松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2009.02.01)

「王様のブランチ」本のコーナー(2009.1.31)

『猫を抱いて象と泳ぐ』と「美内すずえ『ガラスの仮面』」


<コミックランキング>  (紀伊國屋書店全店調べ・1/20~1/26)
① 美内すずえ『ガラスの仮面』43巻(白泉社)
② 一条ゆかり『プライド』10巻(集英社)
③ 甲斐谷忍『LIAR GAME』8巻(集英社)
④ 大和田秀樹『機動戦士ガンダムさん』よっつめの巻(角川書店)
⑤ 日高万里『V・B・ロ-ズ』13巻(白泉社)
⑥ ツジトモ・綱本将也『GIANT KILLING』9巻(講談社)
⑦ 田辺イエロウ『結界師』23巻(小学館)
⑧ 高屋奈月『星は歌う』4巻(白泉社)
⑨ 畑健二郎『ハヤテのごとく!』18巻(小学館)
⑩ 大和田秀樹『なるほど・ことわざガンダムさん』(角川書店)


<特集・美内すずえ『ガラスの仮面』>
◎美内すずえ『ガラスの仮面』1~43巻(白泉社)



演劇史上不朽の名作と謳われる「紅天女」の試演に向け、自らの天女像を求める北島マヤと姫川亜弓。亜弓の特別稽古が報道され、ライバルが順調に稽古を進めていることを知り、焦るマヤ。しかし速水真澄の「おれに紅天女のリアリティを感じさせてくれ」という言葉に、マヤは演技のヒントを掴んでいく。コミック売り上げ累計5000万部、連載期間33年。少女マンガ界に君臨する『ガラスの仮面』。1月26日、約4年ぶりに最新刊(43巻)が発売になりました。作者の美内すずえさんに、仕事場でインタビューしました。仕事机にあったのは、墨汁、主人公のフィギュア、CDラック、そして44巻に収録されるであろう生原稿など。インタビューの内容は、「デビューのきっかけ」「タイトルの由来、作品誕生秘話」「約9000ページの中で、作者自身が一番好きなシーンは?」「自身の体験が投影されているシーンは?」「33年の連載中に困ったことは? 挫折は? やめたいと思ったことは?」「主人公北島マヤの恋の行方はどうなるのか?」「ラストをどうするのか?」などです。


<今週の松田チョイス>
◎小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』(文藝春秋)



松田 本当に気が早い話だと思われると思いますけども、「今年のベスト1」だと言いたくなる作品に出会ってしまいました。小川洋子さんの長編小説『猫を抱いて象と泳ぐ』です。
N 小川洋子の最新長編小説『猫を抱いて象と泳ぐ』。主人公は伝説のチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒン。バスに住む巨漢のマスターに手ほどきを受け、チェスの大海原に乗り出した。彼の棋譜は詩のように美しい。しかし、なぜか彼の姿を見た者はいない。無垢な魂を持つ少年の数奇な人生を、切なくも美しく描いた作品。>
松田 とにかく「素晴らしい!」の一言です。読み始めると、残りのページ数がなくなっていくのが惜しくてたまらないという、そんな感じなんですよね。そして、読み終わると、場面の一つ一つが映像となって頭の中に焼き付いて、繰り返し思い出せるという。チェスの話なんですが、からくり人形とチェスをする人たちとか、肩に白い鳩を載せた記録係の美少女とか、品のいい老婆と主人公がチェスをしていたりとか……。その主人公そのものが姿が見えないところでチェスを打つという、不思議なお話なんですね。
優香 私も読ませていただきまして、最初にタイトルが本当に面白いなあというか……。
松田 何だろうと思いますよね。
優香 はい。引き込まれまして、さっき松田さんがおっしゃっていたように、本当に外国映画のような、絵本のような、物語として、一枚一枚ていねいに読みたくなるような本だなあと思いました。私は、この中で、特に、この少年のことをズーッとズーッと応援してきて、一切否定をしない、暖かく見守るお祖母ちゃんが本当に素敵なんです。お祖母ちゃんもチェスのことは分からないので、なんか私と同じ気持ちでいられるなという感覚があったり。で、後半で、お祖母ちゃんが少年に話す一言があるんですけど、そこでわたしはグッときて……。素敵な、いい家族だなって。
松田 チェスのことは、ぼくらも分からないんですが、チェスの本当に素晴らしい対局を写した棋譜というのは詩のように美しいって書いてあるんですね。この物語自体が、哀しくて、切なくて、本当に美しいんです。まだ書かれたばかりの作品なのに、もう古典作品の風格がある。名作だと思いますね。
谷原 読書の達人、松田さんが選んだ、今年ナンバーワンの作品、ぜひ読んでみてください。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2009.01.25)

「王様のブランチ」本のコーナー(2009.1.24)

『女神記』と「湊かなえ『告白』」


<小説ランキング>  (丸善日本橋店・1/8~1/14)
① 火坂雅志『天地人(上・中・下)』(日本放送出版協会)
② 村山由佳『ダブル・ファンタジー』(文藝春秋)
③ 湊かなえ『告白』(双葉社)
④ 小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』(文藝春秋)
⑤ 天童荒太『悼む人』(文藝春秋)
⑥ 佐々木譲『警官の紋章』(角川春樹事務所)
⑦ 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
⑧ 飯島和一『出星前夜』(小学館)
⑨ S.ラーソン『ミレニアム(上・下)』(早川書房)
⑩ 柚木裕子『臨床真理』(宝島社)


<特集・湊かなえ『告白』>
◎湊かなえ『告白』(双葉社)



「愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。」
我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。そして、ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。以前、松田チョイスでも取り上げ大反響を呼んだ湊かなえさんの「告白」を特集。ヒットの秘密を①「第一章だけでも読む価値あり」②「色々な人の感情を疑似体験できる。」③「結末は賛否両論」の三つに分け、それぞれについて作者の湊さんにインタビューしています。
松田 『告白』という小説は、全編モノローグで、そのサスペンスがたまらないんです。そして、最後には、大胆なラストシーンがある。繊細さと大胆さとをあわせもっている、本当に力のある作家だと思うので、これからもいい作品を書いていただけるといいなあと思いますね。


<今週の松田チョイス>
◎桐野夏生『女神記』(角川書店)



松田 桐野夏生さんが日本神話を語り直した意欲的な作品『女神記』です。
N 世界中の作家が、神話を語りなおす壮大なプロジェクト「新・世界の神話シリーズ」。その日本代表が、桐野夏生が描いた『女神記』。海蛇の島に生まれた巫女のナミマは、悲しい運命に翻弄され、16歳という若さで命を落とす。地底で目覚めた彼女の前に現れたのは……。「わたしはイザナミ、黄泉の国の女神です」。死の国へと堕ちたイザナミが語る、夫イザナキのあまりに残酷な仕打ちとは? 人間と神の対立を交えて描く、愛と裏切りのスペクタクルロマン。>
松田 桐野さんが取り上げたのは、日本神話の中で、日本列島を創ったといわれているイザナキ、イザナミという神様の物語なんです。神話そのものをなぞっているんではなくて、その外側に、もう一つ、ドラマチックな物語、巫女のナミマの物語というのをつくって、そこから神話を語っているんですね。桐野さんの活き活きとした文章で、新しい息吹を吹き込まれた神話が、とっても迫力があって、遠い昔のお話っていうよりも、活き活きとしたドラマとしてぼくたちに迫ってきます。
谷原 桐野さんのイメージというと、女性を描くのが上手な作家さんで、でも、それだけではなくて、ひとの表と裏、暗部を描くのが上手な方だと思うんですが、本作はどうなんですか。
松田 そうですね。『OUT』とか『東京島』も、そうでしたけど、そういう暗い部分を取り込みながら、それにあらがっていく女性のたくましい姿みたいなものは、この物語でもあって、桐野ワールドにもう一つの作品が加わったという感じですね。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2009.01.19)

