤さんの作品というのは文体がポップで軽快なんですね、リズム感があって。だから、結構バイオレンスなシーンがあったりグロテスクな描写もあるんですが、だけど、そういうものも爽やかに読ましてくれちゃうんですね。そこに、地図へのこだわりのようなマニアックなものをのせて物語を作っていくんで、これからどういう物語を語りだしてくれるのか、楽しみな新人ですね。


<今週の松田チョイス>
◎谷川俊太郎 with friends 『生きる わたしたちの思い』(角川SSC)



松田 詩人の谷川俊太郎さんがネットの仲間たちと一緒に作りました『生きる わたしたちの思い』です。
N 昨年、ネット上で、ちょっとした『生きる』ムーヴメントが起こりました。詩人谷川俊太郎さんの名作「生きる」(「生きているということ/いま生きているということ/それはのどがかわくということ/木漏れ日がまぶしいということ/ふっと或るメロディを思い出すということ/くしゃみすること/あなたと手をつなぐこと(以下略)」)、この詩のはじめの2行「生きているということ/いま生きているということ」、この後に続く言葉を一般の人々が考え、ネットのコミュニティーに次々に投稿したのでした。半年の間に投稿された詩はおよそ2000件。それらの膨大な投稿が再編集され、1冊の本になりました。あなたにとって「生きる」とは何ですか?>
松田 谷川さんは日本を代表する大詩人なんですが、誰にでもわかるやさしい言葉で、人間とか宇宙とかいった大きくて深いテーマを表現してきた人なんですね。この「生きる」という詩もそういう詩なんです。こういうシンプルな言葉で問いかけてくるので、そこに場所ができるんですね。その場所にみんなが集まってきて、それぞれの言葉で、自分の言葉で表現していく。それがズーッとつながっていって、連詩みたいなかたちで、これ全体が、いろんな人たちの言葉でできている詩集になっているんですね。ぼくが気に入っているのは「クレヨンの先が丸くなること」で、絵を描いていけば丸くなっていくじゃないですか、それと人間の成長みたいなものが、丸くなっていくことがよく出ていますね。それと、わりにドキッとしたのが「ふとした瞬間、わたしって死ぬんだなあって思うこと」で。サラッと言っている分だけ重いなあって思いましたね。そういう風に、普通の言葉でいろんなことを考えさせられる、すごく素敵な一冊でした。
谷原 慶太とか、「生きる、生きていること」という詩を考えると、どう思います。
慶太 ふだんはあまり意識しないんですけども、走って疲れたりなんかすると、「ああ、やっぱり生きてるなあ」っていうのがありますね。
谷原 若いなあ。元気だなあ。翔太は。
翔太 ぼくは、朝起きて、今日一日はじまるときとか、終わったときとか、その区切りに「生きてる」って思いますね。
谷原 日々、そのように思うの。
翔太 日々、思うわけではないんですが。
優香 大人ですねえ。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.10.18)

2008年10月18日

『おばさん未満』と「ハロルド作石『BECK』」


<コミックランキング> (三省堂書店全店調べ・10/6~10/13)
①富樫義博『HUNTER×HUNTER』26巻(集英社)
②久保帯人『BLEACH』35巻(集英社)
③吉田秋生『海街Diary』2巻(真昼の月)(小学館)
④高橋ヒロシ『WORST』21巻(秋田書店)
⑤樋野まつり『ヴァンパイア騎士』8巻(白泉社)
⑥今市子『百鬼夜行抄』17巻(朝日新聞社)
⑦藤崎竜『屍鬼』3巻(集英社)
⑧矢沢あい『NANA』20巻(集英社)
⑨原哲夫『蒼天の拳』19巻(新潮社)
⑩浅田弘幸『テガミバチ』5巻(集英社)
谷原 さて、松田さん。コミック・ランキング3位の『海街Diary』ですが、もう2巻が出たんですね。
松田 でましたね。それと、『海街Diary』に出てくる鎌倉のスポットを紹介するガイドブックも出たんですね。
谷原 もう出たんですか。2巻目で、早いですね。
松田 読んでいると、鎌倉に行ってみたくなるんで、たぶんそういうニーズが盛り上がってきたんでしょう。
谷原 たしかに、「極楽寺に住んでいる」といっても、極楽寺ってどこなんだって思いますよね。実は、もう2巻読んだんですけども、田舎から出てきて異母兄弟と暮らすすずちゃんが、どうなるのか楽しみにしていたんですが、とっても面白かったです。


