松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本コーナー(2009.8.22)

2009年08月25日

『身の上話』と「JUNON」


<総合ランキング> (ジュンク堂書店池袋本店調べ・8/10~8/16)
① 磯﨑憲一郎『終の住処』(新潮社)
② 上橋菜穂子『獣の奏者Ⅲ探求編』(講談社)
③ 上橋菜穂子『獣の奏者Ⅳ完結編』(講談社)
④ 村上春樹『1Q84 BOOK1(4月-6月)』(新潮社)
⑤ 村上春樹『1Q84 BOOK2(7月-9月)』(新潮社)
⑥ 石田衣良『ドラゴン・ティアーズ――龍涙』(文藝春秋)
⑦ 平子理沙『Little Secret』(講談社)
⑧ 香山リカ『しがみつかない生き方』(幻冬舎)
⑨ 加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)
⑩ 福岡伸一『世界は分けてもわからない』(講談社)
谷原 さあ、松田さん、何か気になる作品はありましたか。
松田 2位と3位に入った『獣の奏者』ですね。Ⅰ・Ⅱ巻もすごい迫力のあるファンタジーでしたけども、ますますスケールアップしています。クライマックスシーンでは涙が流れて止まらなくなる、本当に感動的な素晴らしい作品ですね。世界のファンタジー史上に残る大傑作じゃないかなと思います。
谷原 気になるよね、優香ちゃん。
優香 わたし、Ⅰ・Ⅱ見てるんで、見たいですね。
谷原 見たいですね、Ⅲ・Ⅳ巻。


<特集・「JUNON」>
◎「JUNON」10月号(主婦と生活社)



8月22日発売予定の「JUNON」10月号の撮影風景に密着しました。今回は、昨年のJUNONボーイコンテストファイナリストの11名による海での撮影です。テーマは「JUNON夏恋☆告白!」。グループデート風に遊んでいたり、男同士で遊んでいる様子が思春期の女の子にとってはまぶしく映る、というイメージだったりです。グランプリを受賞した市川知宏くんを始め、JUNONボーイに撮影への意気込みや感想を聞いたり、編集者・カメラマンに撮影のコツやどうしたらいい表情が引きだせるのかなどをインタビューしました。


<今週の松田チョイス>
◎佐藤正午『身の上話』(光文社)



松田 色んな意味で、とんでもない小説、佐藤正午さんの『身の上話』です。
N 地方の書店に勤務する平凡な女性ミチル。ある日、お使いを頼まれた彼女は、そのまま東京行きの飛行機に飛び乗った。大好きな妻子ある人を見送るだけのつもりだったのに。突然始まった東京での生活。ミチルは流されるまま、ある事件に巻き込まれていく。佐藤正午が放つ、とんでもない身の上話、人生の不可思議を突きつめる。>
谷原 さあ、「松田の一言」お願いします。
松田 「胸のドキドキが止まらない!」(松田の一言) これは心理的ホラーともいうべき作品ですが、怖いんです、本当に。伏線の張り方が非常に見事で、その伏線がズーッと繋がっていくと、思いがけない幸運がやってきたり、とんでもない不運に見舞われたりするんです、主人公が。本当に、ジェットコースターに乗っているようなハラハラドキドキ感があって、そして終盤になって、「語り手」というのが姿を現してきて、その時に、とんでもない真実が明らかになるんですね。小説という作り話の面白さをとことん楽しませてもらえる小説でしたね。
谷原 これ、基本的に独白で進んでいくので、湊かなえさんの『告白』に近い感じがしたんですね。違うのは、湊さんのは本人の独白なんだけど、これはミチルの旦那さんが「ミチルは過去こうこうこうで」と、身の上話を第三者がしているところから始まっている。読んでいって思ったのは、人生って選択があるじゃないですか、二者択一の。もし、こっちを選んでいたら、どうなっていたんだろうなって、過去の自分のことを考えてしまうんですよ。で、最終的に読み終わって考えたのは、もうぼくは間違った方を選んでるのかなあ、選んでなければ良いなって。いろんな選択を二者択一でしてくるんですが、本当に大事な選択ってそうそうなくて、片っぽを選んだら、その蟻地獄や蜘蛛の巣からは逃れられなくなっている。ぼくは、その巣にいるのかどうなのか。
はしの 谷原さんの感想が、最終的にそっちなのって思いますよね。
優香 自分のことを考えてしまう。面白そうですね。
松田 怖いです。
谷原 何より一番怖いのは人間です。