「王様のブランチ」本のコーナー(2009.1.17)

「芥川賞・直木賞受賞作発表」と「太田チョイス②」


<速報・第140回芥川賞・直木賞受賞作品発表!>
<VTR>
N おとといの木曜日、第140回芥川賞・直木賞の受賞者3名が決定。「ブランチ」では、受賞決定直後の皆さんをいち早く直撃しました。直木賞を受賞したのは、弱者の立場になって小説を書き続ける、孤高の作家・天童荒太さん。
◎天童荒太『悼む人』(文藝春秋)



英玲奈 直木賞受賞、おめでとうございます。
天童 ありがとうございます。
英玲奈 この受賞を一番伝えたいのは、どなたですか?
天童 えー、「王様のブランチ」の皆さん。
英玲奈 あらあ。ありがとうございます。
天童 ずっと「王様のブランチ」の皆さんには応援していただいて、そのことは、本当にお世辞やおべんちゃらではなく、ありがたく思ってきたし、皆さんの言葉がすごく支えになってきたので。
英玲奈 お待ちになっていたときは、天童さんでもドキドキしましたか?
天童 割と自然体で今回はいられたなという感じですね。というのは、『悼む人』というのは、ぼく自身がすべて出し切った作品だったし、これ以上のものは、少なくともぼくにとっては表現できないところまでは高めることができていたので。それがどう受け止められるかは、お任せするしかないなって。
英玲奈 じゃあ、落ち着いた気持ちで……。
天童 人から見たら、分からないけど。
英玲奈 ちょっといやらしい話なんですが、今回いただいた賞金は、何に使うんだろうって気になったんですが。
天童 うーん、ヒミツ。
英玲奈 ヒミツですか。
天童 「王様のブランチ」をご覧の皆様、本当に支えて下さったり、応援して下さったりして、本当にありがとうございます。これからも、「王様のブランチ」のBOOKコーナーをよろしくお願いします。


N そして、もう一人の直木賞受賞者が時代小説作家・山本兼一さん。
◎山本兼一『利休にたずねよ』(PHP研究所)



英玲奈 直木賞受賞、おめでとうございます。
山本 ありがとうございます。
英玲奈 今のお気持ちはいかがでしょうか?
山本 あの、嬉しいです。けども、だんだん冷めてきました。締め切りが一杯あるんでね。締め切りをどうクリアしていくかが大変です、これから。
英玲奈 締め切りのことが頭の中に一杯になって……。
山本 そうですね。
英玲奈 山本さんならではの、新しい利休像というのが、今回あったと思うんですが。それは、どこから生まれたんでしょうか?
山本 利休っていうと「侘び寂び」って言うじゃないですか。「侘び寂び」って、どういう世界だと思います。
英玲奈 ちょっと地味に、おごそかにというイメージがありますが。
山本 ぼくもそう思っていたんです。ですけども、利休好みの水指(みずさし)というものを見たときに、とっても、そんなに枯れたもんじゃないと、わたしは思ったんです。とっても艶やかで、ある意味エロチックでさえある。これは「恋」の美しさだと、わたしは思ったんです。
英玲奈 恋につながっているんですね。


N 芥川賞を受賞したのは、デビュー4年目の新進作家津村記久子さん。
◎津村記久子『ポトスライムの舟』(群像11月号)
英玲奈 芥川賞受賞、おめでとうございます。
津村 ありがとうございます。
英玲奈 「王様のブランチ」の英玲奈と申します。
津村 よろしくお願いします。やだ、めっちゃ可愛い人がいると思って……。
英玲奈 今回は受賞されて、どんなお気持ちですか。
津村 えーと、いろんな人に伝えはしましたけれども、あとは自分の実感を持つのを待つのみって感じですね。
英玲奈 まだ、実感は湧いてないですか。
津村 ちょっとないですね。
英玲奈 なぜ、会社を辞めずに二足のわらじで働かれているんですか?
津村 そうですね、会社員であることがとても面白いからです。
英玲奈 OLさんとして、お昼休みとか、みんなとご飯食べたりしてるんですよね。
津村 してます、してます。
英玲奈 そういう中で、面白い会話が出てきたりするんですか。
津村 あります、あります、それは。みんなで「いいとも」を見て、誰がテレホンショッキングに出るのとか。今してる話が、「相棒」の次の相棒は誰やねんという話をずっとしてます。
(「視聴者の皆さんに一言」と聞かれて)
津村 面白い小説を書いていきますし、今回の話も面白いと思いますので、どうぞ、お手すきのときに、お読みいただければ、たいへん幸いです。よろしくお願いします。


<スタジオ>
優香 素敵なキャラの方ですね。
谷原 松田さん、天童さん、直木賞受賞しましたね。
松田 嬉しいですね。この本のコーナーでは、10年前の『永遠の仔』以来、折に触れて、天童さんの作品を応援してきたので、本当に、ともに歓びを分かち合いたいという気持ちですね。
優香 天童さん、本当におめでとうございます。
一同 おめでとうございます(拍手)。
谷原 嬉しいですね。そして、もう一人の直木賞受賞者の山本兼一さんですが、ぼくは『千両花嫁』を読んだことがあったので、『利休にたずねよ』もぜひ読んでみたいと思います。優香 そうして、芥川賞は先週の「松チョイ」でやりましたね、津村さんでしたが。松田さんは、はじめから注目されていたとか。
松田 そうですね。4年前のデビュー作から、力のある作家だなあと思っていました。先週も『ミュージック・ブレス・ユー!!』を紹介しましたけれども、若い女性の、ちょっとイケてないんだけど、元気に生きようみたいな作品で、読んでいるとなんとなく元気もらえる、楽しい小説ですね。これからも注目したい作家の一人だと思いますね。
谷原 さきほどのVTRでも、とても人柄が出ていて……。
優香 読みたくなりますよね。
松田 明るい人ですね。


<特集・爆笑問題太田光の「太田チョイス」②>
先週は上記3冊について語った本の虫・太田光さん。今週は、太田さんが5冊チョイスしてくれたうち、先週紹介できなかった2冊を紹介します。


◎オルハン・パムク『雪』(藤原書店)



2006年ノーベル文学賞を受賞したオルハン・パムク。『雪』は、トルコの東北、アルメニアやグルジアとの国境に近く、民族的にも宗教的にも複雑に入り組むカルスという町が舞台。今は貧しく、多くの失業者を抱える灰色の街。そこにやってきた世界的に知られる詩人Kaとイベッキの恋愛に加え、トルコの政治的問題やイスラム教徒の苦悩をも描く大作。太田さん評「ざっくり言うとトルコを舞台にした恋愛小説」「小難しい印象を受けるかもしれないけど、恋愛を織り交ぜて書いてあるので大丈夫」。


◎ジェフリ・ディーヴァー『ウォッチメイカー』(文藝春秋)



“松田チョイス”で紹介された本はたいてい購入しているという太田さんの“BEST OF 松田チョイス”として紹介。「何も考えずに楽しみたいときはコレ!」という太田さんは、以前からジェフリ・ディーヴァーの大ファン。“松田チョイス”でジェフリ・ディーヴァーの新作が出たことをチェックしているらしい。
優香 (太田さんは)さすがに本をすすめするのが上手ですけれど、松田さんと直接対決というのはいかがですか?
松田 いやあ、トークでは太田さんにはかなわないですから……。
優香 いやいや。
松田 ただ、本当に本が好きな方なので、本の話をしたら、楽しいだろうなあと思いますね。機会があったら、ぜひやりたいと思いますね。
谷原 おっ、そうですか。じゃあ、ぼくも参戦しようかな。夢の対決をぜひ。
松田 バトルロワイヤルでね。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2009.01.12)

「王様のブランチ」本のコーナー(2009.1.10)

『ミュージック・ブレス・ユー!!』と「太田チョイス」(前編)


<BOOKニュース>
◎第140回芥川賞・直木賞候補作決定!