<特集・ハロルド作石『BECK』>
◎ハロルド作石『BECK』1~34巻(講談社)



誰にでもいつか“目覚め”の刻が来る……。それは、いつまでも変わらないはずだった──。あいつに出会うまでは……。穏やかで退屈な中学生活、平凡な毎日に不安を持っていた、主人公の田中幸雄は謎の人物・南竜介との出会いによって音楽の世界に入り込むことになる。『BECK』は、1999年から2008年まで「月刊少年マガジン」(講談社)に連載された。2002年に第26回講談社漫画賞少年部門を受賞している。『ゴリラーマン』、『ストッパー毒島』で知られる作者が手がける音楽漫画。作者にとって初の少年向け漫画でもある。KCDXサイズで2008年6月現在で33巻まで発売され、累計発行部数は1200万部を突破している。2008年6月に連載が終了し、8月17日に最終巻34巻が発売された。連載を終えたハロルド作石さんにインタビューして、連載を終えた、今の気持ちや連載中のエピソードなどを伺ってきました。
松田 ハロルド作石さんて、『ストッパー毒島』もそうだったんですが、ライブ感がすごいんですね。スポーツの場面もそうだったんですが、ライブ会場の迫真力のある臨場感みたいなものが迫ってくるんです。(VTRを見ていて)こういう風に描いているんだって、なるほどと思いましたね。


<今週の松田チョイス>
◎酒井順子『おばさん未満』(集英社)



松田 歯切れのいいエッセイでおなじみ、酒井順子さんの『おばさん未満』です。
N 『負け犬の遠吠え』で一大ムーブメントを巻き起こした酒井順子さん。最新エッセイ『おばさん未満』で、自らも仲間入りを果たした40代女子の生態を鋭く分析。目出度くも“成長”と思っていたことが、“老化”だったというショッキングな気付きからはじまる内容は、笑うに笑えない老化の実態が満載。でも、読むほどに、歳を重ねるということがだんだん愛しくなっていく不思議な感覚を、ぜひ味わってください。アラサー及びアラフォー女子必読の1冊です。>
はしの 勇気を出して、私が読みました、『おばさん未満』。まあ、「わかるー」というところもあれば、まだちょっと経験してないなっていう部分もあったんですけど、一番私が「わかるー」って思ったのは、酒井さんが30代半ばの時に、お寿司屋さんに行って、好きなだけ食べたら胃もたれを起こしたと。でも、よく考えてみたら、私も、お寿司屋さんに行って、ちょっと贅沢ですけど、「大トロはいいや」と思ったり、焼き肉屋さんに行ってカルビを頼まなくなってるんですよ。
谷原 前は食べてた?
はしの 前はガンガン食べてたんですけど。どうですか。
谷原 ぼくはですね、正直、トロもウニもカルビもまったく受け付けません。光り物の脂すらだめ。いま、白身ばっかり。
優香 タン塩は?
谷原 タン塩はぎりぎりいいんだけど。
はしの 塩が救ってくれてますよね。
谷原 あと、それにネギがついてないときついんです。
松田 食べ物の話もあるんですけども。これ読んでて、オジサン目線で読むと面白かったんです。女性って、今、食のことがありましたが、ファッションやメイクもあるし、人間関係とか言葉遣いとか、細かく年齢によって、また、結婚しているのか、子供がいるか、働いているかとか、いろんなステージがわかれるんですね。で、その辺で、みなさん細かく気を遣っているんだなということがよくわかるし、まあ「女性は大変だな」と思うと同時に、こういう風に気を遣っているから、みなさん輝いていられるんでしょうね。
谷原 若々しく、美しく。
松田 男の方は、ダメだったらあきらめて「オジサンになっちまえ」みたいな……。
谷原 そうですね、そういうところありますね。女性を理解するために、男性諸君、買ってみてはいかがでしょうか。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.10.11)