「王様のブランチ」本コーナー(2009.8.15)

2009年08月17日

『学問』と「こうの史代『この世界の片隅に』」


<総合ランキング> (啓文堂書店全店調べ・8/3~8/9)
① 『Cher 09-10 AUTUMN/WINTER COLLECTION』(宝島社)
② 『MARC BY MARC JACOBS 2009 FALL/WINTER COLLECTION』(宝島社)
③ 磯﨑憲一郎『終の住処』(新潮社)
④ 畠中恵『ころころろ』(新潮社)
⑤ 村上春樹『1Q84 BOOK1(4月-6月)』(新潮社)
⑥ 村上春樹『1Q84 BOOK2(7月-9月)』(新潮社)
⑦ 蛇蔵・海野凪子『日本人の知らない日本語』(メディアファクトリー)
⑧ 広岡友紀『日本の私鉄 京王電鉄』(毎日新聞社)
⑨ ビートたけし・所ジョージ『復刻版 FAMOSO』(ネコパブリッシング)
⑩ 『Number PLUS 9月号 完全復刻版 清原和博』(文藝春秋)


<特集・こうの史代『この世界の片隅に』>
◎こうの史代『この世界の片隅に』全3巻(双葉社)



戦前から戦後の広島県の軍都・呉を舞台にした家族ドラマ。主人公のすずは広島市から呉へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑いながらも一日一日を健気に過ごしていく。リンさんという友達もでき、夫婦ゲンカもするようになり、ようやく呉の街にも馴染んできた。しかし戦況は厳しく、配給も乏しくなり、日々の生活に陰りが……。そして昭和20年3月、ついに呉の街にも大規模な空襲が。戦争という容赦のない暗雲の中、すずは、ただひたすら日々を誠実に生きていく。空襲のシーンはほとんど無く、戦争の悲惨さなどではなく、戦前、戦時中、戦後の長い時間を過ごした人々のささいな日常生活を綴った、今までにない戦争マンガ。今回、著者のこうのさんに戦争マンガを描こうと思ったきっかけをインタビュー。製作にあたっての膨大な資料や原画などを拝見させて頂きました。また、こうの作品の映画化作品に主演した麻生久美子さんのコメントも頂きました。
松田 このお話全体が民話みたいな語り口なんですね、「むかしむかし」っていう感じで、すごく優しいんですね。そして描かれている日常も、みんなけなげに明るく生きているという感じなんで、余計に、そういう日常を断ち切ってしまった戦争の悲惨さがより鋭く迫ってくる、素晴らしい作品だと思いましたね。


<今週の松田チョイス>
◎山田詠美『学問』(新潮社)



松田 山田詠美さんの青春小説『学問』です。
N 恋愛小説の大家山田詠美が思春期の輝きを描いた最新作『学問』。人気者の心太、食いしん坊の無量、すぐに眠ってしまう千穂、そして東京から仁美。彼らは不思議な友情で結ばれていた。はたして、それぞれがもつ欲望とは? 4人の少年少女が、性の目覚めを経て大人へと成長していく近づいていく濃密な日々を描く。「私ねえ、欲望の愛弟子なの。」>
谷原 松田の一言、お願いします。
松田 「この輝きを永遠(とわ)に……」(松田の一言) これは、4人の少年少女のお話なんですけども、友情とも恋愛とも違う、もっと強く確かな絆で結ばれた4人なんです。この絆は、小学生から高校生まで、奇跡的に永く続いていくんですね。その楽園のような世界の中で、一人一人が自分の欲望とか好奇心に忠実に、未知のことを学んでいって、お互いを優しく見つめていくんです。それが、彼らにとっては学校で学ぶよりも大事な学問だったんだというお話なんです。本当に、かけがえのない輝きに満ちていた青春の日々がそこに確かにあったんだということを、しみじみと教えてくれる青春小説の傑作です。

「王様のブランチ」本コーナー(2009.8.8)