蓮見 15日には、平成20年度下半期の芥川賞・直木賞が決定いたします。まずは、芥川賞の候補者の方々を紹介しましょう。ごらんの6名の方々です。(鹿島田真希、津村記久子、墨谷渉、山崎ナオコーラ、田中慎弥、吉原清隆)。鹿島田真希さん、津村記久子さん、山崎ナオコーラさんはノミネート3回目ということですが。松田さん、注目はどなたでしょうか。
松田 そうですね、その他、田中慎弥さんというのが三島賞・川端賞をダブル受賞して話題になりましたし、有力候補が目白押しなんですが、僕は津村記久子さんに注目したいなあと思っています。
蓮見 津村さんについては、後ほど「松田チョイス」でもご紹介します。さあ、続いては直木賞候補者ですけども、こちらです。(恩田陸、葉室麟、北重人、道尾秀介、天童荒太、山本兼一)。恩田陸さん、山本兼一さんという人気作家が揃っています。松田さん、「ブランチ」でも特集した天童さんも候補にあがっていますよ。
松田 そうですね。逆に言うと、「まだ受賞していなかったのか」と思う人もいるでしょうね。やっぱり素晴らしい作品ですし、ぜひこの機会に受賞して、もっと多くの人に読んでもらいたいなって思いますね。


<特別企画・「太田チョイス」(前編)>
「松田チョイスを参考にして本を買っている」(2007年6月23日O.A.)、「太田チョイスをやらせて欲しい!」(2008年11月8日O.A.)と語り、かねてより「太田チョイスをやらせろ」と言っていた太田光さんの夢“太チョイ”がこのたび実現。気合を入れた太田さんはオススメの本と、自分たちの著書について熱く語ってくれました。
太田 「太田チョイス」で本を選んでくれって言われて、実際やらせてくれることになって、困ったんだよ。
田中 何で困ったんだよ!
太田 「松田チョイス」で選んでるから、全部かぶっちゃうんだよ。
田中 「松チョイ」が選んだものを読んで……
太田 松田さん、どーもお世話になってます。参考にしてますよ。


◎谷崎潤一郎『春琴抄』(新潮文庫)



「世界の文学の中でも上位。谷崎潤一郎作品では一番」。「谷崎潤一郎は美しいものが好きで、その谷崎の理想を描いた作品」。「純文学は教科書に載ってるイメージかもしれないけれど、作品が発表された当時も今も大衆の文学であって、漫画のように気軽に楽しめる!」


◎モンゴメリ、西田佳子訳『赤毛のアン』(西村書店)



「想像しだすと止まらない、話しだすと止まらない、そんなアンの気持ちが僕はすごくよく分かる!」「想像力って本当に素晴らしいものなんだ!」と『赤毛のアン』を片手に持ったまま太田さんは熱弁。「大学生の時に何気なく手に取り、読んだ。これは僕の人生の書です」


◎爆笑問題『だから言わんこっちゃない』(小学館)



「週刊ポスト」の連載コラムをまとめた爆笑問題の新刊。歴史、時事問題ネタに二人が漫才形式で語ってゆく内容。「(傑作の後に)こんな本紹介したくない!」と恥ずかしがりながらも、見所を紹介。太田さんのオススメポイントは本の写真を撮影した、梅佳代さん。
N 最後に、太田さんから松田さんに、こんなメッセージ。
太田 松田、お前、俺の本を紹介したことないじゃないか! 松田、コノヤロー!
田中 「松チョイ」は我々の本とかを紹介してくれたことないんですか。
太田 されないんだから。
もりちえみ 松田さんは、なんでチョイスしないんですかね?
太田 嫌われてんのかなあ?
N スタジオにいる松田さん、本当のところはどうなんですか?


松田 別に嫌ってはいないですけども。爆笑問題さんのトークも本も大好きです。これまでも「特集」で何回も取り上げているんですね。だって、僕のへたくそなしゃべりで紹介するよりも、ご本人の見事なトークでしゃべっていただくほうが、番組的にも楽しいと思うので……。
谷原 なるほど。


<今週の松田チョイス>
◎津村記久子『ミュージック・ブレス・ユー!!』(角川書店)



優香 きっと太田さんもチェックしていると思います。今週の「松チョイ」は何でしょうか?
松田 はい、緊張しますね。今週は、芥川賞候補の中で、ぼくが一番注目している津村記久子さんの『ミュージック・ブレス・ユー!!』という作品です。
N 津村記久子の青春小説『ミュージック・ブレス・ユー!!』。主人公は高校3年生のオケタニアザミ。来年からの進路は未定。アザミにとって音楽について考えることは、将来について考えることよりずっと大切。でも、やっぱり何かが不安。そんな10代のイケてない日常とは、振り返ってみれば愛おしい日々。野間文芸新人賞を受賞した新時代の青春小説、ここに誕生。>
松田 主人公のアザミは普通の高校生で、ちょっと風変わりなところがあるっていうぐらいの高校生なんです。自分の好きなパンクロックを聴くことにはとことんこだわっていったり、波長の合う友人とメールしたり喋ったりするのはのすごく好きなんですね。そういう普通の高校生なんですけども、何かの弾みがあると、思いがけない行動にでてしまったりする。だから、不良だと思われたり、「キレやすい若者」と見えたりもするんですけども、そうじゃなくて、普通の高校生が、揺れ動きながら何かを求めている、何を求めているのかわからないんだけど、一生懸命生きているっていう感じが伝わってくるんですね。ぼくなんか、歳も違うし、男と女の違いもあるんですけども、高校生の時ってこうだったよなあっていうのがすごく伝わってきました。意外と、高校生のこういう気持ちというか感性というか、そういうものを描いている作品ってなかった気がします。青春小説の傑作だと思いますね。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.12.30)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.12.27)

「第7回 輝く!ブランチBOOK大賞」


<第7回 輝く!ブランチBOOK大賞>
小林 今年も、約7万5千点の新刊から、厳選に厳選を重ねて「第7回 輝く!ブランチBOOK大賞」が決定いたしました。もちろん今年も審査委員長はこの方です。松田哲夫さんです。よろしくお願いします。
松田 よろしくお願いします。今年は、昨年よりもたくさん本が売れたそうです。皆さんも本を楽しんでいただいたと思います。ほんとうに、いろいろな本に楽しませてもらったんですが、そのなかで、とっておきの一冊を書いたくださった作家の方たちに賞を差し上げました。


<新人賞>
<VTR>
N1 お一人は、デビュー作『食堂かたつむり』を発表した小川糸さん。作詞家だった小川さんが10年の苦闘の末に書き上げた作品。
◎小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ社)