2008年10月12日

『ボックス!』と「「MEN'S NON-NO」専属新人モデル密着」


<総合ランキング> (有隣堂書店全店調べ・9/28~10/4)
① Jamais Jamais『O型自分の説明書』(文芸社)
② よしたに『理系の人々』(中経出版)
③ 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
④ Jamais Jamais『A型自分の説明書』(文芸社)
⑤ 瀬尾幸子『もう一軒おつまみ横丁』(池田書店)
⑥ 姜尚中『悩む力』(集英社)
⑦ Jamais Jamais『B型自分の説明書』(文芸社)
⑧ 岩崎啓子『早わかり!カロリーナビ』(永岡書店)
⑨ 松本ぷりっつ『うちの3姉妹 8』(主婦の友社)
⑩ 副島隆彦『恐慌前夜』(祥伝社)
                                           
<特集・「MEN'S NON-NO」専属新人モデル密着>
1986年に女性ファッション誌「non-no」の男性版として創刊された男性ファッション誌「MEN'S NON-NO」。阿部寛、田辺誠一、大沢たかお、伊勢谷友介などを輩出し、我らが谷原さんも「MEN'S NON-NO」の出身。そんな「MEN'S NON-NO」の2008年専属モデル2人がオーディションによって決定! 10月10日発売の11月号でデビュー。今回、その新人モデル2人の11月号の掲載予定の写真撮影に密着してきました。前日の衣装合わせから、撮影当日の様子、初めてのヘアメイクにポージングなど何もかもが初めてで緊張気味の2人に密着。もちろんテレビの取材も初めてです。写真撮影を見学させて頂きつつ、インタビューもしてきました。


<今週の松田チョイス>
◎百田尚樹『ボックス!』(太田出版)



松田 素晴らしい感動を与えてくれる、まっすぐな青春スポーツ小説、百田尚樹さんの『ボックス!』です。
N アマチュア・ボクシングの世界を描いた感動の青春小説『ボックス!』。高校ボクシング部で天才と言われる鏑矢と元いじめられっ子の木樽。対照的な二人の友情に結ばれた青春を描く。立ちはだかるライバルたちとの激闘と挫折、そして栄光。さまざまな経験を経て二人が掴み取ったものとは。>
優香 はい。わたし、この『ボックス!』読ませていただきまして、ものすごく面白かったです。もう一気に、本当に一気に読んでしまいました。その日の夜、眠れなくなりました、興奮して。
谷原 一晩で読んだの。
優香 一晩で読みました、一気に。主人公の二人は対照的なんですが、その成長ぶりも、どんどん強くなっていく感じも、とっても面白いです。その周りにいる人たちも、みんな応援したくなる。みんな好きになるという登場人物ばっかりで。男の友情、素晴らしいですよね。
松田 はい。600ページ近くあるんだけど、本当に無駄なところがないんですよ。贅肉を削ぎ落とした、最強のアスリートみたいな小説で、グイグイひきこまれるんですけども。特にこれが面白いのは、ボクシングのことがすごくよくわかるんです。ルールとか練習方法とか、いろんなテクニックとか、だから、だんだん読んでいくと、自分がボクシングをやっているような、リングにのっているような気持ちになっていって。
優香 そう。
松田 この世界の中に入れちゃう。
優香 入っていっちゃいますね。ジャブのやり方とかもちゃんと細かく書いてあるんで、思わずやってしまいました、自分で、読みながら。
松田 本当に、一人一人の熱い思いが重なっていって、恋愛感情もあって、満足できるし、爽快な感動スポーツ小説ですので、是非お読みいただきたいですね。
優香 はい、面白かったです。
谷原 スポーツの秋にふさわしい1冊ということで、皆さんも是非ジャブして下さい。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.10.4)