2009年08月09日

『星守る犬』と「磯﨑憲一郎『終の住処』」


<文芸書ランキング> (ブックファースト新宿店調べ・7/27~8/2)
① 村上春樹『1Q84 BOOK1(4月-6月)』(新潮社)
② 村上春樹『1Q84 BOOK2(7月-9月)』(新潮社)
③ 磯﨑憲一郎『終の住処』(新潮社)
④ 北方謙三『楊令伝 10』(集英社)
⑤ 神林長平『アンブロークンアロー』(早川書房)
⑥ 畠中恵『ころころろ』(新潮社)
⑦ 誉田哲也『武士道エイティーン』(文藝春秋)
⑧ 北村薫『鷺と雪』(文藝春秋)
⑨ 蛇蔵・海野凪子『日本人の知らない日本語』(メディアファクトリー)
⑩ 高村薫『太陽を曳く馬 上』(新潮社)


<特集・磯﨑憲一郎『終の住処』>
◎磯﨑憲一郎『終の住処』(新潮社)



「妻はそれきり11年、口を利かなかった――。」過ぎ去った時間ほど、侵しがたく磐石なものがあるだろうか。ひとは、過去に守られているのだ――。30を過ぎて結婚した男女の、遠く隔たったままの歳月。ガルシア=マルケスを思わせる遠大な感覚で、人の幸不幸を超越して流れてゆく時間と、この世の理不尽と不可思議をあるがままに描きだす。今回は、第141回芥川賞を受賞された磯﨑憲一郎さんに英玲奈さんと私(松田)がインタビューしてきました。40代にして作家になった磯﨑さんにどのようにして『終の住処』が生まれたのか、家族の話や会社員としての仕事、小説の書き方などについて伺ってきました。
谷原 松田さん、『終の住処』読んでいかがでした。
松田 かなり風変わりで不思議な小説なんですね。ひとつひとつの場面は現実と地続きでリアリティがあるんですけれど、それが繋がっていくと、どこか不思議なところに連れて行かれるようなんです。でも、最後、「終の住処」って、家を建てることで安らぎを得るんですけども。何か、あったかい大きなものに包み込まれるような心地よさがあるんです。不思議な小説ですね。


<今週の松田チョイス>
◎村上たかし『星守る犬』(双葉社)



松田 温かい涙が流れるマンガ、村上たかしさんの『星守る犬』です。
N 放置された自動車から二つの遺体が発見された。それは、中年男性と飼い犬のものだった。いったい彼らに何があったのか。これは、どこまでも飼い主を慕う犬の物語。捨て犬だったハッピーは、ある家族に拾われ、楽しく暮らしていた。しかし、家族はバラバラになってしまった。すべてを失ってしまったおとうさんと忠実な犬の、哀しくもおかしいふたり旅。涙なしには読めない感動作。>
谷原 さあ、「松田の一言」は。
松田 「優しさと切なさと……」(松田の一言) 犬を飼ったことがある人は、いろんな場面で優しさと切なさにうたれて心が動かされると思うんです。それと同時に、読んでいると、温かいものがどんどん伝わってくるという感じがするんですね。その温かさはどこからくるんだろうと思うと、この作品が、いつも真っ直ぐに飼い主を見ている犬の気持ちに寄り添って描かれているからなんですね。だから、どんなに厳しい現実がこようと、この犬は大らかに、優しく、けなげに受け止めていく。その姿を見ていると、本当に限りなく切ない気持ちになっていくんですね。本当に、犬好きにはたまんない一冊です。
優香 犬好きのわたしも読みまして。この本のこと自体は知っていたんですよ。結構、話題にもなっていて、知人にも「いいよ」ってオススメしてもらっていて。もう号泣です。何回読み返しても、泣いてしまいますね。とにかく、この犬が可愛いのと、他の動物と違うのは、忠実じゃないですか、犬って。それで、このお話の中でも、ズーッと敬語なんですよ。それが忠実さを物語っているような。
松田 飼い主に語りかける言葉がね。
優香 「おとうさん、おとうさん」って呼びかけていて。それが……切ない涙もあったり、温かい涙もあったり。こんな短い一冊なんだけど、こんなにいっぱいの気持ちをもらえるんだって。本当にオススメです。麻里奈ちゃんも読んだんですよね。
麻里奈 最短記録の涙の出し方でした。あんなにすぐ涙がポロポロ出てくるのは……。いま、思い出しても……。
谷原 ぼくも犬を飼っているんで、読んでみます。
松田 人前で読まない方がいいと思いますよ。
麻里奈 電車で読んで失敗しました。