優香(3月22日OA) 久しぶりに号泣しました。もう、あふれて出てくるんですよ。
はしの(3月29日OA) 後半、涙をこらえるのが大変。閉じては上を向いて……。
N1 ブランチ女性陣の声も後押しし、現在25万部のベストセラーに。なんと、映画化のプロジェクトも進行中。
N2 ある日突然、すべてを失ってしまった主人公倫子は故郷で食堂を始める。一日一組、その客のためにだけ作られたメニューは人びとを癒し、小さな幸せの奇跡を生んでいきます。そんな優しいファンタジーが、後半一転、人間の生と死の物語に移り変わり、感動のラストを迎えます。
白石みき 「新人賞 小川糸殿」。おめでとうございます。
小川 ありがとうございます。『食堂かたつむり』で賞をいただくというのは始めてなんで、すごく嬉しいです。
N1 作品に登場するメニューの数々は、ほとんど自分で作ったことのあるものばかりというほど料理が好きな小川さん。この日も自家製のジャムを持ってきてくれました。旬の季節に1年分作りためるといういちじくのジャム。
白石 おいしい~。すごく爽やかですね。
小川 ゆずの絞り汁が入っているから、ちょっと酸味がある。
白石 おいしい~。でも、デビュー作がベストセラーになって、周りの方の反響なんか、すごかったんじゃないですか。
小川 そうですね。一時は、お祭り騒ぎみたいで、わたしの普段の生活からすると、経験できないようなこともあったんですけども、あまり浮き足立たずに、普通に生活している感じです。
N1 その言葉通り、小川さんはこの1年、コツコツと2作目を書きためてきました。
白石 その作品には、またこういったお料理とかは……。
小川 そうですね。「食べる」ということも視点になって書いてる面もあります。登場するお店が実在するお店なので、そこに行けば食べられるというものがたくさん出てくると思います。
白石 自分で主人公になったような気分になれますね。
小川 そうですね。


N2 続いて二人目の新人賞は。青春スポーツ小説の作者・百田尚樹さん。
◎百田尚樹『ボックス!』(太田出版)



優香(10月11日OA) ものすごく面白かったです。もう一気に、ほんとうに一気に読んでしまいまして、その日の夜、眠れなくなりました。興奮して!!
N2 口コミでジワジワと人気が広がっているこの作品、舞台は高校のボクシング部。天性のボクシングセンスを持つ鏑矢と元いじめられっ子の友情、栄光、そして挫折。少年たちの成長が無駄のない描写で描かれます。
白石 ボクサーなんですか?
百田 いやあ、私は放送作家です。
N2 百田さんは関西の名物番組「探偵!ナイトスクープ」など、さまざまなバラエティ番組を手がける放送作家。大学時代はボクシング部。その経験が、作品に生きました。
白石 「新人賞 百田尚樹殿」。おめでとうございます。
百田 ありがとうございます。
N2 バラエティ番組を手がけてきた百田さんが、青春スポーツ小説に取り組んだのには、わけがありました。
百田 わたし、息子が高校生で、息子を見ていると、「わあ、ぼくもこんなアホなとこあったなあ」とか、自分の恥ずかしいこととかやんちゃしたこととか、色んなことを思い出して、「ああ、これ楽しいなあ」って思って……。
N2 そして、女性作家の書いたスポーツ小説ブームも刺激になったと言います。
百田 わたしのような男性が読むと、面白いんですけど「違うな」とも思うんですよ。男の子の世界は、こんなんのと違う。こんなベタベタしてないと、こんなにナヨナヨしてないと。ある意味、もっとアホで、もっと強烈な男の子の世界があるんだと。これを書きたかったですね。
N2 百田さんは、この作品を書きながら、見えてきたものがあるそうです。
百田 ボクシングというものは、自分がパンチを打とうと思うときには、絶対に相手のパンチが当たる距離に踏み込まないとだめなんです。それを書いていて、人生ってこんなもんかなあって思いましたね。
N2 小川さん、百田さん、おめでとうございます。


<スタジオ>
谷原 『ボックス!』も『食堂かたつむり』も、優香ちゃんのお気に入り作品ですね。
優香 わたしが大好きな2作なんですけど。この『ボックス!』は、青春、ワクワク、興奮といった、もうテンションがあがる感じですね。大好きでした。で、『食堂かたつむり』の方は、これとは違って、母と娘の物語で、本当に静かなんですけども、涙が、優しい涙が号泣という感じで。ねえ、えみちゃん。
はしの 優香ちゃんにオススメしていただいて読んだんですけども、すごい温かい涙も流れるんですが、わりと衝撃的なシーンもあったりして、自分だったらどうするんだろうとか、どう考えるんだろうとか思いながら読める本でしたね。
谷原 『食堂かたつむり』は、作詞家の方が書いているんで、語感の音の並びというか配列というか、それも素晴らしかったですよね。松田さん、お二人のこれからが、とても楽しみなんですが。
松田 そうですね。小川さんは、非常に大胆なストーリー展開をされる方で、これからも、どんなチャレンジをしてくれるのか楽しみです。百田さんは、もうベテランと言えるぐらいのストーリーテラーなので、次は、どういうワクワクした世界を見せてくれるのか楽しみです。


<話題賞>
◎勝間和代『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社)    ほか



昨年末に発売された『お金は銀行に預けるな』はじめ、出す本が全てランクインするなどベストセラーを連発。BOOK界だけでなく経済界など様々な分野で一大旋風を巻き起こした、経済評論家にして公認会計士の勝間和代さんが話題賞に決定。
「*話題賞 勝間和代殿* あなたは昨年末から今年にかけて/10冊以上のビジネス本を出版し/いずれも大きな反響を呼び/ベストセラーになるという快挙を達成しました。/格好いいライフスタイルを含めて/一躍 時の人となったあなたに敬意を表し/王様のブランチではBOOK大賞話題賞を贈り/ここに表彰します。」


<BOOK大賞>
優香 2008年、もっとも輝いた作品に贈られる「ブランチBOOK大賞」。大賞の発表は、審査委員長松田さんからお願いします。
松田 それでは発表します。「2008年・第7回 輝く!ブランチBOOK大賞」、大賞は、『風花』を書いた川上弘美さんです。
◎川上弘美『風花』(集英社)



<VTR>
N2 
「2008年ブランチBOOK大賞」は『風花』を書いた川上弘美さん。川上さんは、『センセイの鞄』をはじめ、次々と名作を生み、多くの文学賞に輝いてきました。そんな彼女が、一組の夫婦に焦点を当てた『風花』。33歳、結婚7年目ののゆりに匿名の電話がかかってくる。それは、夫・卓哉の不倫を知らせる電話だった。しかし、のゆりはどうしていいのかわからない。「わたしはいったい、どう、したいんだろう。」しだいにのゆりは、揺らぎながらも、自分を見つめ、向き合っていく。人間の心の淡い変化を川上さんの文章は見事にすくい取ります。
松田 「表彰状 川上弘美殿。BOOK大賞を贈り、ここに表彰致します」。おめでとうございます。
川上 ありがとうございます。第7回なんですよね。ラッキーセブンで、とても嬉しいです。
N2 松田審査委員長が『風花』を大賞に選んだ理由は?
松田 10人いれば10人が、それぞれ違う表現で、この本の感想を書かれている。珍しい本だなあと思いました。
川上 そうですね。
N2 たしかに、それぞれの書評の受け取り方も、「イラッとくる」というものから「癒しを感じる」というものまで、実にさまざま。
優香(5月17日OA) 恋愛小説って、ちょっと苦手な意識があったんですけども、すごく読みやすくて。なぜかって思ったら、恋愛だけじゃなくって、現実的なことが、丁度いい具合に混ざり合っている。
谷原(5月17日OA) 生活のことだったりとか……。正直、怖かったです、この本。女の人は、一見受け身に見えるけれど、決断したらとても現実的なんだなあって感じて。
N2 それは、川上さん自身も感じている思いでもありました。
川上 実は、書いている私自身が、最初のうち、主人公が歯がゆくてならなくて。なんだか頼りなくて、この人大丈夫なのかとズーッと思っていて。で、最後になって、だんだん反対に主人公がすごく変化していって励まされたりしたんですけども。でも、その変化があまりにも大きくて、自分でもアレーって思ってて。そしたら、色んな読み方を皆さんしてくださって、それは面白かったですね。優香さんが言ってくださった、「恋愛をしたりしていても日常がある。それが感じられた」というのが、すごく嬉しかったですね。いつも、私もそう思っているんですね。うっとりして家に帰ってくると、手を洗ったりうがいをしたりするわけですよね。それが大変でもあるし、救いでもありますよね。
N2 素晴らしい作品をありがとうございました。