2008年10月04日

『きのうの世界』と「箭内道彦『サラリーマン合気道』」


<総合ランキング> (三省堂書店全店調べ・9/22~9/28)
① Jamais Jamais『O型自分の説明書』(文芸社)
② 監修:岡田斗司夫『カロリー・書くだけhappyダイエット』(学習研究社)
③ 瀬尾幸子『もう一軒おつまみ横丁』(池田書店)
④ 姜尚中『悩む力』(集英社)
⑤ 茂木健一郎『脳を活かす仕事術』(PHP研究所)
⑥ Jamais Jamais『A型自分の説明書』(文芸社)
⑦ 副島隆彦『恐慌前夜』(祥伝社)
⑧ Jamais Jamais『B型自分の説明書』(文芸社)
⑨ 監修:板木利隆『からだにおいしい野菜の便利帳』(高橋書店)
⑩ 金本知憲『覚悟のすすめ』(角川書店)


<特集・箭内道彦『サラリーマン合気道』>
◎箭内道彦『サラリーマン合気道』(幻冬舎)



アイディアは書き留めない、積極的に緊張する、相手の力を利用すれば実力以上の仕事ができる。気鋭のクリエイティブディレクターが挫折と失敗から編み出した45の仕事術。自分には個性やこだわりがないという人にこそ役立つ、具体的なアドバイス。
箭内道彦 1964年生まれ。東京藝術大学美術学部デザイン科卒。博報堂を経て、2003年、「風とロック」設立。CFプランニング、グラフィックデザイン、プロモーション等の広告キャンペーンから、ミュージシャンのアートワーク、ショートフィルム、商品企画、空間演出、イベントまでジャンルを超えて幅広く話題のクリエイションを手掛ける。05年、フリーペーパー「月刊風とロック」創刊、08年4月からNHK「トップランナー」のMCを務める。


<今週の松田チョイス>
◎恩田陸『きのうの世界』(講談社)



松田 1作ごとに新しい世界を繰り広げて、僕たちを楽しませてくれている恩田陸さんの最新長編小説『きのうの世界』です。
N 恩田陸の最新長編小説『きのうの世界』。舞台は、塔と水路がある「M町」。その「水無月橋」で見つかった死体。一年前に失踪したはずの男は、なぜここで死亡したのか? そして、その町に隠された大きな「謎」とは? 「世の中には、掘り返さないほうがいい場所、手を触れないほうがいい場所というのがあるのかもしれない」。「これは私の集大成」と作者が語るエンタテインメント大作。>
谷原 実は、ぼくも読ませていただいて、まだ途中なんですが、ぼくは、どちらかというと恩田さんの短編集を読むことが多かったんですけども、今回のは一つのお話になっているんですね。さすがだなあ、と思うのは、恩田さんの独特な世界観というんですか、一見、普通なんですけども、何か現実の世界とは、同じようなコピーが、ずれたものが入れ替わっているといいますかね。それが、読み進んでいくうちに、不思議な世界に巻き込まれていく感じがして……。
松田 そうですね。本当に、キラキラと色鮮やかな覗きからくりを見ているような感じで、リアルなんだけど、ちょっとずれている、不思議な感じがあって。で、だんだん読んでいくと、この「M町」という町には大きな「謎」が隠されているらしい、それから、もう一つ殺人の「謎」があって、その「謎」と「謎」が絡まり合っていくんですね。それを、どんどんどんどん解きほぐしていくと、壮大なクライマックスが待っているんです。なんだか、ものすごくスケールの大きなジグソーパズルをやっているような感じで、最後、ピタッとはまった時に何が起こるか、というのが楽しみなんですね。
谷原 ぼくは、まだ途中なんで、それが楽しみですね。本当に文章力のある方ですよね。
松田 そうですね。一人一人の登場人物、一つ一つの風景がものすごく鮮やかに描かれているんで、小さい部分だけでも、ショートストーリーとして独立して楽しめるという感じですね。
谷原 形式としてはオムニバスとして進めていますよね、バラバラに。
松田 そうですね。
谷原 気になった方は、是非、チェックしてみてください。

「本のコーナー」をネットしているのは、TBS・HBC(北海道)・TUY(山形)・TUF (福島)・SBC(長野)・UTY(山梨)・TUT(富山)
MRO(石川)・SBS(静岡)・ RCC(広島)・RSK(岡山)・ITV(愛媛)・NBC(長崎)・RBC(沖縄)・BS-iです。

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