「王様のブランチ」本コーナー(2009.8.1)

2009年08月02日

『星間商事株式会社社史編纂室』と「三浦しをんの夏休みマンガ祭り」


<特集・三浦しをんの夏休みマンガ祭り>
今週は、直木賞作家でマンガにも造詣の深い三浦しをんさんを生ゲストとしてスタジオにお招きしました。スタジオでは三浦しをんさんオススメのマンガを3タイトル紹介しました。
◎東村アキコ『海月姫』1~2(講談社)



「人のふり見ても我がふりは直らない」(しをんのキャッチフレーズ)
謎の腐女子集団尼~ず参上!! クラゲ大好きの女の子・倉下月海が暮らすアパートは男子禁制・ヲタ女子オンリーの天水館。ある日、月海が溺愛するクラゲ・クララのピンチを救ってくれたおしゃれ女子を部屋に泊めたら……!?


◎水城せとな『黒薔薇アリス』1~2(秋田書店)



「ステキな夢にひたる」(しをんのキャッチフレーズ)
恋人を救うため、自分の命を差し出した菊川梓。彼女の魂は、ある少女の中へ入り、眠りの中をさまよう。そして目覚めた彼女を待っていたのは、4人の吸血鬼たちだった……。愛と繁殖のヴァンパイア・ロマネスク!!


◎杉本亜未『ファンタジウム』1~4(講談社)



「一つのことに打ちこむ人の美しさ。」(しをんのキャッチフレーズ)
少年は何ものにも従わず、軽やかに己の道を歩む。マジシャンとして天性の才能を持ちながら、何ものにも縛られることなく自由に生きる少年・長見良。マジシャンだった祖父・龍五郎に憧れて育ったサラリーマン・北條。龍五郎が生前にとった唯一の弟子だった良には、ある秘密があった。そして、良の才能に魅入られた北條は、ともに歩んでゆく。


<今週の松田チョイス>
◎三浦しをん『星間商事株式会社社史編纂室』(筑摩書房)



松田 面白さ満載、三浦しをんさんの最新作『星間商事株式会社社史編纂室』です。
N 川田幸代。29歳。会社員。腐女子。ある日、いきがかり上、会社が隠す過去のスキャンダルを探ることも。彼女にできるのは同人誌作りと妄想だけ。しかし、知りたくなったら止まらないオタク魂で突き進む。怒濤のエンターテインメント。>
谷原 松田の一言、お願いします。
松田 「笑って暑気払い!」(*松田の一言*) きょうは、しをんさんがとっても楽しいマンガをいろいろ紹介してくれたんですけども、これらの作品に負けず劣らず面白い。マンガで言えば、ラブコメあり、スポ根あり、社会派あり、会社ものありと、いろんなものが盛りだくさんに入っています。それだけではなくて、主人公が書く「ボーイズラブ小説」が途中途中に挟まれていて、それが抱腹絶倒ものなんですね。猛暑の季節、本当にいい涼しさを与えてくれるお笑いの一冊だと思いました。
三浦 ありがとうございます。
松田 しをんさんに質問があるんですけども、腐女子、オタクな女性を主人公にしたのはなぜですか?
三浦 自分もオタクだからっていうことなんですけども。それと、好きなことに熱中してる女の子っていいなあと思って、その人を主人公にして、巻き起こる騒動みたいなものを書いてみたいなあと思ったんです。
松田 年代を超えて、おじさんたちも巻き込んでいくというのが面白いですよね。
三浦 はい。
松田 あと、「ボーイズラブ小説」は書いていて楽しかったですか?
三浦 むっちゃくちゃ楽しかったですね。もっと書きたかったです(笑)。
松田 ボーイズラブ小説作家になっちゃうんじゃないですか(笑)。

「本のコーナー」をネットしているのは、TBS・HBC(北海道)・TUY(山形)・TUF (福島)・SBC(長野)・UTY(山梨)・TUT(富山)
MRO(石川)・SBS(静岡)・ RCC(広島)・RSK(岡山)・ITV(愛媛)・NBC(長崎)・RBC(沖縄)・BS-iです。

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