<スタジオ>
小林 2008年ブランチBOOK大賞は『風花』の川上弘美さんでした。
谷原 松田さん、選考理由を教えてください。
松田 読む人によって感想や反応がこれだけ違う作品というのも珍しいと思うんですね。物語自体を楽しむということもあるんですが、その後に、読んだ人同士で、この番組でも、優香ちゃんや谷原さんと感想を言い合って、もう一つ外側に物語ができるという、そういう意味でも、優れた小説だなあと思いますね。
優香 男の人から見ても、怖いところがある本でしたね。
小林 さあ、来年はどんな本が選ばれるのでしょうか。以上、「第7回 輝く!ブランチBOOK大賞」でした。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.12.21)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.12.20)

『森に眠る魚』と「X'masに贈りたい絵本さがし」


<一般書ランキング> (リブロ池袋本店調べ・12/8~12/14)
① マーシー・シャイモフ『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』(三笠書房)
② 奥野宣之『読書は1冊のノートにまとめなさい』(ナナ・コーポレートコミュニケーション)
③ 勝間和代『起きていることはすべて正しい』(ダイヤモンド社)
④ 伊藤理佐『おんな窓 2』(文藝春秋)
⑤ 美香『モデル・美香の女磨きダイアリー』(角川春樹事務所)
⑥ 『このミステリーがすごい!』(宝島社)
⑦ 沢木耕太郎『旅する力』(新潮社)
⑧ 水野敬也『大金星』(小学館)
⑨ 『ミシュランガイド東京2009日本語版』(日本ミシュランタイヤ)
⑩ 天童荒太『悼む人』(文藝春秋)


<BOOKニュース>
◎内澤旬子『おやじがき』(にんげん出版)



こぎれいで健康な、ちょいワルおやじが急増する現代。耳毛上等、臭気充満、世間の目なんて気にしない、そんなおやじは現在絶滅を危惧されています。そんな、絶滅に瀕したおやじの生態に迫った一冊。


<絵本特集・X'masに贈りたい絵本さがし>
◎俵万智『かーかん、はあい』(朝日新聞出版)



クリスマスはプレゼント用に絵本を買う大学生・社会人も増えるシーズン。新聞連載の絵本コラムをまとめた本『かーかん、はあい』を出版した俵万智さんが絵本選びをアドバイスしてくれました。俵さんといえば短歌で有名ですが、現在5歳の息子さんの育児をきっかけに、絵本もかなりくわしくなったとか。「一文が短くて声に出して読んで楽しむという点では、短歌も絵本も同じなんです」と語る彼女。大量の絵本に触れる中で“大人の絵本の楽しみ方”を幾つも発見したという俵さんが都内最大級の在庫を誇るクレヨンハウスで、クリスマスプレゼント用の絵本を選んでくれました。最後に、俵さんからブランチへ素敵なクリスマスプレゼントが! 「クリスマス」と「絵本」を題材に、短歌を一首頂きました。
松田 『かーかん、はあい』っていうのは、とっても素敵な本で、愛らしい本なんですね。お母さんと子どもが絵本を一緒に読みながら語り合うという、本当に微笑ましい姿なんですね。それと、子どもがいろんなことを発見するんですよね。その時の輝きと俵さんの感動みたいなものが、ものすごくストレートに伝わってきます。そして、最後の章でお子さんが、ちょっと一言言うんですけども、それがウルッと来るんですね。最後まで読んでもらえればわかります。とっても素敵な一冊です。是非読んでみてください。


<今週の松田チョイス>
◎角田光代『森に眠る魚』(双葉社)



松田 血も流れませんし、化け物も出てこないんですけども、本当に怖い話です。角田光代さんの『森に眠る魚』です。
N 角田光代の最新作『森に眠る魚』。「お受験」が盛んな、とある町で知り合った5人の母親たちは、互いに心を許しあう「ママ友」。しかし、育児に悩み、「お受験」に翻弄されるうち、5人の関係性はしだいに変容していく。「あの子さえいなければ」。「私さえいなければ」。母親たちの深い孤独と痛み、そして日常生活に潜む恐怖をあぶりだした力作。>
松田 ここに出てくる「ママ友」たちは、本当に親しくなった瞬間、今度は、お互いに頼る気持ちが大きくなっていくので、ちょっとした行き違いから、ねたみや疑いが生まれてきます。ただ、作者は、そういう一人一人に優しく寄り添って、理解してあげようとしているんですね。だから、逆に苦しみみたいなものがつらく伝わってくる。本当に、何とも言えない怖い世界なんですけどもね。
谷原 なるほど。優香ちゃん、読んでみたんですよね。
優香 ものすご~い怖いです。
はしの いま、感想を言う前に顔がすごくなりました。
優香 もう、もう、ものすごく恐ろしいんです。よく、男の人の妄想って、なんかロマンチックだったり、可愛かったりするじゃないですか。女の人って、なんか現実的な妄想っていうか……。女の人の、仲のいいグループがあって、その中で二人が喋っていたりすると、「アレッ、もしかして自分のこと悪く言われてるんじゃないか」とか、そういうことを気にすることが多いじゃないですか、女性の方が。そういう関係性のことなので、人間的な怖さ、そういうものなんです。
松田 そこに、いつも子どもが関わってくるんで、「ママ友」の大変なのは、そういうところで……。そして、彼女たちの辛さが臨界点に達したときに、とんでもないことが起きるんですよ。これは、ちょっと、読んでみないとわからないんですが。
優香 はあい。
松田 ただ、その後に、また日常に帰って行く、それを、ささやかな希望があると読むのか、深い絶望と読むのか、いろんな読み方ができると思うんですけどもね。
谷原 ぼくも読んで、女性の心理を学んでみたいと思います。
優香 はあい。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.12.07)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.12.6)

『とんび』と「辻仁成『右岸』&江國香織『左岸』」


<特集・辻仁成『右岸』&江國香織『左岸』>
◎辻仁成『右岸』(集英社)



◎江國香織『左岸』(集英社)



大ベストセラーとなった辻仁成さんと江國香織さんの共作ラブストーリー『冷静と情熱のあいだBlu』『冷静と情熱のあいだRosso』(1999年、角川書店)が刊行されておよそ10年。再びお二人のコラボレーションが実現。
*『右岸』愚直だが真摯に生きる超能力者九は、初恋の人茉莉への叶わぬ想いを抱きながら、旅を続ける。
*『左岸』17歳で東京に駆け落ちし、2年後に別の男性と帰郷。恋も仕事も感性のままに生きる茉莉の物語。
幼馴染の九と茉莉は19歳の時に1度は両思いとなるが、結局うまくいかず……しかしその後も九と茉莉の魂の交歓は続く。1本の川を挟んだ右岸と左岸を歩む2人がお互いの人生を見守り続ける“ライフストーリー”。
*辻さん→江國さん「もっとマメにメール下さい」「パリに来ても僕に連絡くれない。レストランくらい連れていくのに!」「3度目のコラボあると思う!」
*江國さん→辻さん「10年前とくらべフランスで奥さんと子どもさんと住んでいて、帰る場所がある感じ。優しくなった」「時々メールするくらいの距離感が良い」「3度目のコラボは……どうなるかわからない(笑)」
谷原 いかがですか、松田さん、この作品は。
松田 大ヒットした『冷静と情熱のあいだ』の次ということで、たぶんプレッシャーも大きかったと思うんです。前は恋愛が軸になっている話だったんですけども、今度はもっとスケールが大きくて、人生そのものを描いていく作品なんですね。大変なチャレンジをしているんですが、見事に読み応えのある作品になっているなあって思います。二人がすれ違っていくんで、終始ハラハラするんですが、最後には意外なハッピーエンドが待っているという楽しみもあります。


<今週の松田チョイス>
◎重松清『とんび』(角川書店)



松田 絶妙な重松節が心に染みわたってきます。重松清さんの長編小説『とんび』です。
N 重松清、待望の新作長編小説『とんび』。昭和37年、トラック運転手のヤスさんに、待望の息子アキラが誕生。幼い頃、親と離別したヤスさんにとって、妻と息子と過ごす日々は、ようやく手に入れた家族の温もりだった。しかし、その幸福は突然の悲劇によって打ち砕かれてしまう。我が子の幸せだけを考え、悪戦苦闘するヤスさんの、喜びと悲しみを描いた感動長編。>
谷原 松田さん、これは重松さん得意の親子ものですから、すごく期待するんですが。
松田 そうですね。ひたすら一人息子の成長を見守り続けるヤスさんという父親の姿が素敵なんですね。そして、その一人息子をヤスさんが愛していますし、その二人を周りの人たちが愛しているし、登場人物全体を重松さんが愛しているという、本当に幸せな物語なんですね。だから、いろんなところで心打たれて、涙が出てきてしょうがないっていう、そういう作品なんですね。
優香 わたしも重松さん、大好きなんですけども、えみちゃんも読んだんですよね。
はしの 読みました。やられてしまいました。この一冊の中で、四、五回はダアーッて泣いて、二十回ぐらい鼻にツンときて、大変でした。でも、親って自分のこと、こういう風に見てたのかなあって思って読めますし、自分が親になったときに、ああ、子どものことをこういう風に思うのかなあって思いながら読んだり、すごい温かい本で、一気に読みましたね。
松田 本当に不器用で照れ屋のお父さんなんですよね。だから、言葉が足りなかったり、一生懸命に傷つけないようにしていることが裏腹になっちゃったりとか、その辺が、読者にはつらいんですよね。
はしの すごい土臭くて、そこがまたいいというか。
松田 そうですね。もう一つは「昭和の物語」なんですね。息子のアキラというのが重松さんと同じぐらいなんで、重松さんが育ってきた時代をしみじみと描いているという感じで、いいお話ですね。
谷原 優香ちゃんも、重松さん好きだもんね。
優香 大好きです。親子もの、大好きなんです。涙したいです。
はしの ほとんどの方が泣かされちゃうと思います。
谷原 ぼくも、お父さんの言葉には感動しました。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.11.30)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.11.29)

「松チョイHYPER・天童荒太『悼む人』」


<総合ランキング>(オリコン調べ・11/17~11/23)
① 『ミシュランガイド東京2009日本語版』(日本ミシュランタイヤ)
② マーシー・シャイモフ『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』(三笠書房)
③ 太田あや『東大合格生のノートはかならず美しい』(文藝春秋)
④ 竹中平蔵『竹中式マトリクス勉強法』(幻冬舎)
⑤ 『かんたん年賀状素材集2009年版』(技術評論社)
⑥ 『世界一簡単にできる年賀状2009』(宝島社)
⑦ Vジャンプ編集部『クロノ・トリガーNDS版 PERFECT BIBLE』(集英社)
⑧ 東野圭吾『聖女の救済』(文藝春秋)
⑨ Jamais Jamais『O型自分の説明書』(文芸社)
⑩ 五木寛之『人間の覚悟』(新潮社)
谷原 『ミシュランガイド』、1位に入ってきましたね。
松田 そうですね、やっぱり、東京が世界一のグルメシティだということが、これでまた証明されたような気がしますね。


<松チョイHYPER・天童荒太『悼む人』>
◎天童荒太『悼む人』(文藝春秋)



*スタジオ*
松田 ぼくが21世紀になって読んだ本のナンバーワンです。本当に感動的ですし、いろんなことを考えさせられます。
優香 そうですね。私も読みまして、涙しました。
谷原 涙した。
優香 涙しました。ねえ。
松田 感動が、いろんな意味で、後まで残っていくんですね。
谷原 そんな感動的な作品なんですけども、作者の天童荒太さんに英玲奈ちゃんがインタビューに行ってきました。
英玲奈 はい。昨年の『包帯クラブ』映画化の時以来、1年ぶりにお会いしてきました。今回の作品は、なんと構想7年、その創作ノートを特別に見せていただきました。どうぞ。
*VTR* 
英玲奈 こんにちは。お久しぶりです。
天童 こんにちは。お久しぶりでした。『包帯クラブ』以来ですね。
英玲奈 よろしくお願いします。
天童 こちらこそ、よろしくお願いします。
N 常に傷を受けた側によりそって、心の物語を書き続ける作家・天童荒太。作品を発表するのは数年に一度、しかし、深いテーマを追求する作品は、必ず話題になってきました。そんな天童さんが、7年もの歳月をかけて取り組んだ最新作『悼む人』がついに完成。連日繰り返される事件や事故のニュース。それを伝える新聞などを頼りに、亡くなった人を亡くなった場所で「悼む」ための旅を続ける主人公・坂築静人。一体、彼は何のために人を悼み続けるのか。そこにどんな意味があるのか。彼を巡り、人間不信の雑誌記者、夫を殺した女、末期ガンの母たちのドラマが繰り広げられていく。愛と憎しみ、生と死が交錯する感動巨編です。>
英玲奈 この作品が出来上がったいま、どんな心境でしょうか。
天童 こういう作品を読者と共有できて、幸せだなあと思っているところです。
英玲奈 悔いは何も残っていないんですか。
天童 あるとすれば、ちょっと時間がかかっちゃたかなあという。
英玲奈 7年間ですものね。
天童 それぐらいかな。まあ、ぼくの能力では、これが精一杯だったので、本当のところを言うと悔いはないです。
N 「7年が精一杯だった」、この言葉の裏には、天童さんの凄まじい努力がありました。>
英玲奈 『包帯クラブ』の時にも創作ノートを見せていただいたんですが、今回もお持ちいただいたということで……。
天童 言われたので、一応、持ってきましたけど。これが……。
英玲奈 たくさん。こちら、何冊あるんですか。
天童 えーと、創作ノートが10冊あります。
N 天童さんが持ってきてくれた10冊の創作ノート。中を見てみると、小説を書き始める前の緻密な下準備の後が伺えます。>
天童 いつもぼくは、「その人になる」という書き方をするんで……。
N 主要なキャラクターすべてに自分が同化できたと思えるまで、設定をつきつめるという天童さん。中でも圧巻は、そのプロフィール作り。一人の登場人物のために、何10ページにもわたって、それまでの人生を作り込んでいきます。さらに、持ち前のユーモアと勇気をもって自らの末期ガンと向き合う、主人公の母巡子。彼女については、もっと丹念な取材と作り込みがなされていました。>
英玲奈 なぜ、あそこまで巡子の心境がわかるんだろうと、すごく不思議に思ったんですが……。
天童 ぼくは、いま言ったように、病気になった彼女になるので、日々薬を飲みますよね。その薬の色を知らないわけがない。だから、「薬の色はどんな色ですか」みたいな、ほんとに小さなことから、お医者さんに実際に訊いていくことになるんですよ。
N 膨大な資料をもとに、まずは巡子のカルテを考えたという天童さん。どうしてもわからないことは、実際の医師に細かく聞いていったといいます。>
天童 そこまで細かくやって、ようやく、自分が巡子という病気を得た58歳の女性になっていく、一つの手がかりにしていくというのかな。
N 同じく、静人の悼む旅をリアルにするためには、天童さんは、あらゆることを試みていました。静人が、いつどのあたりを歩けばリアリティがあるのかを計算。そして、毎日何を食べ、いくらぐらい使っているのかまで、細かく設定されています。しかし、それでも天童さんには肝腎な部分が、長い間実感できなかったといいます。>
天童 「悼む」ってどういうことだっていうことを、自分自身でも分からなかったんですね。じゃあ、自分も一回、静人になって、人が亡くなった場所に行ってみようと……。
N 静人は事件や事故の現場に行き、亡くなった人のことを聞いてまわる。そうすることで、その人を唯一無二の存在として心に刻みつけていきます。そんな主人公の悼む気持ちと同化するために、天童さんも、どんな人が、どんな風になくなったのかを読み込んでから、実際の事故現場に行ってみました。そして、静人の気持ちを追体験してみたんだそうです。>
天童 そうすると、すごくつらくて、死んだ人が入ってくるので、もうちょっと耐えられなかったんですよね。で、ああこれは、静人になっていくことが、もっと「悼み」を自分のものにできると思って、「静人日記」というのをつけはじめるんですね。
N その「静人日記」というのがこちら。毎日一人、報道で知った、亡くなった人のことを悼む日記。もし、亡くなった場所に行ったら、何が聞けたのか。静人の気持ちになって想像を巡らせるといいます。>
天童 例えばこの「雨より風の方が苦手です」とか、「野宿の時は強風が怖いです」とかいうのは、実際に自分が静人として、風が強い日だったんでしょうね、強風の方が怖いなあというのが率直に出てきたんだろうなあと思うし。それから、「何も残らないと言われた」という記述もあるのは、そういう風に続けていくことによって出てきたものですね。
英玲奈 批判する方もたくさん出てきましたもんね。
N 小説の中に、静人が用水路に転落して死んだ幼児のことを祈ろうとするシーンがあります。邪険に追い払おうとする男がいる一方、遺族らしき男は不審の目をむけながらも、静人にこう語る。「本当に優しい子だったんだと祈っていて。ママにな、用水路脇に咲いてた花をプレゼントしようとしたんだ。そういう子だったんだよ」>
天童 「悼む人」なんていうものがいたら、無関心あるいは敬遠されるのが一番でしょうけども、一方で、身近な人が死んだときには、真面目な態度で「聞かせてほしい」って言われたら、不審に思いながらもしゃべりたくなることがあるんじゃないかと。そのしゃべることが救いになることもあるだろうということも、やはり日記の中で見出していって、作品にそのままいかす形になっているんですけどね。
N 天童さんは、この「静人日記」を、一日も欠かさず、作品を書き終わった今も続けていると言います。>
英玲奈 何の意味もないと思うような瞬間はなかったですか。
天童 意味がないというのは、常に思っていて。意味がないと人に言われる行為を積み重ねていく行為が一番尊いと、ぼくは思っていて。だから、静人の行為が意味あるものになってはいけないと、むしろ思っていたというのかな。
N 7年もの歳月をかけて書き上げた作品『悼む人』を発表した天童荒太さん。亡くなった人を悼む旅を続ける静人を通して、天童さんが伝えたかったこととは。>
英玲奈 ここ(「創作ノート」の始め)に「いま、世界で最も必要とされる人物の物語」っていう風に書かれていますよね。
天童 今でも、大きな事件が、ここのところ続いていますけども、クローズアップされるのは犯人の方だったりすると思うんですよ。で、犯人の方を社会は、覚えていってしまって、ついつい、本当にどんな大切な人が亡くなったかが忘れられていくというかな。それが今、命の軽さともつながっていると思うので。本当に大事なのは犯人のはずはないんで。懸命に生きていた人が亡くなった。その亡くなった人のことを覚えておくっていう姿勢が、少し社会が変わるだけで、何かが大きく変わるような気がしているんですよ。
N 傷を受けた側の視点に立つ天童さん。そんな彼が生み出す作品に注目です。>
*スタジオ*
松田 この物語が語りかけてくるのは、「あらゆる人間の死を悼めるか」という、非常に重いテーマなんですね。だから、本当に息苦しくなるような場面も沢山あるんですけども、ただ終始、爽やかな風が吹いているような、気持ちよさがある。それは、いまVTRで見たように、天童さんが、本当につらい、身を削るような思いをして書いていって、そこで得た優しさみたいなものをもって物語を書いているからだろうと思うんです。
優香 わたしも読みまして、7年かかった重みっていうのが、この1冊にあるなあっていう風に感じたんですけども。私は、このなかでも、お母さんの話がとてもジーンときて、お母さんが出てくるたびに、毎回毎回、涙しながら読んでいたんですけども。このお母さんがガンという重い病気に罹って、死んでしまうかもしれないというのを抱えているのに、周りに対して感謝の気持ちとか、本当に温かくて大きい心を持っているお母様で、素敵だなあ、こんな風になれたらいいなあと思いながら読みましたね。
谷原 えみちゃんも読み始めたそうですね。
はしの 読み始めて、私は、あんまり読書慣れしていないので、まだ三分の一ぐらいしか読めていないんですけども。静人がなんで「悼む人」になっているのか、それは聖者なのか、それとも偽善者なのか。いま、静人に関わっている人たちがどんどん出てきて、どんでん返しが待っているのか、どうなのかというのがすごく気になりながら読んでます。
松田 そうですね。重い作品なんですけども、ひょうきんで明るい、面白いキャラクターも出てきますし、優香ちゃんが言ったように、お母さんもしょっちゅう冗談をいったり、明るいところがありますし……。
優香 そうですね。
松田 そして、最後までいくと、本当に激しくて美しいラブストーリーになるんですね。本当に圧巻だと思うんですけども。本当にスケールの大きい、読み応えのある作品だと思うんですよね。
谷原 どう翔太、読んでみたくなった。
翔太 もう、読まないとまずいなっていう感じですね。読みたいです。
谷原 みなさんも温かい涙を流して、心の洗濯をしてみたらいかがでしょうか。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.11.24)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.11.22)

『恋愛嫌い』と「2009年版カレンダー特集」


<2009年版カレンダー特集>
国内外3000種類のカレンダーを揃える丸善丸の内本店で、売れ筋商品を見て、今年の人気の傾向をチェック。近年、カレンダーの種類は細分化。日付を確認する他に+αの機能を持っている商品が急増しています。この道8年、全国のカレンダーの売れ行きを研究している丸善店員・渡辺さんにコメントしてもらいます。
*空気をキレイにするカレンダー(紙にコーティングした二酸化チタンが、紫外線や蛍光灯の光を受けると、タバコ、ホルムアルデヒド、汗の臭いを分解・消臭する効果を発揮。)
*節約レシピカレンダー(節約術が毎日の生活に取り入れ易いと“節約系”が多数登場。)
*カイくんカレンダー(Softbankお父さん初カレンダーが売上5万部の大ヒット。)
◎男性タレント人気ランキングTOP5(Amazon調べ)
1位 上地雄輔 発行部数約8万部
2位 佐藤健  ※コメントあり
3位 小池徹平
◎女性タレント人気ランキングTOP5(Amazon調べ)
1位 蛯原友里 ※コメントあり 発行部数約5万5千部
2位 堀北真希
3位 皆藤愛子
◎番外編・人気スポーツ選手
*ハニカミ王子・石川遼  ※コメントあり
*テニスの王子様・錦織圭 ※コメントあり


<今週の松田チョイス>
◎平安寿子『恋愛嫌い』(集英社)



松田 恋愛小説の常識を破った、平安寿子さんの『恋愛嫌い』です。
 恋愛に不向きな女たちの姿をリアルに描いた短編集、平安寿子の『恋愛嫌い』。恋愛したいという欲が湧かない喜世美29歳。ペットとブログがあれば彼氏なんていらない翔子26歳。美人なのになぜかモテない鈴枝35歳。恋愛って難しい、面倒くさいし、結局、いつもうまくいかない。それならいっそ、一人で生きちゃ、ダメですか?>
松田 なんと言っても、歯切れのいい、歯に衣着せぬ突っ込みが、読んでいて楽しいんですね。コミカルな語り口なんで、わりにシニカルな部分も出てくるんですが、落語を聞いているような感じで楽しめるお話なんですね。三人の女性の恋愛模様が描かれているんですけども、本物の恋愛になりそうなところで、普通のありがちな方向じゃなくて、違った方向に行ってしまう……。かといって、決してネガティブなわけではないんですね。自分自身に正直でいたい、それを曲げてまで男性に追随したくないっていう、そんな女心がよく描かれている作品なんですね。最後にはホッとする、とっても温かいラストが待っているんで、そんなにシニカルなお話ではない。楽しんでいただければ。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.11.16)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.11.15)

『スリーピング・ドール』と「大沢在昌『黒の狩人』」


<総合ランキング>(三省堂書店全店調べ・11/3~11/9)
① 竹中平蔵『竹中式マトリクス勉強法』(幻冬舎)
② 東野圭吾『聖女の救済』(文藝春秋)
③ 海藤尊『イノセント・ゲリラの祝祭』(宝島社)
④ 太田あや『東大合格生のノートはかならず美しい』(文藝春秋)
⑤ 姜尚中『悩む力』(集英社)
⑥ 東野圭吾『ガリレオの苦悩』(文藝春秋)
⑦ 神谷秀樹『強欲資本主義ウォール街の自爆』(文藝春秋)
⑧ フィリップ・C・マグロー『史上最強の人生戦略マニュアル』(きこ書房)
⑨ 神田昌典+勝間和代『10年後あなたの本棚に残るビジネス書100』(ダイヤモンド社)
⑩ 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)


<特集・大沢在昌『黒の狩人』>
◎大沢在昌『黒の狩人(上・下)』(幻冬舎)



中国人ばかりを狙った惨殺事件が続けて発生した。手がかりは、頭部と四肢を切断された死体のわきの下に残された「五岳聖山」の刺青だけ。手詰まりとなった捜査に駆り出されたのは、新宿署のアウトロー刑事・佐江と謎の中国人・毛、そして外務省の美女・由紀。中国人殺しは、中国政府による”処刑”なのか。やがて事件は、日中黒社会を巻き込んだ大抗争へと発展した──。裏切りと疑惑の渦の中、無数に散らばる点と点はどこで繋がるのか。誰が誰の敵で、誰の味方なのか。やがて、国家をも揺るがす真実が浮かび上がる。逆転につぐ逆転、予測不能──。現実を凌駕した驚天動地のエンターテインメント巨編、ついに刊行。今回、著者の大沢在昌さんをインタビュー。作品ついてはもちろん、ハードボイルドな作風にも伺える、大沢さんにとっての男性像について伺います。
谷原 松田さん、新作の『黒の狩人』いかがでした。
松田 魅力的で癖のある登場人物が次々と出てきて、場面ごとに迫力あるドラマが展開されていくんですね。だから、かなり複雑な物語なんですけども、ぐいぐい読まされますし、最後まで緊張の糸が途切れないという感じで、さすがに大沢さんだと思いましたね。本当に熱いドラマですね。


<今週の松田チョイス>
◎ジェフリ・ディーヴァー『スリーピング・ドール』(文藝春秋)



松田 リンカーン・ライム・シリーズでおなじみの、ジェフリ・ディーヴァーの新作『スリーピング・ドール』なんですが、新らしいヒロインが誕生しました。
 ドンデン返しの魔術師と呼ばれる人気ミステリー作家ジェフリ・ディーヴァー。彼の最新ミステリーが『スリーピング・ドール』。一家惨殺事件を起こしたカルト指導者ダニエル・ペルが脱獄、逃走した。捜索の指揮をとるのはキャサリン・ダンス。人間のしぐさや表情を読み解く「キネシクス」の名手。嘘を見破るダンスと他人をコントロールする天才ペル。お互いの裏をかく頭脳戦が始まった。>
松田 とにかく面白いです、これは。ヒロインのキャサリン・ダンスがとっても魅力的で……。リンカーン・ライムというのは超人的な探偵だったんですが、ダンスの場合には、人間的な弱さも持っているんですね。家族とのつきあい方なんかも、よく描かれていますし。そういうダンスが摑まえようとしているのが、凶悪犯のペルという男で、これがまた、人間の心を操る天才なんですね。二人の駆け引きが、本当に手に汗握るという感じで……。そして、ジェフリ・ディーヴァーお得意のどんでん返しが、「エーッ」という感じで、何度も来るんですね。
谷原 ぼくも読ませていただいたんですが、本当は、来週紹介するという話が、急に今週になって、夢中になって三日半で読んだんです。『ウォッチメイカー』のサブストーリー的なところがあるじゃないですか。『ウォッチメイカー』の犯人って、自分の定めたルールは絶対に守っていくという、とっても理知的な知能犯なんですが、それと対照的に、今度のペルというのは、同じように人をコントロールする天才なんですけども、時に、自分で自分をコントロールできない、直情的な欲望に身を任せるというか……。
松田 人間的な弱さをもっているんですね。それが、捜査官のダンスの人間的な弱さとちょうどいい感じでハラハラさせるんですよ。
谷原 魅力的なんですよね、キャラクターが。
松田 本当にキャサリン・ダンスがチャーミングで素敵だなあと思いますし、このシリーズ、ずっと続けていってほしいなあって思いますね。
谷原 そうですね。松田さんとぼくをトリコにしたキャサリン・ダンス、皆さんもきっと、その魅力にはまると思います。

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